「千の想いを」～第三章・境界・固定イベント「演習」#9～

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

【演習フィナーレ　千代田vs長門　開始】

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

息を吸い、吐く。 脚がかすかに震えているのは、五十鈴に喰らったダメージのせいだと思い込む。 逃げたい。逃げたいわよ。 どうしてあたしが長門さんを相手にしないといけないのか。 …。 横目で天龍と龍田さんを運んでいったボートを見る。 理由があるからだと強く、思い込む。

長門＠指輪 @BIG7_NAGATO1

@tiyodadayo ふふふ…正直驚いているぞ。 戦艦も雷巡もいない艦隊に私達がこうも追い詰められるとはな。 残るは私とお前だけ…一騎打ちといこうか！！

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

「えー…っと、お互い中破だしさ、痛み分けという事で引き分けとかにしない？」 ダメージの度合いで言ったらあたしの方が軽微だと思う。こっちはほぼ小破な中破。向こうは大破に片足突っ込んだ中破といった感じ？ ハンディキャップには全然足りないわ。

長門＠指輪 @BIG7_NAGATO1

@tiyodadayo ふっ、面白い冗談だな。 私が首を縦に振ると思うか？

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

割と重傷な筈なのに、それを感じさせない笑みで答えられる。 まぁ、そうでしょうね。期待はしていなかったわ。 腕を組んだままの長門さんとの距離を目測する。…ここが限界かしら。 伊吹が気絶した事であたしに支配権が戻った８機の声を聴く。 …報告がすっごい細かい。残弾数０って…何…？

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

いやいやいや待って待って待って。報告まだ続くの？　装備が尽きた事による総重量を運動パフォーマンスの向上率から消費燃料の推移率まで小数点付きで言わなくてもいいから！　何これ、初期設定よりひどい。伊吹の奴、何してくれてんのよ！ 「あー…もう」 これを使うのも久し振りだわね。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

袖の裏側に隠しておいたコントロールを腕を振って両手に握る。パペットやマリオネットを操作する時に持つ木組みの形をした、あたし専用の艦載機操作装置。 五指全部を使って艦載機を操れるんだけれども、あたしにはセンスが無いし、ＡＩに任せた方が楽だからあんまり使っていない。 「全員、黙れ」

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

押し黙ってあたしに全身を任せる８機の子達を初めて可愛いと思った。 「長門さん…。悪いけれど、殴り合いは勘弁してちょうだい」 指先に神経を集中させて、脳内のイメージを航空機達を使って具現化させる。 「第十五支援艦隊、航空母艦千代田、行きます！」

長門＠指輪 @BIG7_NAGATO1

@tiyodadayo どう出てくるか楽しみだな。 がっかりさせんでくれよ

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

……千代田を中心として、８機が鳥の翼のように互いの距離を均等に開けながら横一列で空から迫る。胸を張って彼らを見上げていた長門が、組んでいた腕をそっと下ろす。 千代田を見る。 両ふとももと腰の後ろに見慣れない装備があるが、魚雷管が見当たらない。 長門の心情を、千代田は知らず。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

８機が空から撃ってくるのだろうという予想は外れ、何を思ったか全てが全て突っ込んでくる事に長門は眉をひそめる。至近距離を狙っているのかもしれないが、認識が済んでいる以上、長門に距離はあまり関係無い。徒手空拳が届く間合いか否かだけが問題となる。なのに自ら寄ってくれるとは、度し難い。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

操作の問題だろう。４機ずつの線対象の動きだった。 左右からの２機ずつの旋回の円の中心位置で、長門はしばらく様子を見る事に努める。 魚雷が無い以上、千代田がこの航空機達を無碍に扱う筈が無い。 ならば見せてみろと、その気になれば既に４機は落とせた長門は、動かない。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

待てども、攻撃をしてくる気配が無い。 業を煮やし、長門が手を組み合わせる事なく指の骨を軽く鳴らす。

長門＠指輪 @BIG7_NAGATO1

@tiyodadayo （囮のつもりか…？ どちらにせよ警戒はすべきだな…）

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

ようやく、時間が動き出す。 長門の斜め後ろにいた２機が旋回の軌道を変え、彼女の背を目掛けて突っ込んでくる。 普通なら死角の筈のその角度も、最強には通用しない。迎撃も可能だったものの、長門は敢えて横に移動してかわす。黒い毛髪に掠る事もできずに横切る機体を見送り、意識を研ぎ澄ます。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

やはり砲撃をしてこない。 無謀な突進を危なげなく避け続け、溜め息を吐くのをこらえる。 撃つべきタイミングはあった筈だった。それなのに撃たなかったという事は、答えは１つだけだ。 と、首を曲げて避けた筈の機体の陰にもう１機が隠れている事に気付くのが遅れ、形の良い鼻に傷が走る。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

線対象では、ない。 いつの間にか８機が８機とも、意思があるようにバラバラに動いている。 ほぼ真上からの機体を見上げるのと同時に、背後に聴こえるエンジン音が張り詰めるのを感じる。 加速。 思い当たるのと同時に、全ての機体が滑空の速度を増す。 左腕に痛み。次いで右脚。

長門＠指輪 @BIG7_NAGATO1

@tiyodadayo ふっ、ようやく攻めて来たか。 だが甘いぞ、この程度造作無い

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

千代田の企みは悪くなかった。 線対象の動きも、スピードもフェイク。「そこが限界」だと思わせてからの奇襲。 が、その程度の小細工に踊らされる長門でもない。 腕を、振るう。 千代田には見切る事のできない速さで振られただけで、迫っていた１機が破片になって散っていく。

長門＠指輪 @BIG7_NAGATO1

@tiyodadayo 何時までも待ってやるほど私の気は長くないぞ。 そちらから来ないのならこちらから行かせてもらう！！

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

「今！」 千代田の叫び。指先が蠢き、胸を揺らして腕を大きく振り上げる。 途端、上空にいた３機が、ほとんど直角の軌道を描いて真下の長門に襲いかかる。無茶な方向転換に主翼が弾け折れ、それでも残った機関をフル活動させて自由落下の速度を更に超える。

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

それは予想していなかった。素直に認め、だが驚きも焦りも見せずに前方に跳ぶ事で回避する。背後で起きる大きな着水音と共に、水の粒が次々と傷だらけの背を濡らす。そして僅かに瞠目する。 「そこら辺の水平線に、渋木を散らせなさい！」 残る４機は、既に頭上にいた。

長門＠指輪 @BIG7_NAGATO1

@tiyodadayo ほぅ、やるじゃないか…

ＴＲＰＧ狂いな千代田また多忙 @tiyodadayo

陸奥ならやられていたかもな。 そう胸中で呟き、身体を前に傾けて海上を滑る。玉砕でしかない４つの落雷を、Ｓ字を描いてやり過ごす。 タイミングの外し方も死角の取り方も悪くはなかった。将棋の終盤戦のように、相手を追い詰める流れるような布陣と言える。 相手が長門でなかったのならば。