海の大戦:プロローグ

――大戦の切っ掛けとは。
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人間《ディアドラ》 @actSkbz

「――この下郎ッ!」 最後の最後まで苛立たせてくれる、と沸騰しかけた脳髄に、何かが警鐘を鳴らした。ふと手元の本に目をやれば、憤怒に満ちていた表情は一瞬で笑みを取り戻す。 「はい。我が海神様の、仰せの儘に!」 相手の言葉に返答はしない。“殉教”には海神こそが全て。

2014-02-28 19:38:08
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「ふん。好きにするがいい。二度と同じ姿に戻す事は出来ぬが――」 帆柱を一撫でし、うっそりと微笑む。 「海神様に相応しい飾りを見つけて来ねばならんな」 引いていく敵方の船に裁きを下したいのを堪えながら、一文を静かに読み上げる。

2014-02-28 19:38:34
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「『帰還せよ、汝が船は我が神風に護られる』」 潮風をその身に受けながら、“殉教”は帆柱に背を預け、ゆるりと息を吐く。 「召集せねばなるまい、か。問題は、素直に招集に応じるか、だが……」 空を仰ぐ。憎々しいくらいの晴天。 「我らが海神様がご所望だ。引き摺ってでも集まらせる」

2014-02-28 19:39:00