【twitter小説】水中に沈む花#4【ファンタジー】
メギッサは水で一杯になった神殿の奥でじっと待っていた。スキュラは水中で呼吸できる。赤い水が無ければ溺れる心配もない。グレイソフィアの神像が再び輝きだした。暗い神殿の中、ふよふよと光源が水の中で揺れている。 111
2013-11-06 16:47:17グレイソフィアの声が響いてきた。外はもう安全だと言う。メギッサは恐る恐る神殿の外に出てみることにする。青い水を湛えた水中洞窟の中を光源が照らしている。神殿の外壁についていた赤い靄はその生気を失い赤褐色に変色していた。 112
2013-11-06 16:52:39ぼとん……と何かが水に入る音がした。見ると、水中洞窟の天井に光る窓が見える。いや、それは湖の底と繋がっている天窓だった。天窓の向こうにも別の光源の光が見えたが、すぐにどこかへ行ってしまった。メギッサを追いかけて光源が水中洞窟を照らした。 113
2013-11-06 16:57:15光源に照らされながら、何かが天窓のあった所から落ちてくる。それはラグビーボールのような形と大きさの物体だった。青い宝石のような色をしている。それは水中をゆっくりと落ちていき、メギッサの目の前に落ちた。メギッサはそれを拾い上げる。 114
2013-11-06 17:03:12ずっしりと重いそれは何かの植物に見えた。神殿の奥でグレイソフィアの神像が光っている。 ”メギッサ……それは水中花の実ですよ” 「えっ……これが……」 115
2013-11-06 17:06:33”水中花の種は難病に効くと言います。あなたの姉もその実で元気になりますよ” 「いいんですか、これは聖なるもので……」 ”その神があなたに下賜しようというのです。受け取ってくださいな” 116
2013-11-06 17:10:09「……はい!」 メギッサは笑った。この実を届けてくれた者たちは分かっている。きっと他の観光客より一足先に水中花の花を見てきたのだろう。メギッサは彼らのことを思った。彼らはどこからともなく現れる。 117
2013-11-06 17:12:55そしてみんな……大渦のように巻き込んで、何もかも洗い流していく。遠くで水音が聞こえる。誰かの話し声が聞こえる。この化け物は……誰かが水門を……はやく湖に水を……それは全てが終わった証拠だった。 118
2013-11-06 17:16:36ゆっくりと水中洞窟の水が排出されていく。天窓が閉じられ、湖に流れていく大量の水音が聞こえた。 「あらあら、忘れ物になってしまいましたね……」 メギッサは笑った。彼女の頭上では光源が揺れ、儚い光を放ったのだった。 119
2013-11-06 17:19:01