意識の低い就活生森山のバスケ

バスケを諦めることを諦めた結果がこれだよ。
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意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

勝ちたい。 楽しみたい。 良い試合にしたい。 3つもオレ達の世界では揃わない。 だから、せめて…持っているものだけは手放したくないと思った。答えはとっくに出ていたんだ。 明日の第一志望の面接、がんばりたい。

2014-03-30 00:15:05

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意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「もしもし伊月? いや〜試合のビデオ見てたら感極まっちゃってさ〜」 「今何時だと思ってるんですか」 「えっ? まだ12時だぞ」 「こっちは朝から練習あるんですよ」 「悪い悪い、いろいろ話したいことあったけどまたにするよ」 「…それは、大事な話ですか」 「…オレにとっては」

2014-03-30 00:20:06
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「じゃあ、オレにとっても大事な話ですね」 伊月はきっぱりと言い切った。 「今からウチにいらしたらどうですか。一晩ゆっくり聞きますよ。今ならギリギリ電車も出てますし。それに、相田スポーツジムならウチから行った方が近いですよ」 短く礼を言って、就活スーツと鞄を持って家を飛び出した。

2014-03-30 00:25:06
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

インターホンの代わりにメールを送ると、伊月が門まで降りてきてくれた。 「静かに入って下さいね。皆もう寝てますから。マスカラ…私マスカラ渡しますから…キタコレ!」 「家族いるのに内緒で部屋に男つれこんでいいのか?」 ゴミを見るような目で見られた。ダジャレは良くて冗談はダメなのかよ。

2014-03-30 01:00:05
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

黒子のようにはオレはなれないから…あのとき一番に勝利を捨ててしまった 何が正しくて何が間違ってるのかなんて今もわかんねーよ オレは冗談で本心を覆い隠してばかりだけど 伊月のおかげだよ 本音が言えたの お前と3年間バスケやれて良かったって思えた それじゃダメかな ありがとう 伊月

2014-03-30 01:30:04
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

@tos 「ベンチで項垂れてた森山先輩が、4ファウルの日向に重なったって言ったら怒りますか?」 「えっ。それは……怒る!」 「じゃあ、もうおあいこですね」 伊月が笑うと振動が伝わってきた。それが心地よかった。

2014-03-30 01:35:06

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意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「こうして食卓を囲うと4年前の決勝戦を思い出すなあ」 「てっぺーさんがいるの慣れてきたけどな」 「森山君もたくさん食べてね」 伊月家で朝食をいただいたら、なぜか当たり前のように木吉がいた。いつ来てたんだ。 ところで、舞ちゃんかわいい。お母様お美しい。

2014-03-30 07:45:06
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

一足先に食べ終えた伊月が立ち上がった。 「じゃあ、オレもう出るけど森山先輩がんばってくださいね! あ、カントクは絶対に口説いたらダメですよ。射殺されますから!」 「行ってらっ…射殺!?」 「ああ、懐かしいな。オレらも何度か殺されそうになったよなあ」 木吉が朗らかに笑った。こわい。

2014-03-30 07:50:06
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

戸が閉まる音がした。伊月が出ていったようだ。 木吉が味噌汁を飲みながら小声で、でも確かに言った。 「…でも、逆に言えば景虎さんの弱点はリコです。頭の片隅に置いておくといいかもしれません」 あたたかいはずの味噌汁が一瞬冷たく感じた。

2014-03-30 07:55:07
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「景虎さんは一筋縄ではいきませんから。にしても、森山さんが相田スポーツジムを受けるのかあ」 「ああ、やっぱりバスケを一生の仕事にしていきたいと思ってさ。落ちても他のところを受けるつもりだ。オレは有名選手でも何でもないし難しいかもしんねーけど」 「いや、それがいいと思いますよ」

2014-03-30 08:00:04
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「続けられる人は続けるべきだ」 木吉は食卓の下に置いていた杖を見せて苦笑いした。

2014-03-30 08:05:05

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オレはもう“スーツでなくて構いません”には騙されん! ヒョウ柄の服はまだ見ぬあのコのデートに取っておく! 履歴書も忘れない! 完璧な就活スタイルで、相田スポーツジムのエントランスのインターホンを押した。ぴんぽーん。

2014-03-30 09:45:06
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「担当の者が来るまでしばらく…えと、森山さん…?」 待合室まで案内してくれたのは相田リコちゃんだった。 「覚えててくれたんだね! こんなところで再開するなんて運命だと思(ハッ! 口説いちゃいけねーんだった!)うけど、別に付き合いたいとは思わないよ」 「ケンカ売っとんのかワレ!!」

2014-03-30 09:50:04
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「よォ、お前がゲンゲンの言ってたヤツか」 体育館に通された。ナマ相田景虎かっけー。身長オレと同じはずなのにオーラでデカく見えた。武内監督の威圧感(物理)とはまた違った。 「武内監督のご紹介で参りました、K大学の…」 「あー…んなのはいい」 渡した履歴書は一瞥もせず投げ捨てられた。

2014-03-30 09:55:06
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「志望動機なんざどいつも同じだからな。ソイツがどれだけバスケが好きか・今まで頑張ってきたか見るのに言葉はいらねぇ。プレイを見りゃあ一発でわかる。つーわけで、」 相田景虎がジャージを脱ぎ捨てた。 「かかってきやがれ! 1on1で攻守交代10回勝負。オレから1点でも取れたら即採用だ」

2014-03-30 10:00:03
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「そんで、何でどいつもこいつもスーツで来んなつってんのにスーツで来やがんだ。おい、リコ。この七三頭に何か貸してやれ」 わかったわ、と言うとリコちゃんはオレのボタンに手をかけた。 「なっ!? オレ女の子に脱がされるのは初めてで…あっ、そこはっ」 「「ならさっさとシャツを脱げ!!」」

2014-03-30 10:05:02
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「これでいいかしら。今年一つサイズ間違えて頼んじゃって」 渡されたのは誠凛のユニフォームだった。オレの誠凛ユニ姿って誰得だよ。しかも似合わねー。 「森山さんが来てくれたら私も嬉しいんで頑張ってください」 「リコちゃん…! もしかして、オレのこと…?」 「私カレシいますから」 「」

2014-03-30 10:10:04
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「パパは伊達に何年もトレーナーやってないわ。癖や型を見切られたら終わりよ。10回あると思って様子見してる暇はない。それに森山さんはシューター。DFは捨てて実質チャンスはOF2回ってとこね。最初から決める気でいって。…何ニヤニヤしてるんですか」 「いや、誠凛の戦法だな、と思って」

2014-03-30 10:15:06
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「…そういうことなら、リコちゃんに一つお願いしてもいいかい?」 「オイ七三! いつまでオレのリコたんとコソコソ話してんだ!」 倉庫の外からから怒鳴り声が聞こえてきた。 「なっ! それホントに作戦なんですか!? 森山さんの自己満足じゃなく?」 「任せろって。オレがキミを守るよおぉ」

2014-03-30 10:20:06

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意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

「それでは、これより森山由孝さんの面接を始めさせていただきます。選考開始(ティップオフ)!!」

2014-03-30 10:30:05
意識の低い就活生だった森山bot @Entry2Heart

先攻はオレ。相田景虎のマークは遠い。前に火神もやってたけど流行ってんのか? 「何でんな遠くにいんのかって顔だな。こんくらい離れてる方がよく視えるし、お前が思ってるほどオレは遠くない」 …? よくわかんねーけど最初から全力! 遠くからのスリー狙い。3Pラインまで一気に切り込む。

2014-03-30 10:35:04