私の喫煙史

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堀井義博 @yoshihirohorii

私の喫煙歴は遅く、そして短い。人生で一番最初の喫煙体験は高校二年で、幅を効かせたがってた山岳部の先輩(三年生)が、我々の合宿にムリヤリ差し入れて来たのを吸った。マイルドセブンだったという記憶がある。

2014-03-27 01:13:57
堀井義博 @yoshihirohorii

当時喫煙には全く興味がなく、それどころか喫煙していた父を、家族内でかなり迫害していて、当時の私はその急先鋒だった。また合宿にタバコを差し入れた先輩を嫌いだったこともあり、今で言うスルーをしようかと思ったが、イキがりたがってる同級生たちの態度もウザくて吸ってやった。

2014-03-27 01:17:27
堀井義博 @yoshihirohorii

よくTVドラマや映画にあるように、たぶんゲホゲホにむせて、同級生たちからからかわれるんだろうと覚悟を決めて吸い込んだ。そしたらあまりにスムースに通ったので、その時ばかりは、糾弾していた父のヘビースモーキング(それ程でもないんだけど)に、奇妙にねじれた感謝の気持ちを抱いた。

2014-03-27 01:21:42
堀井義博 @yoshihirohorii

その時に一本吸って、喫煙に関して私が理解したことは、 1). べつにむせない 2). 必要ならいつでも吸える 3). 必要ないから吸わなくていい 4). なんで火事の素を持ち歩く? というようなものだった。

2014-03-27 01:24:19
堀井義博 @yoshihirohorii

大学に入学し、製図室(当時の京都工繊大では1年生から製図室に製図板が割り当てられてた)で作業している時、浪人経験者や都会出身の同級生らは当然のように煙草を吸ってた。最初は何も思わなかったが、しばらくして、エスキス前のピリピリした時に煙草があるのは羨ましいと感じることがよくあった。

2014-03-27 01:30:20
堀井義博 @yoshihirohorii

それでも家庭内で親父の喫煙を攻撃している立場上、自分は吸うワケには行かない、という気持ちがあった(当時は草津の実家から通ってた)。ただし、父に対する攻撃の態度は軟化させてたと思う。何故かというと、喫煙がある種の安らぎを与えるものだ、ということを、製図室の経験から学んでいたから。

2014-03-27 01:33:31
堀井義博 @yoshihirohorii

とにかく私はまだ吸わなかった。しかし3年生の春休みに人生初の海外で中国へ旅行に行ったことを切っ掛けに、私の喫煙生活は始まった。硬席(二等車の安い席)に乗って都市間を走る列車に乗っての旅(上海→西安が30時間くらい?)では、向かいに座った現地人が挨拶代りに煙草を勧めてくるのだ。

2014-03-27 01:39:40
堀井義博 @yoshihirohorii

断ることもできるが、長時間の旅をなるだけ気持ち良く過ごすには「あいさつ」を断らない方がいい、地球の歩き方にはそう書いてあった。なので私はそれに従い、煙草を勧められたら素直に吸ってた。現地の安煙草だった。

2014-03-27 01:43:41
堀井義博 @yoshihirohorii

それを繰り返す内に貰うばかりじゃ良くないと思うようになり、交換にあげるための煙草を用意するようになった。この時点では自分が吸う用ではなく、もっぱら「社交用の小道具」として持つことにしただけだった。何を買えばいいのか分からず、現地ブランドの何倍も高いマールボロを買った。

2014-03-27 01:46:55
堀井義博 @yoshihirohorii

高級品だからだろう。交換にあげるマールボロは喜ばれた。試しに自分でも吸ってみた。現地品とは比較にならない吸い心地だった。それ以来、列車で勧められても胸ポケットからマールボロを出して「あるよ」と見せて断るようになり、逆に相手に1本あげるという感じに変わって行った。

2014-03-27 01:50:33
堀井義博 @yoshihirohorii

この時の中国旅行では本土に3週間強ほど居り、陸路で香港(当時は未だ返還される前だった)に入って数日滞在し、それで帰国したのだが、この1ヶ月間に、自分で煙草を買って吸うことがすっかり習慣化していた。なので香港を出る前には免税品店で自分用に煙草をまとめ買いするようになってた。

2014-03-27 01:55:41
堀井義博 @yoshihirohorii

帰国して両親に再会した時、自分が喫煙の習慣を身に付けたことを、帰国後の最初の挨拶として父に告白し、それまでの自分の父の喫煙に対する非礼な態度を詫びた。当時たしか既に喫煙を辞めていた父は特に何も言わなかった。1989年の春だった。私の喫煙は、そこから2005年6月6日まで続いた。

2014-03-27 02:02:09
堀井義博 @yoshihirohorii

だから約15年間吸ってたことになる。最初は中国で吸い始めたマールボロだった。二年後の大学院1年生の夏、レム・コールハースに会うため初めてのヨーロッパへ行ったあと色々な銘柄を吸うようになった。並行輸入品の酒が出回るようになり始めた時代で、煙草も多種多様な銘柄が京都でも買えた。

2014-03-27 02:14:40
堀井義博 @yoshihirohorii

イタリアのINTERNAZIONALEとかギリシアのDUCADOSとかフランスのGAULOISESとか、多くの日本人が顔をしかめる銘柄を吸ってイキがってた。調子に乗って葉巻を吸ったりもした。オランダで覚えた手巻き煙草も吸ったりした。まぁ絵に描いたようなDQNだったのだと思う。

2014-03-27 02:18:30
堀井義博 @yoshihirohorii

その後、都内の設計事務所に就職して東京へ引越し、最初はマールボロを吸っていたが、住んでた街の影響?なのか、ほどなくして「昭和の労働者テイスト」みたいなものが欲しくなり始め、ゴールデンバットに手を出すようになった。今と違ってもちろん両切り。その後しばらくゴールデンバットを吸ってた。

2014-03-27 02:25:06
堀井義博 @yoshihirohorii

しかしゴールバットはその製法からして品質にバラツキがありすぎ、たまにニンニクの欠片?みたいなものが混入してたりして、それを吸い込んだ時は吐きそうになったりしていた。また、両切りの上に巻きが甘く、すぐボロボロのヨレヨレになるのも気に入らなかった。それでしばらくしてエコーに変えた。

2014-03-27 02:28:04
堀井義博 @yoshihirohorii

エコー時代は長く続いて、結局2005年6月6日の夜中に、突如断煙を思い付くまでの間、基本的にはずっとエコーを吸っていた。その間、事務所を辞めたりチューリヒへ引越したり、また東京へ戻って来たりした。チューリヒでは日本から友人知人が来る度にエコーの差し入れをお願いした。

2014-03-27 02:32:24
堀井義博 @yoshihirohorii

エコーのパッケージはスイス人にはとても人気があり、彼らはクール!と言ってもてはやした。しかし私のチューリヒ在任中に、パッケージの仕様が変更された。もとは薄くて安いツヤのない普通紙に二色刷りのパッケージだったのだが、いきなりツヤのあるコート紙?にカラー印刷へと仕様変更された。

2014-03-27 02:36:40
堀井義博 @yoshihirohorii

前者のパッケージは「シブかった」が、新しい方はダサいと思った。スイス人も似た意見だった。日本からの訪問客に差し入れてもらったエコーが切れると、諦めて現地の煙草を買ったのだけど、最初はチューリヒで最も一般的な銘柄のPARISIENNEを吸ったりした。悪くはなかったが私には弱かった。

2014-03-27 02:40:11
堀井義博 @yoshihirohorii

それで再びGAULOISESを吸うようになった。フランスの煙草と言えば、日本の親仏インテリが好むGITANESがエエカッコしぃ好みの銘柄だったんだけど、ブルジョワ階級出身ではない自分としてはプロレタリアらしくGAULOISESを好んだ(笑)。これはスイス人にはウケなかった。

2014-03-27 02:45:28
堀井義博 @yoshihirohorii

日本に戻って来て数年は再びエコーの生活に戻った。しかし手持ちの煙草を全部切らした2005年6月6日の夜、わざわざ買いに出るか、それともそのまま断煙するかという二択が脳内に浮かび、私は瞬時に断煙を選択した。雨が降っていて、買いに出るのが途轍もなく面倒に思えたのだ。

2014-03-27 02:51:52
堀井義博 @yoshihirohorii

基本的にはそれ以来、私は今も断煙してる。しかし今日までの間にほんの数回、酒を飲んでる時に人からもらって吸ったことがある。理由は二つあって、酒を飲んでると無性に吸いたくなることがあったのと、そうやって吸うと過去の喫煙の習慣がぶり返すかどうか自分を試してみたかった、ってのとがある。

2014-03-27 02:56:11
堀井義博 @yoshihirohorii

結論としては、まったくぶり返す様子はなく、煙草がなくても全く問題ない。あの2005年6月6日の夜の僅か30秒に満たない瞬間の思索で断煙を決意して以来ずっと全く悩まなかったし、全然辛くなかった。そう決めたらそうなったし出来た。決めるということがいかに大切かをこの経験で学んだ。

2014-03-27 03:02:28
堀井義博 @yoshihirohorii

実際、私は「煙草を止めたい」などとは一瞬も思わなかったし、今でも別に思ってない。だからこそ酔ったらたまに吸ったワケだし。だけど、止めるって決めた。そうしたら吸うことを止めた。キメたんじゃなくて決めた。よく何かをキメてる人がいるが、あれは他人に見せてるだけだ。そうじゃなくて決める。

2014-03-27 03:07:27
堀井義博 @yoshihirohorii

おもしろいことに、私が断煙を決めても、べつに宣言をしたワケでも何でもなく、本当にただそう決めただけだったため、妻がしばらく気付かなかったくらいだ。彼女が気付いて「そういえば最近ぜんぜん煙草吸わないね」と指摘したのは、決めてから3週間くらい経ってからだった。

2014-03-27 03:09:37