【ザシキワラシ・ターン・アップ・エグザイル】#2

うぃんこさん @koiflachuchu

【こいしちゃん】

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(これまでのあらすじ：アマクダリに反逆するニンジャ集団サークル・シマナガシの面々はアマクダリの下部組織ニンジャ、オーベルジーンを爆発四散せしめた。アジトに帰るシマナガシであったが、アジトのソファーにはリアル・ヨーカイの古明地こいしが不可視状態で仮眠を取っていた。)

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(そうとは気付かずソファーに座ったアナイアレイターはこいしの反感を買い、投げ飛ばされてしまう。こいしを敵と見て交戦したスーサイドも股間を蹴りあげられオタッシャ。その後ルイナーとアナイアレイターの機転で意気投合し、こいしもシマナガシ入りを果たすのであった。)

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【ザシキワラシ・ターン・アップ・エグザイル】#2

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数日後、シマナガシアジト。ぶかぶかの対重金属酸性雨ブルゾンに身を包んだこいしがシマナガシの面々に手を振る。「それじゃ、今日もおさんぽ行ってくるね」「晩メシまでには帰ってくるんだぞ」エプロン姿のルイナーがこいしに手を振り返す。その動きは緩慢で、表情は無いに等しい。 1

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「子供じゃあるまいし」悪態をつきながらも、こいしは終始笑顔であった。そしてそのまま朝日も射さぬドス黒い雲まみれのネオサイタマの空にこいしは消えていく。空を、飛んだのだ。「……可憐だ」それに驚くルイナーではなかった。もはやヨーカイが空を飛ぶことは彼らの常識と化していた。 2

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アナイアレイターとスーサイドは眠りこけている。本来はルイナーも寝ている時間だが、こいしの朝食を作るために早起きをしている。彼のニンジャ睡眠力を以てすれば造作も無いことだ。「起きろ、メシだ」「ファック！」ルイナーはエプロンを脱ぎ、未だ眠る二人の脇腹を軽く蹴り、起こす。 3

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スーサイドは叫び声と共に起き上がるが、アナイアレイターはいびきをかいて気持ち良さそうに寝ている。「こいつ本当にクソだぜ」「いつものことだ」ルイナーは淡々と皿にスクランブルエッグを乗せ、トーストにバターを塗りたくる。トーストは二枚しかない。ルイナーには初めから起こす気はない。 4

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「イタダキマス」「イタダキマス」乱雑に放置されたガラクタの中から椅子を引っ張り出して座り、朝食にありつく。「そういや、アイツは？」「まだ例の外回りだそうだ」「長いな」「たまにキョートくんだりまで行くからな」それだけ言い交わし、二人は黙々とトーストを食べる。 5

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アナイアレイターが起きたのは、昼食後のコーヒーの片付けをしていたころであった。 6

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【会議だってよ】

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【仕事終わったよこいしちゃん】

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タマ・リバー。生活排水と産業排水で汚染されたドス黒いヘドロの川縁をこいしは歩いていた。「すごいなあ、これ。血の池地獄でもこんなに黒くないよ」こいしはこれを川だとは微塵にも認識していない。地獄のアトラクションの一種だと勘違いしているのだ。幻想郷にこのような川は一つとして無い。 8

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こいしはネオサイタマにある種の親近感を抱いていた。それは彼女の住み処である旧地獄と酷似していたからであった。針の山めいたジャンクヤードのスクラップ、血の池めいてドス黒い海、火車めいて集積所に棄てられた死体を回収するゴミ収集車。死体のおこぼれを漁るバイオカラス。 9

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旧都めいて不夜城を形成する、ネオカブキチョを初めとする飲み屋街。地霊殿めいた隠れ家。そして、巫女のような殺戮者。こいしが再びネオサイタマに流れ着いたのは、もう一度あの死神と会うため。その上で地霊殿のインテリアにするため。あのジゴクめいた存在は、旧地獄最高のインテリアだ。 10

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「ニンジャと過ごしていればいずれ殺しに来るだろうと思っていたけど、残念」こいしは川縁の小石をおもむろに拾い、川の中に規則正しく並んだ三つの竹の筒に向けて投げる。小石は中央の竹の筒に命中し、倒れた。ワザマエ！「ゴボーッ！？ゴボボーッ！ゲェーッ！ゴボボボボーッ！」 11

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だが、竹の筒があった地点から何かが飛び出してきた。全身を暗水色で覆った人型の何かだ。それは口からヘドロを吐き、悶絶しながら岸にすがりつく。「アイエエエ！ニンジャ！？ニンジャナンデ！？」こいしはその一連の動作に驚愕し、叫ぶ。無理もない。その人型は、ニンジャだったのだ！ 12

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「どうした！？」「何があった！？」「アイエエエ！」残りの筒も倒れ、その地点からニンジャが飛び出す！こいしは思わずしめやかに失禁！ゴウランガ！おおゴウランガ！「ゲホッ……ドーモ、エビアンです……よくもやってくれたなクソガキ！」「ドーモ、エビアン＝サン。古明地こいしです」 13

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こいしは我に返り、アイサツを返す。「ドーモ、コメイジ・コイシ＝サン。ボルヴィックです」「ドーモ、クリスタルガイザーです」残りの二人もアイサツし、ヘドロを吐き終えたエビアンがこいしに迫る。「非ニンジャのガキが、俺達ヤサスイ・クラブの特訓を邪魔するとはいい度胸だ」 14

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「いや、だって、丁度いい位置にいたから……すごい擬態だね」「ダマラッシェー！」エビアンが汚いニンジャスラングを言い放つ。「とにかく！俺はそのせいで危うく死ぬところだった！」「もっと人気の無いところでやればいいのに」「減らず口を叩くなガキが！プシューッ！」 15

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エビアンは竹の筒から水の針を射出する！これこそミズ・ニンジャクランに伝わるカラテ技、ミズ・クナイ・ダートだ！「ムイシキ！」こいしは宙に浮き回避！先程までこいしがいた位置からタタミ十枚分は離れたスクラップは粉々になる！恐るべしミズ・クナイ！スクラップ＆スクラップだ！ 16

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「プシューッ！」「プシューッ！」「プシューッ！」今度はエビアンだけでなく、ボルヴィックとクリスタルガイザーもミズ・クナイを放つ！「ムイシキ！」こいしは宙に浮いたままふらふらしながら回避し続ける！こいしの後方にあるスクラップの山が次第に崩れて行く。当たれば即死だ。 17

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「ムイシキ！」こいしの目が緑色に怪しく輝く！無意識の斥力を発生させ、三人をまとめて川の中へ押し返す！そして竜巻めいた無数のハート弾幕！スペルカード技、イドの解放だ！「「「イヤーッ！」」」三人のニンジャは同時に川に潜る！そしてシンクロナイズドスイミングめいた動きで回避！ 18

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スペルカードは不発。こいしはザンシンし、ヘドロの川を見る。「イヤーッ！」突然、 川の中から三つの水柱が起こる！水柱は流動性を持つかのように曲がりくねってこいしを襲う！「ンアーッ！」こいしに巻き付く水柱が徐々にその姿を現す。エビアン、ボルヴィック、クリスタルガイザーの姿を！ 19