昨日、ショットの中の三幕構成という考えを、『恋のロンドン狂騒曲』(ウディ・アレン)で話してみたが、<ショットの三幕構成>って概念がイマイチわからないという問い合わせがあった。
2014-03-30 01:02:51映画の物語全体は三幕構成になっているというのはいまや常識だ。しかし、物語全体を構成する各シーンも大抵三幕構成になっているのである。
2014-03-30 01:03:53ここで注意しなければならないのは、各シーンには必ずしもオチがつかないことだ。むしろシーンの最後は宙吊り状態にしたまま、期待感を煽って次のシーンにつなげていくことが多い。
2014-03-30 01:05:23これが、“ドミノ・エフェクト”(domino effect, cause-and-effect chain, action-reaction link)などと呼ばれる技法である。僕は「ドミノつなぎ」と呼んでいる。
2014-03-30 01:05:42こういうシーンは枚挙に暇がないが、『ゴッドファーザー』の序盤、ハリウッドから戻ったロバート・デュバルがマーロン・ブランドらに現状報告をするシーンを観てもらえればわかりやすい。落語でいう、マクラから本題へ、そして宙吊りのまま、次のシーンになだれ込んでいくのがわかるはずだ。
2014-03-30 01:07:38で、カメラのショットもこのような三幕構成になっていることがままあるのではないか、ということを僕はいいたいわけである。つまり三幕構成というのは人間の脳にとっては<認識の基本フォーマット>なのではないか、と。
2014-03-30 01:09:06では、典型的な例を紹介してみよう。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(ポール・トーマス・アンダーソン)の冒頭から約40分くらいでのシーンである。
2014-03-30 01:09:44まず、ドアに人影が現れる。(PART1) http://t.co/dBGzV09gNV
2014-03-30 01:12:10開くと、ダニエル・デイ=ルイスの部下が立っている。 ここで、カメラはパンして――、 http://t.co/GVVU9Net3M
2014-03-30 01:13:36窓を背にしているダニエル・デイ=ルイスを捉える。 ここからダニエルと部下との会話がはじまる。ここからPART2、つまり本題だ。 ここでカメラはダニエル・デイ=ルイスにじっくりとトラックアップする。 http://t.co/FRvslYOz5h
2014-03-30 01:15:06トラックアップして、カメラは部下に切り返すことなくダニエルを大きく捉える。 http://t.co/vqE59KAfuC
2014-03-30 01:15:59ダニエルはここで立ち上がる。カメラは、この動きに反応してフォロー。 http://t.co/avvjBLlQUR
2014-03-30 01:16:46カメラはパンしつつ、ダニエルの背中を追う。 観客は心のどこかで行く先が気になる。 http://t.co/wdNjQ0jzCX
2014-03-30 01:17:23すると、その向こうに多くの聴衆がどーんと現れる。これがPART3 http://t.co/CpwJia7uRJ
2014-03-30 01:18:34ダニエルが左に移動して、観客がよく見えるようになる。 これはある意味でオチと言ってもいいかも知れない。 このショットの最後で空間が認識されたのである。最初にダニエルが座っていたのが控えの間だったのだ。 http://t.co/1OzueXOfX6
2014-03-30 01:19:26これは、いま僕が言葉にしたわけであって、観客はカメラワークのいちいちを意識しない、映画を観ている間はしたくてもできない。しかし、無意識のうちにこのようなショットを心地よいと感じているのではないか。その理由のひとつが<ショットの中の三幕構成>ではないかと思うのである。
2014-03-30 01:22:22