エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~5世代目・後編4~

シリーズ全体の目次はこちら https://togetter.com/li/1479531 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ。
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前回の話

まとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~5世代目・後編3~ シリーズ全体の目次はこちら https://togetter.com/li/1479531 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ。 18748 pv 8

以下本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ この物語は、いつまでもきれいでぴちぴちなエルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の、ウハウハドスケベご都合ファンタジーです。 初代から始まりまして、今は五代目。 海の男オズロウが世界を股にかけ、あちこちで、いい男ええ男をナンパしては自分の船に乗せる暮らしを綴っております。

2019-10-27 16:54:34
帽子男 @alkali_acid

男をナンパ? 女奴隷は?エルフの女奴隷は出ないの? どういうこと? と疑問の向きもありましょう。 でも男をナンパする話になっています。 えーやんか!ええ匂いのするええ男。皆もむちゃ好きやろ! な!

2019-10-27 16:56:22
帽子男 @alkali_acid

さてオズロウが乗るしろがねの凱歌号に加わった男達を振り返ってみましょう。 風の司ロンドー 塚人カゲノツキ 小人の船大工、鉄船建てことザージ 男海賊ダボハゼことアルトゥーセ 海妖精のイテルナミことネシファ) 漁りの巨人バゴ 毒蔵の番人、大蜘蛛ラファエリ 珈琲の伝道ガティ

2019-10-27 16:58:09
帽子男 @alkali_acid

どっかのハクスラRPGの中ボスみたいな名前ばっかりですね。 ほかに特別枠として大釜に手足の生えたような奇怪なからくりじかけの従者、歩く檻アンググもついてきています。 さてオズロウ一行は、奴隷王国をあとにし、精霊の半島を北に置いて、季節風吹く未知の海を東へ航(わた)ります。

2019-10-27 17:01:39
帽子男 @alkali_acid

このあたりはオズロウの故郷である、世界の北西地域の船が訪れたことはありません。しかし地元の船は頻々と行き来しており、海運はむしろ北より発達しています。 積荷は陶磁に鉄器に酒精に穀物に布帛に医薬に、何より香料。 そう香料。薫り高き種や枝や花や葉や根や、猫の糞や鯨の結石や虫の腸や。

2019-10-27 17:09:10
帽子男 @alkali_acid

エルフやドワーフが暮らす世界の北西にもかぐわしい香草、薬草の類はありますが、この南の国々ではくらべものにならないほど強い芳香を放つ素材が満ち満ちているのです。 料理の味をよくし、虫を避け、貴きもの富めるものの身を飾り、あるいは邸宅を彩る。神殿の祭事に、王宮の供宴に。庶民の憩いに。

2019-10-27 17:13:31
帽子男 @alkali_acid

香料を求める手は後を絶たず、香料のもとになる草木や獣や虫を採りあるいは育てる人々もあまた。仕入れて運ぶ船もあまたであります。 安息の国は、暑き香料の地やさらに東の香料の島々から海路で陸路で運ばれてきた香料の積み集まる地。

2019-10-27 17:15:28
帽子男 @alkali_acid

王侯から奴隷まで香料をよく用い、またさらに西の葦の大河の国、曙の大地の諸国に香料を送り出しもしています。 盲目の船長が乗る巨艦しろがねの凱歌号も、ちらほら香船(かおりぶね)とすれ違うようになりました。大洋はだだ広いものですが、岸に沿って港から港へ伝ってゆくとそういうこともある。

2019-10-27 17:18:53
帽子男 @alkali_acid

「楽しみやわー…はーむちゃ楽しみやわー。安息の国では花の香を水に閉じ込めたり油に閉じ込めたりしよるんよ…どないしてやろ…どない…」 帆索をするすると登ったり降りたり、飛び移ったりして、傷みがないかを手と耳と鼻で確かめつつ、目の見えぬ船乗りは落ち着かない。

2019-10-27 17:21:15
帽子男 @alkali_acid

「あのよお…俺達のしろがねの凱歌号は、魔法の船だろ。甲板も帆柱も舷側も、腐りもしねえし鼠も齧りゃしねえ。船底にふじつぼひとつはりつかねえ。何で細かく検めるんだよ」 ドワーフの鉄船建てがもうちょい苦労して同じ作業をしながら文句を垂れる。本気で言っているのではなくただ喋りたいのだが。

2019-10-27 17:24:29
帽子男 @alkali_acid

「馬鹿野郎!魔法なんぞ信用できるか!船ってもんはいつだって乗り手が面倒みてやらなきゃ機嫌を損ねるんだよ!」 すぐ下を登る義手の海賊が怒鳴る。 一方、投げ縄を使って檣から檣へ跳び移りながら、暗い膚の若者は尖り耳をひくつかせ、離れたところから響く仲間の会話を余さず聞き取る。

2019-10-27 17:27:09
帽子男 @alkali_acid

「確かに。しろがねの凱歌号は魔法の船や。沈んだ西の島の人間の魔法使いと妖精の船大工、ついでに影の国の太守、黒の鍛え手の加護までついとる。ほんでもな。あちこち旅して、魔法ちゅうのはワテらの専売やないと痛いほど解ったやろ」 「まあなあ…」

2019-10-27 17:28:44
帽子男 @alkali_acid

「潮の流れまで変えてまう巨人の魔法、絨毯に空を飛ばせる精霊の魔法、猛獣を小さな将棋の駒にしてまう青の術師ちゅうおひとの魔法。ワテらが魔法のご利益に預かれるて油断しとると、足元すくわれんで。せやからできる限り自分の耳や鼻で船の機嫌は聞いて嗅いどく」 「賛成だ」 「おうよ」

2019-10-27 17:31:01
帽子男 @alkali_acid

「いくら検(あらた)めたかて、この船に知らん魔法が害を及ぼしとっても、ワテらにはピンと来いひんやろけど…」 オズロウが呟くと、襟のあいだからひょこりと鼠ほどの大きさの人影があらわれる。 「巨人の魔法であれば今のところ害は及んでおらんぞ」

2019-10-27 17:33:48
帽子男 @alkali_acid

今は小さいなりだが、正体は竿と網で魚を捕るのが好きな漁(すなど)りの巨人、バゴだ。趣味にいそしむ際は雲突くような丈に戻り、波の上を歩きながら、千も万もの獲物を得る。 「ほんま?安心したわ。おおきにバゴはん」

2019-10-27 17:35:35
帽子男 @alkali_acid

「妖精と妖精の血を引く人間の魔法も害を及ぼしていません」 そう告げたのは、尖り耳に明るい肌をした美丈夫。半妖精のロンドー。ふわりと綱から綱へ舞っては爪先で立ち、湯気の立つ磁器の椀から馨(かぐわ)しい黒い湯を啜る。 「苦い…しかし慣れるとよい味です」 「ワテも飲みたい!」 「あとで」

2019-10-27 17:38:24
帽子男 @alkali_acid

甲板では漆黒の肌の壮年の僧侶、ガティが絨毯を広げ、煌めく金属、黄銅とか真鍮とかいう素材でできた器具で謎の液体を淹れている。 湯を沸かすのには煙の出ぬ目の詰まった木炭(きずみ)のような燃料を深めの火鉢に入れて用いているようだ。 向かい合って座るのは、大釜に手足の生えたからくり。

2019-10-27 17:43:04
帽子男 @alkali_acid

歩く檻の異名を持つアンググだ。 玻璃(はり)の丸板でできた顔面をじっと、射干玉(ぬばたま)の指が操る珍しい品々に向けている。 「ガティはよき弟子を得た。アンググよ。あなたは珈琲の技を学ぶとつくにびとの最初のひとり」 そう呼びかける美中年の聖職者に、相対する巨躯の傀儡は無言。

2019-10-27 17:46:53
帽子男 @alkali_acid

だが何か通じ合っているらしい。 「ワテも!ワテも珈琲!」 「よくあんな苦いもん飲む気になるな」 「俺はもらうぜ。酒より気に入った」 深く入り組んだ文化を持つ奴隷王国から、新たにもたらされた貴重な飲み物、珈琲に対する評価はまちまち。

2019-10-27 17:49:05
帽子男 @alkali_acid

「あー…なんや…この苦くて…すっぱくて…ちょこっと渋くて…ほんで…あー!!ええ薫り…うまい炭、うまい炭や!むちゃアンググの菓子と合うわ…疲れもなんや軽くなるし…好きや…」 「豆の別、煎りの深さ、挽き方の細かさ、湯の温み、量でそれぞれに味異なる…アンググの蜜を加えるとまた佳し」

2019-10-27 17:51:53
帽子男 @alkali_acid

僧侶の座る絨毯の周りに男達が集まる。 船という閉ざされた場。 気を奮わせる飲み物。 若い雄の群。何も起きないはずがなく。

2019-10-27 17:53:04
帽子男 @alkali_acid

「ガティさんよお!今日こそ勝つぜ。盤を出してくんな!」 珈琲を一杯キメて機嫌のよくなったダボハゼが吼える。 「将棋は神事。軽はずみには指せぬ」 「俺は将棋を覚えて!運命ってやつに勝つんだよ!」 「並のことではない。だが意気やよし」

2019-10-27 17:54:46
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