人々が想像する『昔』のイメージの固着

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伊藤 剛 @GoITO

しかし当時の少年マンガ雑誌を見ていくと、日本はまだ高度経済成長時代でイケイケだったはずなのが、マンガ誌の誌面をみるかぎりではちっともイケイケな感じがしない。むしろ、暗く、重く、沈滞した時代に思える。いまの誌面のほうが華やかで、明るく、楽しげに見える。これはちょっと興味深いよね。

2014-04-05 21:26:09
伊藤 剛 @GoITO

自分がハタチだった27年前(1987年)、40年前から続いているサブカルチャー的なものがあったかといえば、ちょっと考えつかないわけで。ここが「 いまの若いひと」との決定的な差異という気がします。

2014-04-05 21:56:17
伊藤 剛 @GoITO

1987年にあっては、「手塚治虫」がほぼ唯一、40年前からの「連続性」を感じさせるものだったかもしれない。かつてはそのような位置に「手塚」があった。

2014-04-05 21:57:29
伊藤 剛 @GoITO

ファーストガンダムからすでに35年ですよアナタ!

2014-04-05 21:58:23
伊藤 剛 @GoITO

カリオストロの城からでも35年。

2014-04-05 21:58:55
伊藤 剛 @GoITO

子供のころの記憶をまさぐっていくと、自分が身近に接している「文化」と数十年以上前のそれとの「連続性」が感じられるものといえば「怪獣」という枠でぎりぎり「ゴジラ」があった。新美南吉や坪田譲治は読んでいたが、それは「昔のもの」という感覚で、当時の「いま」とはつながっていなかった。

2014-04-05 22:02:00
伊藤 剛 @GoITO

同じ児童文学というくくりで考えても、松谷みよ子のモモちゃんシリーズは「いまのもの」で、中川李枝子『いやいやえん』は「ちょっと前のもの」だけど、坪田譲治や新美南吉は「むかしのもの」だと感じていた。小学3~4年生だから1970年代後半の感覚。

2014-04-05 22:04:26
伊藤 剛 @GoITO

子供のころ、家族で回転する丸いテーブルのある中華料理屋さんで食事をすることが年二回くらいあったけど、あの回転テーブルで中華ってのが「家族のちょっとしたぜいたく」だったのも「昭和の風俗」だよね。いまでもあるとは思いますが。

2014-04-05 22:06:08
伊藤 剛 @GoITO

おそらくだけど、人々が想像する「昔」のイメージが固着してしまっていて、昭和40年代より以前が「昔」のまま更新されていない感が強いのです。裏を返せば「いま」が後ろにどんどん倒されていって、ここ40年くらいは全部「いま」になってしまっているような錯誤が起きているのではないか。

2014-04-05 22:11:16
伊藤 剛 @GoITO

とはいえ、これまたおそらく、だけど1970年代くらいに枠組みが出来たもの―それこそ反原発=反権力=正義、みたいな政治的なものから、戦隊モノみたいなサブカルチャーの様式から、町の個人経営の喫茶店のような風景まで―が、一気になくなっていくのがこれから十年かもと思わないでもない。

2014-04-05 22:13:44
伊藤 剛 @GoITO

これは単に1970年代に三十代だったひとがそろそろ七十代、八十代を迎え、社会のプレイヤーではなくなってくるからという理由による。 で、「マンガ=物語マンガ」といういまの枠組みもまた、同様に70年代くらいに固まったものであることがたいへん気になっている。

2014-04-05 22:15:14
伊藤 剛 @GoITO

たとえば「子供のころ読んだ」というノスタルジックな視線の持ち主が社会のプレイヤーから退場し、さらには亡くなってしまったあと、はたして「マンガ史」はどのように書かれうるだろうかと考えてみると、どうなのか。

2014-04-05 22:16:30
伊藤 剛 @GoITO

何が古典として残り、何が残らないかという話もあるが、いま私たちの多くが、戦前のマンガについてどうとらえているかを考えてみれば分かりやすい。戦前、昭和一桁年代に「マンガブーム」があったということも忘却の彼方だし、新聞マンガ等のカートゥーンの大家の記念館を訪れるひとも少ないだろう。

2014-04-05 22:18:18
克森淳(a.k.a.新豊玉三郎) @a_katu

@GoITO アニメでは70代の高畑・富野が、新作作ったりしてますがね。タイムスパンとしては、80年代が「昔」になっておかしくない位時間が経ってますが。

2014-04-05 22:19:17
伊藤 剛 @GoITO

「そんなの昔のマンガなんだから当然でしょ?」というひともいると思う。しかしですよ。授業で、1950年代はおろか70年代の劇画を紹介しても「そんなに昔からマンガがあったなんて驚きでした」という感想が返ってくる時代に、我々はすでに生きているということは言っておかないといけない。

2014-04-05 22:19:49
伊藤 剛 @GoITO

@a_katu そりゃもちろんA先生も八十代だけど現役だし、水木先生も九十代だけど現役です。しかし、先生方も十年先も同じペースで仕事をしているとは思い難いですよね。また社会の多くのひとは七十代後半から以降は人々はどんどん退場していくでしょう。編集者であれば、六十歳で定年ですし。

2014-04-05 22:22:20
伊藤 剛 @GoITO

「EX大衆」のマンガ記事で以前コメントしたことなんだけど、「昔のイメージ」の固着は、たとえば『美味しんぼ』で山岡が自分の子供もころのコレクションとしてブリキのおもちゃを持ち出すエピソードに表れている。掲載は95巻、2006年。山岡、歳はいくつだ? と思うが(続く)

2014-04-05 22:25:04
伊藤 剛 @GoITO

(続き)ここで山岡(推定30代前半)が「自分の子供のころのコレクション」として「筋消し」か何かを持ち出してきたら、イヤでしょうw そんな山岡、山岡じゃないよね。でも2006年当時に30代前半なら、筋消しやビックリマンシールという計算になる。しかし私たちはそれを承服しないだろう。

2014-04-05 22:27:30
伊藤 剛 @GoITO

つまりこれは「雁屋哲が年寄りなのでいまの世相を反映した物語を書けなくなっている」というだけの話ではなく、もうちょっと大きな話ということになる。

2014-04-05 22:28:45
ななっし @nanananasshi

@GoITO リツイートにて少年マンガの今昔のツイートを拝見しました。漫画が世相の鏡になっているのであれば、購買層にとっての現代は、暗く、重く、沈滞していると思われているのかもしれないですね。

2014-04-05 22:39:17
みつあみ(裏メリヤス編) @jojoba5906

@GoITO 違う話になってしまったら申し訳ありません。漫画やイラスト(振り込め詐欺のポスター等)に登場するおばあちゃんが「着物を着て髷を結っている」のも「昔」のイメージの呪縛でしょうか。昭和40年代ですらリアルでは見た覚えがないのですが、のび太のおばあちゃんは今もそういう姿です

2014-04-05 22:40:26
伊藤 剛 @GoITO

「着物を着て髷を結っているおばあさん」は、私が個人的に見た限りでは2006年に盛岡市郊外で目撃したのが最後です。老人のほかにも「半ズボンで野球帽の少年」等、一度固定した記号的表現がなかなか更新されない例は多いと思います。

2014-04-05 22:43:00
伊藤 剛 @GoITO

@nanananasshi 単に誌面と世相が逆相関しているというだけでもおそらくなくて、1970年ごろのマガジン読者(ほとんどが大学生までの年齢)にとっての「世相」がどう映っていたのかという話がもうひとつあるように思います。当時の若者は暗かったのかもしれないということですね。

2014-04-05 22:45:29