福島県の小児甲状腺検査に関する私見

2014年3月11日の報道ステーションで県や県立医大のやり方への批判が展開され、すぐに県立医大から反論のコメントが公表されました。報ステに対する感情的な反発心・嫌悪感をお持ちの方も多いようですが、自分なりのまとめを一読頂ければ幸いです。
3
今井長兵衛 @medanjin

内部比較が不可能な場合や不十分と言われかねない場合に用いられるのが外部比較という方法だ。基準となる集団と比較して 対象集団の状況を把握する。罹患を扱う場合は、標準化罹患比を求めることが多い。

2015-02-14 18:46:25
今井長兵衛 @medanjin

標準化罹患比は、基準集団の(年齢階級別)罹患率で対象集団(の各年齢階級の人数)が罹患すると仮定した場合の期待罹患数で対象集団の実際の罹患数を割って算出する。基準集団に昭和60年モデル人口を用いると、間接法による年齢調整罹患率の途中計算値になる。

2015-02-14 18:53:54
今井長兵衛 @medanjin

日本国内の対象集団の外部比較には、基準集団として全国民の平均データを用いるのが普通だ。ここでは、福島の小児甲状腺がん罹患状況の外部比較に全国の年齢階級別罹患率を用いて標準化罹患比を試算する。

2015-02-14 19:03:25
今井長兵衛 @medanjin

県立医大の先行検査から本格検査までの期間に4人が甲状腺がんに罹患(悪性判定)された。2回の検査が平均して2.5年の間隔で実施されたとすると、1年あたり罹患数は1.6となる。この値と福島で検査を受けた人々が全国平均の罹患率で罹患した場合の罹患数との比(標準化罹患比)を試算する。

2014-12-29 21:54:22
今井長兵衛 @medanjin

全国の年齢階級別罹患率(人口10万人年対)は「地域がん登録全国推計によるがん罹患データ」の男女合計、2006~2010年の平均値を用いた。5歳刻みなので、各年齢群(たとえば0~4歳)に属する各年齢の罹患率は等しいとした。 ganjoho.jp/professional/s…

2014-12-29 21:55:08
今井長兵衛 @medanjin

全国の5年間単純平均罹患率は0~4歳 0.0、5~9歳 0.04、10~14歳 0.10、15~19歳 0.84、20~24歳 1.61であった。

2014-12-29 21:56:53
今井長兵衛 @medanjin

福島の本格検査受診者数は、2~7歳 16145人、8~12歳 21430人、13~17歳 17473人、18~22歳 5457人である。 pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/ken…

2014-12-29 21:57:56
今井長兵衛 @medanjin

本格検査の公表結果では、年齢階級が地域がん登録と異なるので、各年齢階級(たとえば2~7歳)の総数(16145)を年齢階級に属する年数(6)で割って各年齢の人数(2691)とした。福島の公表データの年齢階級の設定は、どうして通常の5歳刻みと異なるのかな?

2014-12-29 21:59:03
今井長兵衛 @medanjin

それはともかく、上記の方法で推計した福島の本格検査受診者数は2~4歳 8073人、5~9歳 16645人、10~14歳 19848人、15~19歳 12667人、20~22歳 3273人である。このデータは実数ではなく、あくまで推計値であるが、大きな間違いはないだろう。

2014-12-29 22:00:08
今井長兵衛 @medanjin

本格検査受診者が全国罹患率で罹患すると、例えば10~14歳の罹患数は罹患率0.10/10万 × 人口19848 = 0.0198となる。同様に、2~22歳の合計罹患数は0.1856(0.19)。したがって、標準化罹患比は 1.6 / 0.19 = 3.4 と試算される。

2014-12-29 22:03:10
今井長兵衛 @medanjin

すなわち、福島の罹患率は2006~2010年の同年代の全国平均の3.4倍であったと推定される。この結果の原因は現時点では不明である。単なるスクリーニング効果の反映であることを祈るが、いずれにせよ今後も検査の継続が必要と思う。

2014-12-29 22:05:13

9.標準化罹患比によると福島の罹患率は全国平均より高い!

今井長兵衛 @medanjin

第19回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成27年5月18日開催)の配布資料が公表された。 pref.fukushima.lg.jp/site/portal/ke… その中の「甲状腺検査(本格検査)」実施状況というpdf文書を読んでみた。 pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attac…

2015-05-19 20:28:56
今井長兵衛 @medanjin

福島原発事故直後の平成23年10月から平成26年3月にかけて、被爆の影響が出ていない(と称されている)時期の小児甲状腺の先行検査が実施された。平成26年4月から被爆影響の評価のための本格検査(二巡目の検査)が実施され、平成27年3月31日までの結果が今回公表されたわけである。

2015-05-19 20:39:51
今井長兵衛 @medanjin

二巡目の検査は平成27年3月までの2年間実施とされ、1年目の対象者は219,348人、受診者は148,027人(受診率67.5%)、結果が確定したのは121,997人。

2015-05-19 20:53:37
今井長兵衛 @medanjin

結果確定の121,997人のうち、細胞診で悪性/悪性疑いと判定された人は15人、さらに そのうち手術で甲状腺がんと確定診断された人は5人。ただし、二次検査の対象者と判定された1,043人のうち検査終了者は491人(47%)なので、罹患者はさらに増加する可能性がある。

2015-05-19 21:13:36
今井長兵衛 @medanjin

昨秋公表の第17回検討委員会資料に基づいて試算したのと同様に、福島の罹患が全国平均の何倍かを示す標準化罹患比を計算した。

2015-05-19 21:19:26
今井長兵衛 @medanjin

全国平均の年齢階級別甲状腺がん罹患率は、がん情報サービスの2011年データを用いた。男女合計の人口10万人・1年対罹患率は0~4歳 0.0、5~9歳 0.056、10~14歳 0.47、15~19歳 0.94、20~24歳 4.74。 gdb.ganjoho.jp/graph_db/gdb1?…

2015-05-19 21:30:29
今井長兵衛 @medanjin

福島県のデータでは、受診者の年齢階級ががん情報サービス(全国標準)と異なるので、例えば2~7歳の26,912人を6で割って各年齢に属する人数を4,485.3人と計算し、0~4歳の年齢階級の受診者数を2~4歳の3つの年齢分4,485.3×3= 13456人と推算した。

2015-05-19 21:49:20
今井長兵衛 @medanjin

福島県の受診者が全国平均の年齢階級別罹患率で罹患すると、たとえば、5~9歳では0.0556 × 27,592 ÷ 100,000 = 0.0153人が罹患することになる。年齢階級別の期待罹患数を今回受診した2~22歳まで合計すると(1年間に)0.88人が罹患すると計算される。

2015-05-20 09:21:43
今井長兵衛 @medanjin

先行検査で陰性で本格検査で悪性/悪性疑いと判定された場合に、先行検査から本格検査までの期間に罹患したと考えられ、その人数は15人(悪性=がん 5人、悪性疑い 10人)である。

2015-05-20 09:27:56
今井長兵衛 @medanjin

悪性疑いを罹患に含めると、1年あたり罹患数は6.0(15 / 2.5)~15.0(15 / 1.0)人となる。その場合の標準化罹患比は 6.8 (6.0 / 0.88)~ 17.0 (15.0 / 0.88) と推定される。

2015-05-20 09:30:51
今井長兵衛 @medanjin

悪性(がん)だけを罹患と考えると、その数は5人であり、1年あたり罹患数は 2.0 (5.0 /2.5) ~ 5.0 (5.0 / 1) 人と計算される。その場合の標準化罹患比は 2.3 (2.0 / 0.88) ~ 5.7 (5.0 / 0.88) となる。

2015-05-19 22:38:38
今井長兵衛 @medanjin

つまり、福島の小児甲状腺罹患は全国平均の 2.3 ~ 5.7 倍と推定され、悪性疑いを罹患に含めると 6.8 ~ 17.0 倍と推定される。本格検査における受診率の低下を考慮すると、実際はこれより高いかもしれない。二年目の受診率を高め、より正確な現状把握がなされるよう期待する。

2015-05-19 22:50:19