屋代聡氏@yashirosatoruによる”童話とは何か”解説連ツイまとめ
フォロワさんが「阿部謹也、いっぱいヒットするんですが…」と仰っていますが、阿部謹也といえば、『ハーメルンの笛吹き男』でしょう!^^
2014-04-02 03:38:16これは歴史を学ぶ者にとって必読です!僕の愛読書の1つ。以前にも同署の内容を呟きました。QT:@KanabunGilles 中学・高校生向けですが「自分のなかに歴史をよむ」 (ちくま文庫) おすすめしてみたり。@fumichani
2014-04-02 03:40:38童話の意味を本当に読み解きたいと思うなら歴史家の著作を読みましょう。特に西洋ものに興味がある方は阿部謹也の次がお勧め。 『ハーメルンの笛吹き男』『社会史とは何か』『歴史のなかに自分を読む』 また『全集』の1巻は、彼のグリム童話研究が集中的に収められている。 目から鱗、間違いなし。
2014-04-02 03:55:53阿部謹也『自分のなかに歴史をよむ』ちくま文庫。 ごぞんじ阿部謹也による歴史学へのいざない。前半の学問的来歴は一級の小説を読むようで、また学問を修める上での鋭い一言が各所に現れる。後半は中世ヨーロッパのイメージを一変させる珠玉のエッセイ集。童話に関する指摘は当然ながら流石。
2014-04-02 04:05:14この中で、若き日の阿部謹也が卒論のテーマ選びに苦慮して、指導教官上原専祿に相談するシーンが出てきます。この時の上原のこたえが実にいいのです。
2014-04-02 04:07:23宗教騎士団か、十字軍か、はたまた別のテーマか…阿部は思い悩むのですが、相談された上原のこたえは「何でも構いません」。ただ、一言、こう付け加えたのです。 「どんなテーマを選んでも良いが、それをやらなければ生きてゆけないと思われるようなテーマを選ぶべきでしょうね」。
2014-04-02 04:11:52僕はこの一言にやられました。 請け売りで同じことを学生諸君に言っています。大学で学ぶことはそれくらいの価値あるものなのです。
2014-04-02 04:15:284月3日
童話の政治性については昨夜つらつら書いたし、その差別性を巡る議論は絶えないけれど、童話を現代の目線で読み解く時には注意が必要である。
2014-04-03 01:09:06これが現代の目から見て「差別的だ」という気持ちは当然わかるし、それによって傷つく人が出るのも理解できるが、だからと言って、その作品自体が全否定されるのも違和感を覚える。 多くの場合、その物語が生まれた時、それを差別と考える言語も意識もなかったのだ。それは罪だろうか。
2014-04-03 01:14:54確かに現代において、過去に紡がれたテクストのメッセージが差別になる場合はある。しかしそれを現代の観点から「こんなのは駄目だ」「遅れている」「意識が甘い」というのは、アナクロニズムの陥穽に陥っていないだろうか。
2014-04-03 01:17:21これは前世紀の思い出話だが、ある有名な先生が「近代の革命は女性の権利を解放しなかった。男性中心の革命であって女性差別は残った。自由・平等をかかげたフランス革命だってそう。人権宣言も男性市民のもの。あれは不十分な革命。」と仰っていたけど、反骨心あふれる僕らはすぐ疑問をぶつけた。
2014-04-03 01:22:17「フランス革命も明治大正のデモクラシーも、あの時点では、男性「さえ」選挙権がないということが第一に問題視されていたのであって、そこから改革がスタートしたということでしょう?女権が解放されなかったから不十分、ではなくて、ようやく女性の問題が可視化されたとみるべきではないですか?」
2014-04-03 01:27:00その先生はかなり怒っていらっしゃったが、しかし彼女は現代の価値観で過去を判断してしまったのだと思う。現代のように政治的権利において平等が一応達成されている社会を、無条件に「進歩」しているものと考えてしまったのかもしれない。
2014-04-03 01:31:36しかし言うまでもなく18,19世紀に、その感性・心性は主流でなかったのだから、現代の目でもって「過去」を断罪するだけでは、あまり意味がないのである(アナクロニズム)。より問題なのは、過去においてなぜその感性・心性がマイナーであったかを問うことである。
2014-04-03 01:34:01だから過去、特に近世に描かれた童話を学問的に捉えるときには、その内容が”同時代人にどう読まれたのか”を考えないと、全く意味を見失う。 しばしば童話のなかの暴力的描写や汚物にまみれた描写を、あぁ残酷!何て汚い!と考えると思いますが、それ自体が、アナクロニズムなのである。
2014-04-03 01:37:26例えば童話には、腕を切るとか、首を切断するとか、そんな描写が普通に出てきますが、近世ヨーロッパでは火刑、18世紀ヨーロッパでも絞首刑や四つ裂き刑、車責め刑、ギロチンなどは当然あり、これらは何千人という市民がお祭りとして繰り出す「祝祭」であったわけです。
2014-04-03 01:41:51童話の残酷さなんて多寡が知れているのです。また私たちは強迫観念のように清潔でいることを自己にも他者に求めているわけですが、19世紀まで上下水道は完備されていませんから、町は人間と家畜の糞尿だらけです。 えー汚いなんて言ってられません。都市では家庭ごとにトイレがないのが普通です
2014-04-03 01:44:57多くの童話の原型が創られた近世においては、糞尿は、命の源とさえされていました。だってそうでしょう?糞尿を畑にまいたら、作物がより実ることは経験的にわかっていました。腐敗とはまさしく物の変化であり、何かに命を宿らせる神秘的な力があると考えられていたのです。
2014-04-03 01:52:20よく知られているように日本の神話のイザナミは嘔吐し、糞尿をするのですが、その嘔吐物と糞尿から、神が生まれます。また阿部謹也によれば、ギリシャの女性は月の無い夜に十字路に汚物を持ってきて、夜の女神ヘカテの食事として捧げ たといいます。
2014-04-03 01:59:03