#完全ノープラン艦これ与太話 【アインハンダー・フォン・グルーネ・ラオペ】

帝国陸軍っていうとメガテンで悪魔召喚してるイメージしかない。そんな短編。
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春魔解丼 @vespiking

●【完全ノープラン更新です】● #KZNPLN

2014-03-25 21:13:54
春魔解丼 @vespiking

「これが『魔神バアル』、こちらが『魔王アバドン』」薄暗い会議室。青白い顔の女が、古びた諸外国の神学書を何冊か広げ、恐怖心を煽る悪魔の挿絵を指し示す。「『邪神テスカトリポカ』『天魔インドラ』『大天使カンヘル』『破壊神ジャガーノート』……世界の神様は多種多様ですなァ」 #KZNPLN

2014-03-25 21:20:19
春魔解丼 @vespiking

「准将殿」赤髪の駆逐艦が口を挟む。「私は准将殿のマニアック趣味には興味がありません」「オヤ。いいとは思いませんかな?これらは皆、他国で神として崇められる存在。それが異国では、悪魔として忌み嫌われる。じつに面白い現象だ。ヒトの信仰は戦争の歴史と共にある」 #KZNPLN

2014-03-25 21:22:58
春魔解丼 @vespiking

「我々もまた、同じ。深海棲艦と呼ばれる者どもと、我ら艦娘。同じ第三種混成生物でありながら、戦争の情勢によって善悪は転じる。敗戦国の神は戦勝国の悪魔となり、ウラとオモテが入れ替わる。戦争の面白みを、じつによくあらわしている。見てください、この醜悪な絵」「准将殿」 #KZNPLN

2014-03-25 21:25:41
春魔解丼 @vespiking

「少尉殿は働き者でありますなあ。たまには余暇に身を委ねるのもよいものでありますよ」「そういうのは、職務時間外でお願いします」「イヤハヤ」准将と呼ばれた青白い顔の女は、相変わらずニタニタと笑いながら私物の神学書を背囊に詰め、かわりに資料を取り出す。 #KZNPLN

2014-03-25 21:29:44
春魔解丼 @vespiking

#完全ノープラン艦これ与太話 【アインハンダー・フォン・グルーネ・ラオペ】

2014-03-25 21:33:09
春魔解丼 @vespiking

――大本営総本部『赤レンガ』第三棟6F廊下。 #KZNPLN

2014-03-25 21:34:37
春魔解丼 @vespiking

死体めいて青白い顔をした黒軍服の女、新大日本帝国軍准将あきつ丸が、赤髪の駆逐艦を従えて歩く。「では少尉殿。かの鎮守府へはTOKYOエクスプレスが運行しております故。工廠長殿に宜しくお願い致します」「Geht klar」2隻は互いに一瞥もくれず、淡々と言葉を交わす。 #KZNPLN

2014-03-25 21:40:56
春魔解丼 @vespiking

『赤レンガ』の建造物は実際広大であり、ゲリラ占拠にも耐えうる迷宮めいた複雑な構造をしている。そのため、艦娘同士が擦れ違うことはあまりない。この日は、そんなレアケースであった。2隻は急ぎ足で歩く緑髪の駆逐艦と出会い、ぶつかった。「おっと。これは失敬」「スミマセン」 #KZNPLN

2014-03-25 21:45:04
春魔解丼 @vespiking

緑髪の駆逐艦、夕雲は最低限の謝罪をし、足早に2隻から離れる。だが「うむ。これは実に良い逸品ですな」死人めいた平坦な声が夕雲を呼び止める。「切れ味がとてもよい。キョートの職人芸でありましょうか。貴艦、所属はマイヅルですかな?」夕雲に戦慄が走り、身体が止まる。 #KZNPLN

2014-03-25 22:07:00
春魔解丼 @vespiking

ツカツカと迫る足音に対し、夕雲は引きつった顔で振り返る。腹部をひけらかすように両手を広げたあきつ丸が歩いている。その脇腹には、銀に輝く小刀が突き刺さっていた。「日本の刃物は素晴らしいですね。ワザマエ」赤髪の駆逐艦が無感情な顔で世辞を言う。 #KZNPLN

2014-03-25 22:10:10
春魔解丼 @vespiking

「忘れ物でありますよ。さぞ高級な品でしょう。貴艦が去る前に気付いてよかった」あきつ丸は脇腹の小刀をするりと抜き取り、柄が相手側にくるよう持ち替え、丁寧に夕雲へ手渡した。その刃はあきつ丸の賞賛通り非常に美しく、ひとつの汚れもない。一滴の血すらも。 #KZNPLN

2014-03-25 22:13:21
春魔解丼 @vespiking

「ア、アア」夕雲は恐怖のあまり失禁する。震える手に握られた小刀を、恐怖を振り解くように、絶叫と共に振り上げた。「アアアーーーーッ!よくも、よくも妹をーッ!」夕雲の振り回す小刀は実際ヤバレカバレであり、ひょいと数歩後退したあきつ丸には掠りもしない。 #KZNPLN

2014-03-25 22:15:47
春魔解丼 @vespiking

「ハテ。人違いでは?自分と貴艦は初対面。貴艦に妹君がおられる事も存じません故」「ワーッ!ウルサイ!そういう意味じゃない!今の私じゃない!ワーッ!」KABOOOOOMM!!! #KZNPLN

2014-03-25 22:17:57
春魔解丼 @vespiking

夕雲の船体が轟音と共に爆炎に包まれ、廊下の壁にべたりと叩きつけられた。ちぎれた首から鮮血が吹き出し、美しい小刀の刃を赤黒に曇らせる。「イヤハヤお見事。その瞬発力もさることながら、ブルーノ殿の精密な狙撃も素晴らしい」「自分、カエザルであります」「おっと、これは失敬」 #KZNPLN

2014-03-25 22:23:27
春魔解丼 @vespiking

黒い軍服に身を包んだ長髪の装備妖精へ謝罪の礼をし、あきつ丸の視線は再び砲撃者へと向いた。「大佐殿、お手数をかけましたな」「いえ。最近わが軍の規律が緩んでいますわ。私がしっかりと目を光らせますが、ご注意ください」「いや、じつに頼もしい」 #KZNPLN

2014-03-25 22:28:11
春魔解丼 @vespiking

「准将殿」赤髪の駆逐艦が割って入る。「この一件、どう処理致しましょうか」「なに、問題ありませんぞ。軍の基地で刃物を振り回したテロリストを、軍の将校が武力鎮圧したまでです。ただ珍しいだけの、至ってふつうのできごとでありますな」「なるほど」 #KZNPLN

2014-03-25 22:33:39
春魔解丼 @vespiking

「では、報告は私ビスマルクが担当致しますわ」「これはありがたい。ちょうど、自分や少尉はこれから用があります故」「では、お言葉に甘えて。先に失敬致します」赤髪の駆逐艦はそそくさとその場を立ち去る。続いて、あきつ丸も。2隻の視線が夕雲に移る事はなかった。 #KZNPLN

2014-03-25 22:38:24
春魔解丼 @vespiking

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2014-03-25 22:39:22
春魔解丼 @vespiking

『工廠長さまァ~。誰か来たみたいですよォ』水槽に備え付けられたスピーカーから、グネグネと霧島へ媚びるような声が響く。水槽には1本の魚雷。インテリジェンスを有する知性魚雷である。「あー、ハイハイ。私がいくでちよ」『どなたですかねェー』 #KZNPLN

2014-03-25 22:45:13
春魔解丼 @vespiking

「おうカイガイカンとは珍しい。おめー誰でちか。宗教勧誘とかならヨソでやってくれでち」「……随分とシツレイな歓迎ね。日本は礼節を重んじる国だと聞いていたけれど」「おめー胸の勲章少尉じゃねーか。ゴーヤの階級は中尉でち。おめーよりワンランク上でちよ」「目ざといのね」 #KZNPLN

2014-03-25 22:48:37
春魔解丼 @vespiking

「まあ一応、そうね。私は大本営所属なんだけど、まあいいわ」「おうおう、大本営だからエライんでちか。あんまし無礼た口きいてっとてめーも魚雷にするでちよ」「なにそれ。まあいいわ。霧島工廠長はどちらに?」「でち?ボスに用でちか」 #KZNPLN

2014-03-25 22:51:25
春魔解丼 @vespiking

「これはこれは。部下の非礼をお詫びしますわ」後ろからやってきた霧島が、深々と頭を下げる。「駆逐艦ツェット・ドライ少尉。お会いできて光栄ですわ」「マックスよ」赤髪の駆逐艦が口を挟んだ。「マックス・シュルツ。それが私の今の艦名」「これは失敬」霧島は平謝りした。 #KZNPLN

2014-03-25 22:56:12
春魔解丼 @vespiking

「ところで」マックス少尉は左右を交互にじとりと睨む。「この方々、これは作戦行動の何かなの?」工廠玄関口、柱の影でコソコソと隠れる3隻の艦影あり。「オオ……独逸艦、実に良い体つき、実際エロス」「ああ、素晴らしいですわ」「そう?私はもうちょっとスマートな方が……」 #KZNPLN

2014-03-25 22:59:45