定型詩とその音楽的実現について(伊東乾さん)

まとめました。
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Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

楽譜って作曲の観点から読むと、ほとんどすべてが書いてあって、ただ最終的に演奏に供する形だけしか楽譜には書かないから、その成立プロセスを読み取る力がないと素通りしちゃう。作曲の勉強っていって和声の教科書とか学部の座学レベルを考えていては音楽なんか作れませんよ。手仕事の領域がポイント

2014-03-24 13:26:13
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

専門の人もいるので一応書くと「6から7へ/9・11」ってなことでしょうかヴェルディのヴァーグナー以降のコア。4ー6の和声が減3で対称的に展開出来るのがトリスタンの強みでした。それが見かけ上の7とか展開した9や11と自在に往復するエクリチュール。さすがに大学院程度の授業では扱えない

2014-03-24 13:45:50
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

学部はもちろん大学院の授業なども「特定の適性や才能を前提としない」民主的なものであることが求められる日本の大原則です。そうするとパリ音楽院とかでティーンにでも普通に出来るレッスンのレベルに修士でも博士でも永遠に到達できないというのが実の所。適性みた上での個人レッスンしかないんです

2014-03-24 13:47:59
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

判る子は一瞬で判る、一言言うだけで19歳でも20歳でも。判らないと25でも30でも一般教室で判って頂くのはたぶん不可能で、そもそもそういうことは考えない。指揮講座なんかは年長の参加者にも根気よくご一緒して1年後に出来るようになったりすると嬉しいですが、単位だすこま切れでは不可能。

2014-03-24 13:50:47
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

中学高校の同級生で数学者になってる連中の多くは教科書に書いてある表面から奥行きを自分一人の力でどんどん証明して行って、その過程で大半の演習問題に相当するものは自身でクリアもしてしまうから、オリジナルに書き進めてゆく能力が伸びる。優れたピアニストは自分なりの練習方法を必ず持ってます

2014-03-24 13:54:46
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

僕も楽曲を勉強する際には、必要なものを数点きちんと選んだらそれを一から愚直に見てゆく、それに尽きます。ただおよそあらゆる譜読みの方法というか、特訓みたいなものも含めて、書きませんけどかっこ悪いことも多いし、ともかく一定以上の量孤軍奮闘する訳ですね。だから体に入り演奏できる様になる

2014-03-24 13:58:09
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

僕自身も最初はシェーンベルクは歴史上の存在でした。ユダヤ人ですのでナチスに迫害され亡命したアメリカで育ったお嬢さんのヌリアさんは戦後欧州に移り住み、作曲家のルイジ・ノーノと結婚され、今年はノーノの生誕90年に当たるためヴェネツィアでさまざまの取り組みを現在進めておられます。

2014-03-24 15:52:32
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

生涯で一度だけ来日したノーノの滞在中、当時は学生でしたが駒場の大学でレクチャーをしてもらったり、サントリーホールの委嘱作のリハーサルにお共したり浅草や秋葉原を通訳してご案内したりしながら譜面も見て頂いた、あれから27年経ちますが、色んなことの原点をGigi Nonoに負っています

2014-03-24 15:55:12
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

何者でもない極東の21歳の若者の手紙に真面目に答えてくれ、一生かかっても解ききれない音楽の本質的なテーマの芽を丁寧に教えてくれたノーノの姿勢から「シェーンベルクの問題設定にどう答えるか」考え始めました。でブーレーズもリゲティもシュトックハウゼンもみな真面目にひざを乗り出してくれた

2014-03-24 16:12:11
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

ある問題が大事と思ったら、それを徹底して突き詰めると同時に、本物に直接アプローチするのがよいと僕は思う。正直10代の間僕が一番囚われていたのはジョン・ケージでした。大学に入り近藤譲さんに薦められケージと会って、先の問題を知ったとき、見田宗介、ノーノのお二人に決定的なヒントを頂いた

2014-03-24 16:17:15
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

ケージは市民運動などにシンパシーを寄せていました。でも体制そのものに安寿しながらプチ市民運動を応援する姿勢が典型的に帝国主義の追随と正面からノーノに言われれば(確かに彼はチェ・ゲバラなどの親友でもあった)考えざるえなかった。僕が「サイレントネイビー」等書いた原点もこの辺にあります

2014-03-24 17:28:33
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

つまり地下鉄サリンみたいな事件が起きたとき、安閑と自分の作曲や演奏だけに集中していられるか?あるいは大震災や原発事故のあと「僕は音楽しか出来ませんから音楽で応援します」といったことは決してできないと思ったのも、ノーノのアンガージュマンの姿勢が一定関係していると思います。とりわけ

2014-03-24 17:30:59
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

4月からの楽劇演習はいかにオテッロがトリスタンか、具にアナリーゼ確認、実際に演奏を作ってゆきます。オテッロのここぞというところには常にトリスタンが顔を出す。例えば有名なオテッロの登場場面、その直後に合唱が始めて彼の名を叫ぶとき、どんな響きで歌ってるか見てごらん^^d 乞うご期待!

2014-03-25 19:43:31
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

パルジファルやトリスタンの仕事を初めて一般化して縦横に使いこなしたのが晩期ヴェルディの巨大な遺産ともいえますが、明らかにさらに先にも行ってて、間違いなく若きドビュッシーに決定的影響を与えただろう場所も幾つか。専門家向けの内容ですが(ご見学希望はお問い合わせ下さい)平易を心がけます

2014-03-25 19:48:35
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

例えば若い人とフランス語の文章を読むとします。最初は少し慣れている分ちょっとは判るけど、学生が仏文に進み2年3年たち、まるまる1年パリ留学なんてころにはもう越されちゃってますよね。そうなると、今度は教えてもらうことが増える。で仕事の上で実際に助かる事がある。こんな感じですね

2014-03-27 06:28:59
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

翻って、作曲なんて学校で教えられないものの典型。和声などの科目で扱えるのはせいぜいラフマニノフ位までの語彙でプッチーニやドビュッシーはそろそろアウトという入門編の練習課題までで、ここ100年の芸術音楽をメソッド的に教える学校というのはまず存在しないでしょう。個別に身に着けるもの

2014-03-27 15:09:50
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

プッチーニやストラヴィンスキーの譜面には、この人はこういう人、としか言いようのない痛烈な皮肉や、やたら回転の速い皮肉とか、いろんなものが入っているわけで、それが作曲なわけですが、こんなものは分析して真似ましたというような代物ではありえず(ハリウッド映画音楽なんかには模作頻見ですが

2014-03-27 15:14:31
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

若いころのリヒャルト・シュトラウスなんて「才気煥発」を絵に描いたような仕事ですよね。今生きてる人だとタイプは違うけどオリヴァー・ナッセンとかサルヴァトーレ・シャリーノとか。これはその人の適性で、それを受け入れて応援する土壌があった結果伸びた訳で、学校で教わるものではない^^;

2014-03-27 15:28:46
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

海外で見るある種のプロとして、音楽の優れた基礎を持ち、楽器に通じ、良い指導者・教師でもあり「蝶々夫人」位の(現代としてはきわめて穏当な)語彙で洒脱な作曲をする人・・・ニーノ・ロータなど念頭においています。音楽院の院長とかだったんですよね・・・がいますよね。保守を言うならこういう形

2014-03-27 15:32:06
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

米国やイタリアでは商業音楽が十分資本を持っているのでロータ型というか、よりポップな形ならヘンリー・マンシーニみたいな暮らし方が可能になると思います。が芸術音楽の枠で考えるとすでに話は違ってきてフランスで保守といえばデュティユのような圧倒的なオリジナリティと品位が不可欠になってくる

2014-03-27 15:34:40
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

ジュゼッペ・ヴェルディがトリスタン和声を発展させた瞬間にはヴァーグナーという個人の名も想起される英雄の名も想起される「印付き」の響きでしたが、プッチーニの世代にとってはすでにそういう思い入れは一切なく、手法としておセンチな使い方も。アバドがプッチーニらを演奏しない理由の一部ですが

2014-03-27 15:48:12
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

私が一般向けに書く音楽の書き物について、ネット上に素人さんの「これちがうもんねー俺知ってるもんね」式の落書きを見て苦笑した事がある。あのね、音楽の力ってのは耳学問じゃない。楽譜をまず完璧にアナリーゼして、必要な範囲の資料には当たって解釈を確立、納得の行く演奏をするのが職業人の力。

2014-03-30 15:56:45
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

今学期の楽劇演習はトリスタン等を参照しつつヴェルディ・オテロと告知している通りですが、大学院のこまと学部ゼミ、どっちをどっちにしようか迷っています。イタリア語前提の大学院と思っていたのですが、むしろそっちが学部1,2年に向いてる気がしてき、舞台の3次元的活用を院生向けにしようかと

2014-04-04 07:54:40
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

ボイトが書いたオテッロのリブレットはシェークスピアの原作に加えヴィクトル・ユゴーの仏訳など参照した徹底した韻文でsettenarioとかendecasillabaとかの韻律に添った朗誦するだけで大変美しいテキストですが普段楽譜だけ見ても判りません。本物の伝統を教えて貰いましたので

2014-04-04 07:57:52
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

今学期は本物のディクションを(セミ)ネイティヴのTA(Alex)に入ってもらって、まず美しくテクストを読む所から始め、自然に伴奏をつけてゆくとそのままヴェルディが書いたものが出てくるプロセスを一緒に体験しようという考えです。ノーノが87年に駒場で言ってた意味が本当によく判ります。

2014-04-04 08:00:11