#トラ泊神戸支部~晴天のサブ島沖編

トラック泊地サーバー所属で神戸に支部を構える提督と、そこに所属する艦娘たちを描いたお話。 三番目のトラ泊神戸支部の第六戦隊話となります。 今回は青葉メインです。この回の前話にあたる『加古の過去語り編』『古衣は入れ替え時編』もあわせてお読み頂けたらと思います。
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ですか @desuka_desuyo

「謝らなくてもいいよ。それより大丈夫か? 戦闘始まったあたりから具合悪そうだったけど」 「大丈夫だよ」 そう返事したものの、先ほどのことが頭にこびりつき、なかなか落ち着けずにいた。 「帰港しよう」 ヴェールヌイの提案に全員が頷き、私たちは泊地へと戻ってきた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 03:13:26
ですか @desuka_desuyo

泊地に戻り、執務室で結果を報告する。私だけ個別に話があるということで、執務室に残ることとなった。 「話は聞いたぞ、青葉」 個別の話ということで察しはついていたが、やはり出撃中のあの出来事が関係するのであろう。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 03:21:25
ですか @desuka_desuyo

「詳しくは聞かないが、あの戦いでなんかしら思うことがあるのだろう。それが戦闘に大きな影響を及ぼしているようだから、今後の出撃は別の艦娘に頼むことにした。いいね?」 私は黙って頷くしかなかった。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 03:27:07
ですか @desuka_desuyo

執務室を後にした私はまっすぐ自室へと戻った。 「おかえり~って、どうしたの青葉!」 出迎えた古鷹が悲鳴のような声を出す。彼女は駆け寄ってくると心配そうに私の顔を覗き込んだ。その瞳に僅かな光を感じて、私はさっと目を逸らす。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 14:16:31
ですか @desuka_desuyo

「大丈夫だから、ちょっと休ませて」 そう言って古鷹の脇を抜けてベッドに倒れこむ。彼女の優しさを撥ねつけるようで、それはそれで心苦しく思ったが、それ以上に彼女に、彼女の瞳に、私は向き合うことが出来なかった。 目を瞑り、枕に顔をうずめる。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 14:21:11
ですか @desuka_desuyo

ギシッとベッドが音をたてる。古鷹がベッドの端に腰かけたようだった。そっと私の頭に彼女の手が触れた。そのまま寝付く子供をあやすように、優しく私の頭を撫でる。 「お疲れ様、青葉」 私に向けられた優しい言葉が胸を締め付ける。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 14:29:03
ですか @desuka_desuyo

あの時の自分と何一つ変わってないではないか。今の現状を思い返し、自分自身にそう言い放つ。所詮私は弱いままで、また彼女に助けられてしまうのだ。異様な様子の私を何も言わず受け入れてくれた彼女の優しさが、逆に私の心を痛めつける。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 14:42:05
ですか @desuka_desuyo

私は強い自分に変わりたかったのだ。もう彼女に助けられなくてもいいように。今度は彼女を守れるように。彼女と向き合うことを決めた時、そう決心したはずだったのに。 いつのまにか古鷹は、私の頭を撫でるのをやめ、背中をポンポンとさすっていた。身体に心地よい振動が伝わる。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 14:47:56
ですか @desuka_desuyo

服越しに伝わる彼女の温もりを感じながら、いつしか私は眠りについていた。 「おやすみなさい、青葉。いい夢を見てね」 そんな古鷹の声が聞こえたような気がした。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 14:55:09
ですか @desuka_desuyo

ふと目を覚ますと窓の外は夕焼けの赤色に染まっていた。夜明け頃に泊地に戻ってきたはずなので、どうやらほぼ半日寝ていたようだった。伸びをしようとしたところで、隣に古鷹が寝ていることに気付く。私に寄り添ったまま寝てしまったのだろう。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:00:07
ですか @desuka_desuyo

穏やかな寝顔は年齢以上に幼さを感じた。そんな彼女に助けられている自分が情けなく思う。私はそっと彼女に布団をかけ、ベッドから抜け出した。 「心配かけてごめんなさい。それと、ありがとう」 そう言ってそっと彼女の頬を撫でてから私は部屋を去った。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:04:51
ですか @desuka_desuyo

執務室を訪ねると、次の出撃の準備をしているようだった。 「手伝いますよ」 「悪い、助かる」 私の問いにそう返事が返ってきたので、私は 司令官と共に多くの資料を整理する作業に取り掛かった。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:14:56
ですか @desuka_desuyo

作業の間、出来るだけ平静を保っているつもりだったが、サボ島の文字を見るとやはり普段と反応が違うらしい。 「まだあの時のことが気にかかるか」 司令官の問いかけに頷きだけで答える。 「ちょっと話をしようか」 司令官はそう言うと資料を置いて椅子に腰を掛けた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:21:05
ですか @desuka_desuyo

「話、ですか?」 私がそう聞くと、提督はあぁとだけ答えて向かい合う椅子を手で示した。そこに座れということなのだろう。手元の資料を机に置くと、私は示された椅子に座って司令官の方を向いた。 「単刀直入に聞こう。今回の出撃でどんなことを思った」 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:26:45
ですか @desuka_desuyo

「あの時のことを思い返していました」 返答に少し困りつつ、感じたことを素直に答えた。 「それはつまり、まだあの時のことについて自分の中で決着が付いていない、ということで良いのかな?」 いきなりの言葉に返答が詰まる。司令官は私の答えを待たずに続きを話し始めた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:31:19
ですか @desuka_desuyo

「何があったのか報告を聞いた時からサボ島の戦いについていろいろ調べてみたんだ。そのときふと思ったんだが、君はあの時の戦いを今でも後悔してるんじゃないのかい?」 たぶん、と言いつつ頷くと、司令官は何度か頷いてから、話を続けた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:37:55
ですか @desuka_desuyo

「今度こそ決着をつけたいと思わないか」 司令官はニヤリと笑みを浮かべると、1枚の紙を手渡してきた。そこにはサブ島沖海域への出撃計画が書かれていた。出撃予定の艦娘欄には私を含めあの時のメンバーの名前が書きこまれている。 「これは!」 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:43:35
ですか @desuka_desuyo

「あぁそうだ。決着をつけるなら、なるべくあの時と同じ状況の方が良いだろうと思ってな」 「無理です! もしかしたら古鷹と吹雪ちゃんがまた……」 沈むという言葉を言うまいと口を噤む。私の反応を見た司令官が厳しい顔をした。 「また逃げるのか」 その言葉にドキリとする。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:48:26
ですか @desuka_desuyo

「自分が今のままでいいと言うなら無理強いはしない。一生後悔の念に駆られながら生きるのも一つの人生だ。それでも出撃したいと言ったのは、あの時の出来事を乗り越えようとしたからだろう。それなのに、ここで諦めていいのか」 司令官の真剣な瞳が私に向けられる。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:52:29
ですか @desuka_desuyo

「それは……そうですけど」 戸惑いながら答えると、司令官は念を押すように言った。 「戦闘のことなら心配するな。絶対に誰も沈めずに済むよう指揮してやる。それに俺の他にもう一人、強力な助っ人を呼ぶつもりだ。だから、後はお前がどうするかなんだ」 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 15:56:31
ですか @desuka_desuyo

司令官のことは信頼している。だが、もしまた誰かを失ってしまったら、という思いが私の気持ちを惑わした。この海域の攻略は別の艦娘たちで進行予定なのだから、無理に出撃する必要はない。危ない橋をわざわざ渡る必要ないではないか、という思いが込み上がる。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 16:01:49
ですか @desuka_desuyo

やめよう、そう思った時、先ほどの司令官の言葉を思い出した。 ――また逃げるのか。 あれほどまでに公開したというのに、私はまだ逃げ続けるというのだろうか。また古鷹に甘えるというのだろうか。 そんなのは嫌だ! #トラ泊神戸支部

2014-04-13 16:07:17
ですか @desuka_desuyo

「やり、ます」 握った拳にぎゅっと力を籠め、やめたいという気持ちを抑え込む。司令官は私の答えを聞いて険しい表情を崩した。 「よく決心した。他の子たちにも俺から話をしておくよ。準備がいるだろうし、出撃は当分先になるが、それでもいいか?」 私は黙って頷く。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 16:10:53
ですか @desuka_desuyo

「それと明日から秘書艦を古鷹に変わってもらいたい。練度的に青葉以外は底上げが必要だからな」 「分かりました」 「じゃあよろしく頼んだ」 司令官は私の肩をポンと叩くと、もとの作業に戻った。私は立ち上がると執務室から出る。その足で演習場へ向かった。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 16:20:49
ですか @desuka_desuyo

艦隊の練度を底上げするのに2か月ほどの時間がかかったが、ようやくサブ島沖へ出撃できるレベルまで力を付けた。 そして今日、とうとうその日がやってきたのだった。 「無理せず戦ってこい」 司令官の言葉にハイとだけ返事をする。皆の顔は緊張で強張っているように見えた。 #トラ泊神戸支部

2014-04-13 16:27:31
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