定型詩とその音楽的実現について(伊東乾さん)

まとめました。
1
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

ヴェルディ「オテッロ」のボイトによる詩の朗誦をむしろ教養1,2年のゼミでやろうかと思うのは、それこそまさに教養で後年役に立つと思うから。外交官などだったら当然、まったく別の職種でも、海外でちょっとしたちゃんとした席に着く際、古典詩朗誦のひとつふたつが随分身を助けるのは経験多数^^

2014-04-04 17:53:26
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

シェークスピアでもマラルメでも、あるいはラテン語の主の祈りでも 般若心経でも、丸暗記でなく身についた教養は 人間関係を助けます

2014-04-04 17:54:17
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

逆に、電気音響などが一般化する前のオペラ劇場がいかに立体的だったか、新しい道具も使いながら古典にアプローチする部分を 大学院のこまでやる予定です

2014-04-04 17:56:46
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

国内で声楽を専門とされる方も、必ずしもイタリア古典詩の本来の韻律は教えられずに歌として習ってこられるのが普通と思います もちろんそれは必要なんだけど、もったいないと思うんだよね 元来の韻律は本当にそれとして美しいものだから

2014-04-04 17:57:51
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

改めて思うが、詩はやはり定型詩なんじゃないかな、自分にとっては少なくとも。口語体自由詩あるいはテンポやリズムのない種の音楽のフレージング(60年代以降のフリーとかの常套句)は「弱起」というビックリがない。拍の頭が休みのリズムね。やぎ節で●ちょいと出ました三角野郎が~というときの●

2014-04-05 18:52:42
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

というのは、例えばボーイトがヴェルディのために書いた「オテッロ」のリブレットには随所に休符があるんですね重要な所で。定型で歌っていて感極まった所に一拍休みがある。楽譜だけ見ててもこれは判らない。でも(ヴェルディも最初見たはずの)詩のリズムを理解してから譜を見ると確実に弱起がある。

2014-04-05 18:55:05
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

関係者もご覧なので正確に書くと、例えば末尾、瀕死のオテッロが絶命するun altro bacioはEndecasirabboのリズムでも● un al-tro ba-cio ● と休みが入ってるんですね。かつそれが伸縮する。最初い思い出したのは親鸞の「和賛」で真宗では自在に伸縮み

2014-04-05 19:01:29
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

筑摩書房をお待たせしてしまっている次の本、語りの観点から日本と欧州の話芸をまとめるご依頼、欧州側元来はキリスト教とヴァーグナー楽劇で多くの話があるのですが、ヴァーグナーに影響を受けつつ決定的にその先に行っているヴェルディ+ボーイトの事例を書こうかしらと思い直しています。というのも

2014-04-05 19:04:17
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

後年のヴァーグナーはよくも悪しくも楽劇理論を立ててて原則として重唱らしい重唱は出てこない。ところがボーイトのリブレットは同時に2つとか3つタイムラインが台本段階で設定されていて、そこからヴェルディは7人のソリストと2組の合唱に同時に11の完全に異なる言葉のラインを歌わせるんですね

2014-04-05 19:08:45
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

こんな化け物みたいな音楽は、さかのぼればオケゲムとか比率ポリフォニーになくはないけれど、20世紀前半(端的にはベルク)というよりはB.A.ツィンマーマンとかべリオとか、ともかく20世紀後半以降の意識に近い恐るべき代物で、ヴェルディはかなり歴史と勝負してると思う。(三幕8場の事)。

2014-04-05 19:11:56
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

実際の演奏では、何となく通り過ぎてゆくのが最近の傾向のような気がします。翻ってオテッロ初演のオーケストラにチェリストとして参加していたトスカニーニがアメリカで残した演奏は、弱音で歌われる本当のソロ(ヤーゴの姦計の対話)を前面に出し、それに残り9つのラインが絡む本来バランスでの演奏

2014-04-05 19:14:35
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

僕ら20世紀後半の演劇や音楽を経験した耳からは、この11声部ポリフォニーは(適切な<フェードイン・フェードアウト>を設定することで)焦燥と混乱、混濁する「意識の劇場」というようなものを作りだせるので、それをやってみる考え。シェークスピアという人が透徹して持っていたリアリティか。

2014-04-05 19:17:05
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

ちなみにこのオテッロ全幕の行き着いた点みたいな3幕8場の終極点が(音の構成として)何か、ということに気づくと音楽の観点からは感無量になります(履修者のために宿題として残しておきましょう。ヴェルディと同時代を生きたある作曲家の非常に有名な動機が露骨にそのまま、でも違う形で出てきます

2014-04-05 19:21:22
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

楽譜のアナリーゼって実は終わることがなくて、というか膨大な可能性を尽くすことなんかできないので、一通り書かれた音符は全部検討しておく、までしかできない、常に準備不足ですみませんという謙虚な気持ちと、同時にひとまず自分が持った確信に立脚して実際に演奏してゆく事、二つながら必要ですね

2014-04-05 19:23:07
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

僕はイタリアオペラを人生の主要な仕事にしていないし、昔アシスタントで仕事が降って来たころは、それなりに、という不謹慎な取り組みしかして来なかったのが正直な所でしたが、どうすればまともに準備できるかは知っていたので実際に順番にやってみると、改めて不足を恥じるばかりというのが正直な所

2014-04-05 19:25:51
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

ただ順番にやってゆくと、必ずしもイタリア人で一線でやってる人も、この種のこと(特にアナリーゼ&古典詩のリズム&休符 ビックリされる^^)はそれとして知らない人も少なくないように思います。経験値の積分で押したりはできませんが、ひとつひとつ初心で丁寧に作ってゆく事は可能。初演の積りで

2014-04-05 19:28:55
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

僕自身が「一芸」で立ってる人間だから、余計に教育はバランスがとれたものが大切と思う。三点支持と言うとおりで「人文社会科学」「自然科学」「文学芸術宗教」おのおの補い合うこの三つの背景のどれ一つを欠いても、長い人生で苦難と遭遇したとき、かならずシリアスな問題に直面することになる。

2014-04-06 18:35:43
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@chorusmasterK さきほどカルーソーの言葉を引いておられましたが20世紀前半までの声楽テクニックは木造の劇場全体をいかに響かせるか、体のテクニックと表裏一体であった(Scuola Italiana)とクレモナの友人Dr. Michele Bosioから教えて貰いました

2014-04-06 22:40:26
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@chorusmasterK Michele Bosio にはVerdiのためにBoitoが書いたOtelloのリブレット、もともとの韻文詩の読み方も教えて貰ったのですが、結局母音を響かせるんですよね、で間に適切に子音が入って意味を伝えるけれど母音の響きを痩せさせてはいけない、と

2014-04-06 23:46:16
黒川和伸KazunobuKurokawapapa @chorusmasterK

@itokenstein なるほど!確かにイタリア語と日本語は一見似ていますが、イタリア語のほうが母音発声時の声門閉鎖が強いですよね。やはり声楽においても詩の朗読においても共通点がありそうで興味深いです。

2014-04-07 00:02:38
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

.@chorusmasterK 母音の流れが切れる、というのは 何か劇的な瞬間なわけですよね。Otelloの場合は断末魔とか そうとう何かある。普通の部分では畳み掛けるようなレチタティーヴォが実は一つの韻律の中にあるとか凄く面白いです^^ でぶつ切りの外国人発音は滅多切り^^;

2014-04-07 00:06:57
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

@chorusmasterK お能の謡本にもそういう部分が沢山あり、符合に感激しました^^ ヴェルディの場合、強い母音ごとに一定のリズムで読むと、途中母音融合部とか早口になりますよね。するとそこに自然に3連符とかのリズムが生まれてきて、ちゃんとその通り作曲されててすごい面白い^^

2014-04-07 00:19:59
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

歌を歌うかたむけ:イタリアオペラのレチタティーヴォ、やたら沢山並んだ独立した16分音符とか、時折三連になってたりするのとかありますよね。シンプルなものはトスティあたりから、ヴェルディ盛期まで、古典詩の韻律通りに歌えば万事解決、そうでないと不自然になる原理だそうです7脚韻11脚韻。

2014-04-07 00:22:55
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

7とか11とか奇数、最初わからなかったのですが、もし完全に同じ音価で朗誦したら7韻は タタタ タタタ タ で七つ。11韻は タタタ タタタ タタタ タタ で11個。なんてシンプルなんだろうと思いました。実際には長母音とかアクセントとかゆがみがついて2拍子になったり3拍子になったり

2014-04-07 00:25:15
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

あとすごいなぁと思ったと思ったのは、イタリア古典詩ってラテン語から直結してるんですね。あたりまえだけど。でダンテは当然として、アウグスティヌスでもアッシジの聖フランチェスコとかマルコポーロでも「わが文学の古典」として韻律が分析されてたりする。専門家に教えて貰わねばと改めて痛感中。

2014-04-07 00:27:52