「千の想いを」~第二章・交錯・最終イベント~
- mamiya_AFS
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うぅむ、1日間を空けただけで海を奔るのが久し振りに感じてしまうとは、あたしも艦娘なんだなぁ。 墨を流し込んだように真っ黒な海面に飛沫を上げながら、風を切って走る。 どうせ役に立たない艦載機達は置いてきたので大分身軽だわ。 もうみんな集まってるかしら。
2014-03-15 22:13:49甲標的を扱うのもいつ以来かしら。 今日はあくまでも航行運動と陣形の訓練ではあるけども、できる事なら回避行動の訓練もしてしまいたい。 まぁ、班長の龍田さんの指示次第ではあるけれども。 というか、航空機の無いあたしって存在価値あるのかしら…。
2014-03-15 22:16:39「わひぃ!?」 海面を駆けてるというのにいきなり耳元で声を掛けられ、バランス崩して頭からダイブしそうになる。辛うじて踏み止まってから、声の主を見る。 確認するまでもない、思った通りに龍田さんだ。 水面に浮かびながら、手を口元に当ててくすくすと微笑んでいる。
2014-03-15 22:20:29「お、驚かさないで下さいよ…」 衣装が黒をベースにしているし黒髪だから、というのは関係無く水を蹴る音も気配も何も感じなかった。ほんと底知れない人だわ…。
2014-03-15 22:22:14すいー、とフィギュアスケートのように滑らかに先行していく。どんなバランス感覚してんのかしら。 向こうから見知った姿を3人分見付ける。夜間用の投光機を掲げ、夕張が笑み、常盤に手を持ってもらいながら伊吹が生まれたての小鹿みたいに海面に立っていた。
2014-03-15 22:29:25「通信機もオフってるし…。何考えてんのよあいつは…」 常盤のスカートを掴み、たまに手を離しては倒れそうになってまたスカートを掴む、を繰り返す伊吹を眺める。 こりゃ戦闘は無理かしら…?
2014-03-15 22:35:08もう知らんわ。龍田さんはずっとにこにこしてて、事情を知ってるのか怒ってるのか何もわかんないけど。この人の考えてる事を表情から読み取れた事が無いわ。 「バカは放っておいて訓練しましょ? まともな陣形を組んだ事も無いわけだしうちら」
2014-03-15 22:38:37補助輪無しで自転車の練習をさせるように伊吹の手を引きながら、常盤がほわわんと声を上げる。 「平気でしょ。なんだかんだであいつ、前線経験あるし戦闘に関してだけはそつが無いし」 あたしの言葉に龍田さんの笑顔が深まったように見えた。 「戦闘に関して、だけですからね。認めてるの」
2014-03-15 22:41:58@tiyodadayo …とりあえず、直ぐに動きまわせる体勢にはしておきましょう。 間違っても、脚止めて撃ちあっちゃダメな相手だし。
2014-03-15 22:40:28初めてのスケートリンクよろしく自走ではなく引っ張られて滑っているだけの伊吹を眺めながら、夕張が提案する。 流石は第三の前線経験者よね。 「と言っても各自勝手に動いて、仲間同士でぶつかったら目も当てられないでしょ」 それを無くす為の訓練のはずだ。あれ? これ間に合うのかうちら。
2014-03-15 22:44:40@tiyodadayo 『…天龍さんはこちらでも探しておきます。ひとまず時間もあれですし、演習を始めてください…。』
2014-03-15 22:44:24あちこちに浮かんでいるブイからうちらの様子は見ているのだろう、通信機からの提督の声にとりあえず頷く。 「どうしたらいい? あたしは陣形とか黒板とノートでしか知らないんだけど」 それすらも満点ではなかったくらいだ。えへん。
2014-03-15 22:47:01「いいわよ。千歳お姉が代わりに入るから。練習でいないのが悪い」 そう言えばうちの艦隊って7人か。1人お留守番になるのよね。
2014-03-15 22:49:541人お留守番、か…。 遂にバランスを失って海に頭から突っ込んで、両足に付いている主機をうまく操れずに起き上がれずにいる最年少を見下ろす。 確定的だわねぇ…。
2014-03-15 22:52:13常盤の手を借りてやっと姿勢を戻した伊吹が、自分に集まる視線に気付いてきょろきょろし始める。 「とりあえず航行運動しようよ。前と後ろとの距離が一定になるように船足を合わせて移動してみよう?」 基本中の基本を死闘の3日前にやろうとしているうちらは何なのかしら。
2014-03-15 22:57:10