屋代聡氏@yashirosatoruによる”童話とは何か”解説連ツイまとめ
かように近世期の人びとは、私たちとは全く違う目で暴力や汚物を見ていたのです。童話を読み解くなら、そうした観点が必要になります。
2014-04-03 02:01:04池に落とした金のまりを蛙に拾ってもらうお礼に、王女はこの蛙と一緒に食事をして一緒に寝ると約束するのですが、いざまりが手に入ると、約束を反故にします。食卓にあがった蛙を嫌がり、外へ出そうとしますが、国王は言うのです。「お前はその蛙に助けてもらったのだ。約束を果たせ」と。
2014-04-03 02:09:56中近世ヨーロッパにおいては、人間が「自然」を支配したがゆえに、その法やキリスト教秩序のもとに人間も動植物も服さねばならないという考えがあり、その意味で、人間も動物も「対等」であったのです。おとぎ話ではなく、人間と蛙が約束をしたのなら、それは守るのが当然だったのです。
2014-04-03 02:16:08こんな話もあります。国王がある男に、陽が昇ってから沈むまでの間に歩いてまわれるだけの土地を与えると約束します。しかし男は欲張ったために日没までに出発点に戻れず、直前で疲労で死んでしまいます。 ファンタジーのようです。しかし…
2014-04-03 02:20:09実は、中世の測量はこのように徒歩によってなされていたのです。 だから距離の単位がフット(足)なのでしょう。ちなみに手を開き、親指~小指の長さをスパンと言いました。こんな風に人体の部分は長さの単位となって私たちにも伝わっています。
2014-04-03 02:22:41みなさん、「眠れる森の美女」ってご存知でしょう。 あれって不思議な話でしょう? 100年の眠りについた後、王女と王子は結ばれて終わるのですが、何で王女は100年飲まず食わずで死なないのでしょうか(笑)。 ファンタジーだから?違います。実は…
2014-04-03 02:35:06私たちの常識では、「時間」はどこにいても同じように経過するものですが、それをどのようにして確認できるでしょう? そうです。時計です。 しかし19世紀に至るまで一般家庭に時計は普及しませんし、近世ならば尚更です。
2014-04-03 02:38:04さらに私たちにとっての「実感」としては、楽しい時間は早く過ぎ、苦しい時間は遅く過ぎるものでしょう? また国内で統一された時間=ナショナルタイムもありませんから、時刻は都市ごとにまちまちです。時間はバラバラに過ぎるものだったのです。
2014-04-03 02:40:46この童話の原型はかなり古いと思われます。というのも近世の魔女と違って、善良な魔女が登場するからです。ヨーロッパが自然を完全に征服できておらず、森などの異界を人びとがまだ恐れていたころの心性が流れこんでいます。
2014-04-03 02:44:01こうした森は「大宇宙」の1つであり、「小宇宙」たる人間界や人間そのものとは時間のすぎるスピートが違うのが当然なのです(当時のひとにとって)。 もうお分かりですね。 人間界(小宇宙)で100年経っていても、森のなか(大宇宙)にいた人びとにとっては一瞬ということがありえたのです。
2014-04-03 02:46:41かように童話を読み解く際には、その童話が描かれた時期の歴史を抑えることが絶対に必要なのです。「本当は残酷な~」的では論外ですし、また心理学者や人類学者の理論をそのままあてはめても、アナクロニズムに終わってしまいがちなのです。
2014-04-03 02:49:32今、童話を例に述べましたが、かような姿勢は歴史学研究、特に心性を扱うさいに欠かせません。 歴史家は史料をただ読むのではありません。史料上の言葉1つ1つが本当は何が言いたいのか、何を意味しているのか、時代のコンテクストから総合的に考えて、「解釈」しているのです。
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