「千の想いを」~テコ入れイベント・湯煙~
- mamiya_AFS
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「くぁひぃ…ふあぁぁぁぁあぁあぁ」 気持ち良過ぎて変な声が出た。 星空を見上げ、熱目のお湯の中で強張った全身を限界まで伸ばす。 艦娘寮では各部屋に普通に立派な浴室が付いているけど、大浴場もあったりする。天然なんかではなく、完全に人工ではあるが人気は高い。
2014-03-21 22:15:41お湯こそただの熱くした水ではあるものの、大浴場を形成している石や岩のパーツは天然もので、ここを作った人達の並々ならぬ露天風呂への情熱が垣間見える。お湯に漬かったままでは無理だけど、立ち上がれば海も一望できたりする。逆に言えば、海から双眼鏡でも使えば丸見えになるという事だけど。
2014-03-21 22:20:55疲労が溶けて流れていくみたいだ。 もう立ち上がりたくない、出たくない、このまま寝てしまいたい。 いっそ暮らしてしまうのはどうだろう。「温水棲艦」として浴場の主になるのもアリなんじゃないだろうか。 時間も時間だけに思考がいい感じにとろけている。
2014-03-21 22:26:01入り口のすりガラスがからからと開いて、扶桑さんと最上が現れる。 優雅にタオルで身体を隠す扶桑さんはそれだけで絵になるというのに、片方は首からタオルを掛けただけの姿でこっちに小走りで近付いてくる。うーん、まったいら。羨ましいわ。 「入るなら身体洗いなさいよ。あんたは特に」
2014-03-21 22:30:11「えいっ」 両手を組み合わせた水鉄砲で最上の顔にお湯による砲撃を当てる。うしっ、クリティカル。 思えば初めてここに来た時も最上と一緒だった。研修期間が同じだからか、鎮守府内のあちこちの「初めて」にこいつは絡んでくる。艦隊が別になってからもちょくちょく会うのは何故なんだろう。
2014-03-21 22:42:48かぽーん 溜めたお湯を肩から流す扶桑さんの木桶が奏でる音が、澄んだ夜の空に響く。 無駄に広い石造りだというのに、掃除は行き届いている。艦娘同士のお仕置きや罰ゲームで頻繁に「大浴場掃除」が挙げられる点から見ても、ここに住みたいと思っているのはあたしだけじゃない筈。
2014-03-21 22:36:54濡れて肌に艶を浮かべた美女が右足からお湯に入り、波紋を拡げながら歩み寄ってきてあたしの隣で腰を下ろす。 ふぅ、という色っぽい声を聞きながら、並んだあたしと扶桑さんを交互に見比べて「くっ」と呟く最上をぽけー、と見上げる。 意味がわからないわ。
2014-03-21 22:48:51頭に載せた手拭いの位置を直してから、肩まで漬かり直す。 ああ、やばいこれ。 何がやばいってとにかくやばい。気持ちいいとやばいしか言葉が浮かばないくらいやばい。 「ふぃぃ」 上がった後はコーヒー牛乳にしようかフルーツ牛乳にしようかを、真剣に考え始める。
2014-03-21 22:55:44あたしらを視認するや、ロック調な鼻歌と動きがぴたりと止まり、半眼でじとー、と見詰められる。視線と表情は「なんでこんな時間にいるのよあんたら」と無言で語っていた。多分貸し切り状態で寛ぐのが好きなタイプなんだろうな。あたしもそうだからわかるわ。 ところで、えぇと…。
2014-03-21 23:01:26「…あぁ、五十鈴さんか」 特徴であるツインテールは当然解かれていて、青いロングになっていたからすぐにわからなかったのだ。 何かしらの柄がプリントされたタオルの表側を身体に押し付けて、彼女が更に目を細める。 「こんばんわ。久し振りね」 いつ以来だっけな。
2014-03-21 23:06:01@husou_kankore @tiyodadayo ……こんばんは。そういう訳じゃないですけど……いや、まぁ、とりあえず今のは忘れてください。いいね?
2014-03-21 23:06:33効果音が聞こえてきそうなくらい意思が篭もった指差しをされる。 念を押されなくたって言うつもりは無いんだけど、そう言われると意地悪をしたくなるのは普通よね。 座って身体を流し始めた五十鈴さんに、頭を洗っていた最上が目線を向けて今一度「くっ」と呻く。それは何のおまじないなのさ。
2014-03-21 23:11:50「口止め料はマグロ…いや、タマゴね。それからマグロ。シロミ。イk…ひぶっ」 言っている最中に木桶に汲んだお湯をぶっかけられる。 「…えぇぇ」 ぽたぽたと雫を垂らす前髪に覆われた視界の向こうで、五十鈴さんが顔を赤くして睨んでくる。
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