#変態不知火さん 陸奥の呪い編 『Breakdown to recollection』

高峯みやび @sukamelancholy

動揺したのか、俺の首を絞める力が緩みだす。俺は必死になって息を吸う。一度だって、陸奥として生まれた事を後悔した所なんて見てない。海を、戦いを恐れてなんかない。それを嘘と言い切る資格なんて……お前にはない。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

「……」〝本物〟のお前が、その誇りを否定して、どうするんだ。ちゃんと残ってるんだよ。受け継いでいるんだよ。だから、自分を呪いなんて、言わないでくれ。栄光あるビッグセブンの一人なんだろう。「でも、でも。私の呪いが、あなたを、殺そうとしているのに……」 #変態不知火さん

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それは、陸奥が俺を反発しているからだろ。俺も、陸奥も突っぱねて、こんな誰もいない場所に一人で居る。何もかもから逃げて、一人で。俺がここに居るのはな……。死ぬためじゃない。陸奥を、一人ぼっちにしないために、俺が来たんだよ。 #変態不知火さん

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「……でも、私なんて。私なんて居なくたって」必要だ。「悲運だし、不幸だし、縁起が悪いって」俺が言うとでも思っているのか。一度だって思うもんか。「でも、でも」くどい、ぞ。あぁくそ。もうこの熱も限界だ。陸奥と長門に約束したんだよ。戻ってくるって。それを破らせる気か。 #変態不知火さん

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「でも、でも、どうしたらいいのか、わからないのよっ！」全てを諦めていたような口調が変わり、感情曝け出す様になった。こうして見ると、やはり陸奥は彼女に似ているな。……いや、逆か。「どうすれば、いいの。どうすればあなたを救えるの」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

……簡単な話だ。俺が陸奥を受け入れる。陸奥が俺を受け入れる。それだけの話だろう。「でも、そんな事をしたら」俺は平気だ。無駄に丈夫なんだよ。それに、このまま死んじまったら、地獄まで長門が追いかけてきて殴ってくるんだよ。 #変態不知火さん

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「長門が……？ ――ふ、ふふ。あはははっ！」突然、陸奥が笑い出した。笑い事ではない。あの長門に何度も殴られたから言えるが長門の殴りはマジで痛いからな。身体がバラバラになっちまうのかと思うくらい。「あははっ、そう。それはおっかないわね？」 #変態不知火さん

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ああ、おっかねえ。それにな、長門だけじゃねえ。不知火も、同じようにやってくる。地獄をぶっ壊してまで俺を引きずり戻す為に来るだろうよ。「あら。陸奥だけじゃなくて不知火も？ モテてるのね」だろ。「もう、調子いいんだから」男冥利に尽きるだろ。 #変態不知火さん

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そうやって二人で笑っていたら。いつの間にか胸の中の熱は収まっていた。あの苦しみが嘘のように雲散している。「あなた、面白い人ね。陸奥が惚れ込むのもわかっちゃうかも」……惚れた？「もう、調子に乗らないの。いいわ、生きてあげる」……ありがとう。 #変態不知火さん

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「それにしても、あなた、只者じゃないわね。この陸奥の魂まで受け入れてみせるなんて」……いや、別に。俺は普通の人間だけど。「そう？ まぁいいわ。……ありがとう。私を受け入れてくれて。救われた気がする」あぁ。 #変態不知火さん

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そして陸奥が俺の身体に重なるようにして、その身体が煌めく粒子になったかと思うと、俺の体内へと入っていき――。 ――目覚めれば、俺の知っている陸奥がそこに居た。 「おかえりなさい、提督」 あれからどれだけ経ったのか、その胸元にはかすかに傷跡が見えた。 #変態不知火さん

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「……あぁ。ただいま」 #変態不知火さん

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後日談 珊瑚諸島ニテ再度特殊型深海棲艦ノ脅威ヲ認メタ。迅速ニ迎撃シ装甲空母鬼ヲ排除セヨ。 司令部からの電文に提督は主力の艦娘を執務室に呼び出した。集まったのは加賀、ビスマルク、阿賀野、熊野、そして長門と陸奥。 #変態不知火さん

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集まった第一艦隊に、提督は先日出撃した海域に新たな特殊型深海棲艦の存在、そして撃滅する任務を言い渡す。「羅針盤が狂うかもしれんが、その時はまた休息し出撃する。旗艦は、長門に任命する」「任せておけ」力強く拳を握り、頷く長門は頼もしい。 #変態不知火さん

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艤装を装備し、出撃する前に、長門は陸奥に声をかける。「こうしてまた一緒に出撃出来て嬉しいよ」すると陸奥はくす、と笑う。「私も、長門姉とまた海に出られるなんて嬉しいわ。心配かけてごめんね」長門は首を振り、そっと陸奥の頭を撫でる。「姉として当然だ」 #変態不知火さん

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長門を旗艦とした第一艦隊は珊瑚諸島海域へと出撃していく。それを執務室から見送る提督。「……また陸奥がこうして出撃出来るようになってよかった」「そうですね」返答するのは秘書艦の一人、不知火。「ほぼ今まで通りに戻ったのは、奇跡的でした」「……そうだな」 #変態不知火さん

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提督と陸奥の心臓を交換する事で、確かに陸奥の艤装に対する適応度は減少した。しかしそれは微々たるものであり、妖精が言うには「慣れれば元通り」との事。陸奥本人も違和感はないと証言していたし、陸奥の問題は解決されただろう。 #変態不知火さん

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しかし、提督への影響は多少どころではなかった。まず初めに体質が変化した。通常の人間よりも治癒が早くなり、切り傷程度ならばすぐに傷口が塞がる。また、肉体も頑丈なものとなった。試しにコンクリート壁を全力で殴るとヒビが入り、提督の拳は折れず、痛みすらも感じなかった。 #変態不知火さん

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「俺がちょっと人間よりも頑丈になった位かな、変わったとしたら」笑いながら言うと、不知火は提督の言葉を訂正するように言った。「艦娘に多少近くなった、が正しいです。司令」「別にそこまでじゃないだろ、大げさな」「まぁ、不知火にとっても利点が増えて喜ばしい事です」 #変態不知火さん

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不知火にとっての利点とは、性関係の事を指す。詳しい事は割愛するが、不知火曰く「量と回数が増えました」との事。疲労もするが、そこは艦娘に近くなった影響か、時間を空ければ元に戻ってしまう。提督は高速修復剤を自身に使用すればどうなるか想像したが、怖くなり止めた。 #変態不知火さん

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出撃している第一艦隊からの通信が入る。提督はすぐにモニターの前に座り、応答。「何だ」出撃してすぐに通信が入るなど、途中で脅威度の高い深海棲艦と遭遇したか。それとも羅針盤の狂いか。しかし提督の心配をよそに「お姉さんが居ない間、不知火ちゃんといちゃいちゃはだめよ？」 #変態不知火さん

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陸奥の声に、肩に入った力が抜ける。「……わかったわかった」しかし陸奥は不満そうである。「本当よね？ ダメよ？ お姉さんが戻ってくるまで出しちゃ駄目なんだから」「わかったから集中してくれよ……」微かに頭痛がしてきた提督は頭を押さえる。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

そこに割って入るのは不知火。「成程。つまりは振りですね。わかりました」「え、ちょっ、待って――」第一艦隊と並行して進んでいる無人機からの提督の声に、陸奥は無人機を掴む。「あぁぁっ！ 本当にしちゃうなんて駄目よ、駄目なんだから！ お姉さんにもしてよー！」 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

その様子を呆れながらも見ている長門は、あえて指摘せずに先行する。軍事行動中なのだから緊張感があるべきだとは思うが、これもまたこの鎮守府の艦娘と提督の日常。戦闘海域が近づけば、そちらに集中するので、とやかく言う事もないだろう。 #変態不知火さん

高峯みやび @sukamelancholy

何にせよ、日常は戻ってきた。後は任務を全うするだけだ。艦娘としての使命を果たし、無事に全員帰還し、美味い飯を食う。そうしてまた絆を深めていく。長門には、それがとても尊いものと感じている。勿論そこには妹の陸奥も居る。 #変態不知火さん