大阪大学助教授赤尾光春氏インタビュー第１部

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26.赤尾「ポーランド人は所有する私有地を生かしたいと考える。しかし、そのための人材がいない。そこで目をつけたのがユダヤ人。私有地から利益を上げるエージェントとして、ユダヤ人が歓迎される」@iwakamiyasumi

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27.赤尾「ビジネスマンのユダヤ人を王様が特別に庇護して、経済活動の自由と宗教的実を与える。それで国の経済力をアップさせる。あるいは文化力も。今のインド人のITビジネスマンに似ていますね。日本政府もそういうのが好きなようですが」@iwakamiyasumi

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28.赤尾「元々は非常に優遇し、国が必要としてユダヤ人を招いた。それがだんだんキリスト教徒の町人や、対抗できるような小ブルジョワなどが現れ、商売敵のユダヤ人に対して反感を持つ。それが宗教的な偏見と合わさって極端な話になっていく」@iwakamiyasumi

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29.「5世紀のキリスト教神学者アウグスティヌスは、異教徒のユダヤ教徒がキリスト教徒のもとで暮らしていることはキリスト教の栄光を高めると主張。つまり、キリスト教国家で従属下にあるユダヤ教徒を見て、キリスト教徒が『我々は正しい』という優越感を得る」@iwakamiyasumi

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30.岩上「何か非常に屈折した感情がそこにありますね」。赤尾「最近の日本のナショナリズムも嫌韓とか、在日朝鮮人に対する差別とセットになっています。他者で身近に暮らしている人たちを蔑んで、非常にそれをネガティブに扱うことで、自分の優越感を感じるという」@iwakamiyasumi

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31.赤尾「1648年というのはユダヤ人の記憶に刻まれています。この年はユダヤ暦では5千何年かですけども。17世紀に入るとコサックと農民は賦役労働させられる。非正規ないし正規のコサックもポーランド支配に対し反発し度々反乱暴動が起きます」@iwakamiyasumi

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32.赤尾「その反乱のピークが1648年フメリニツキーの乱。反乱ですね。そのフメリニツキーの反乱で、ポーランド全域でユダヤ人に対する暴力行為があった」@iwakamiyasumi

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33.赤尾「フメリニツキーは最初のウクライナの国家形成の大きな英雄。ただ、その数年後1654年にロシアと協定を結んだペネアスフラフ協定の時に、ある種の属国と宗主国の関係が作られた。だから極右とかナショナリストにとっては……（続く）@iwakamiyasumi

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34.（続き）やっぱり裏切りものだ、ロシアに通じるスパイだ、となる」。岩上「フメリニツキーというのはウクライナ民族主義の足がかり。残念なことに、ユダヤ人を殺したことがセットで肯定されてしまう嫌いがある」。赤尾「集合的記憶といいますか」@iwakamiyasumi

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35.赤尾「記憶の継承という点で、ユダヤ人側でもヘブライ語の年代記に書かれた、非常に残虐非道な行為に関する記述が後々まで遺される。ただ、ヘブライ語の年代記に書かれていることは、誇張されて伝わることが多い」@iwakamiyasumi

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36.赤尾「引用すると『……ユダヤ人の一部は皮を剥がれて、肉体は犬のところに放り投げられた……手足を切断され路上に放り投げられた上、荷車に引かれ、馬の足で踏み潰された……多くのものが生き埋めにされ、子どもたちは母親の胸の中で惨殺され……』といった具合」@iwakamiyasumi

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37.赤尾「犠牲者の数についてユダヤ人の歴史記述を鵜呑みにしていましたが、きちんとした典拠に当たると一番低く見積もっても1万4千人」。岩上「人口の母数が今とは違いますね」。赤尾「ですから当時のユダヤ人にとっては民族滅亡の危機として記憶されている」@iwakamiyasumi

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38.赤尾「アンスキーという柳田国男に似た作家・民俗学者がフメリニツキーの乱について書いています。『人生の喜びの絶頂期にありながら開花できずに切り倒され、根こぎにされた民俗の危機。その危機が集合的記憶として形象化された』と。そういうイメージです」@iwakamiyasumi

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39.赤尾「1768年、ウクライナのウマニという場所で2千人が虐殺されます。私の博士論文は、このウマニの話。ユダヤ人のあいだでウマンと呼ばれる場所は聖地のこと。ハシディズムという」。岩上「ハシディズムの説明をお願いします」@iwakamiyasumi

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40.赤尾「ハシディズムは18世紀前半に鬱蒼と森の繁るウクライナ中部地方で生まれたユダヤ教分派運動または改革運動の一つです。当時西ヨーロッパではスピノザに代表されるユダヤ教改革の動きがありましたが、東側では鬱蒼とした神話的な世界でユダヤ教が生まれた」@iwakamiyasumi

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41.赤尾「16世紀から18世紀ぐらいまで、ユダヤ教の中心地は圧倒的にビリニュス。当時はビルナと呼ばれたリトアニアの首都で、ラビ・ユダヤ教というタルムードをひたすら勉強する知性偏重型のユダヤ教。みんなビルナに留学して学んだ」@iwakamiyasumi

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42.赤尾「ウマニも学問の中心地ですが、ウクライナに暮らしていたユダヤ人というのは非常に貧しく没落して貧しくなって無学のユダヤ人も多くいた。そこに彗星のごとく現れたのが、イスラエルバール・シェムトールという、遍歴の札折」@iwakamiyasumi

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43.赤尾「リトアニアのエリートのように学問ができても神に近づくとは限らない、もっと誠心誠意神に接すればいい、とイスラエルバール・シェムトールは説いた。歌、踊り、衣食住、それに我々からすると娯楽的なものを含め、全てが神に通じる道であるとした」@iwakamiyasumi

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44.赤尾「だからイスラムで言うとスーフィズム的で、日本で言うと……」。岩上「念仏踊りのような」。赤尾「念仏一平少年みたいな感じでしょうね。場合によってはイディッシュ語でもいいと。学問のための言語であるヘブライ語じゃなくてもいいんだと」@iwakamiyasumi

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45.赤尾「ハシディズムは大衆運動として物凄くポピュラーになっていく。20世紀初頭には東欧全域のユダヤ世界を席巻するがごとき勢いとなる新興宗教ですけれども」。岩上「法然や親鸞が出た鎌倉仏教に似ていますね」@iwakamiyasumi

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46.赤尾「ウマニはイスラエル国外で最大の聖地で、そこへの巡礼は200年続いている。まさにユダヤ教のディアスポラ最大の聖地であるこの場所が、同時に、ウクライナの歴史では、反ポーランド蜂起をした民族のプライドのシンボル。そして極右の聖地です」@iwakamiyasumi

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47.赤尾「キエフに1年ぐらい住み、ウマンをフィールドワークしました。2000年代前半ぐらいに聞いた話では、今のウクライナ革命の武闘派の極右の連中がこのウマンに2、3万人が集まって、街中が真っ黒けになるんです」。岩上「真っ黒けっていうのは？」@iwakamiyasumi

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48.赤尾「黒無垢の服装ですね。反ユダヤデモじゃないですが、コリフシーナ何百年記念みたいなものをデモンストレーション。さすがにウマニ当局は問題視し、ユダヤ人が巡礼に訪れる時期では公共秩序の問題になるから、許可しませんでした」@iwakamiyasumi

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49.赤尾「だけど一部の極右は乗り込んできた。結局、当局は一月後ぐらいに許可し、ユダヤ人がいないときにやった。黒と赤のネオナチみたいな旗を持って無言で行列する。今もどこかの国の新大久保で出てくる」。岩上「在特会ですね」@iwakamiyasumi

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50.赤尾「現代のウクライナ人とユダヤ人の関係性を見ると、西側に住む政治的なパイプを持っていたり、議員であったりするユダヤ系の人たちがウクライナ極右の露出を嫌うわけですよね。したがってユダヤ教の聖地ウマンのことは厳重に監視してきた」@iwakamiyasumi