【第二部-拾壱】姉様分が足りない #見つめる時雨

時雨×山城 時雨×夕立
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誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「ど、どうしたんだい?山城…」 談話室のソファーに山城がクッションを抱いて座っていた。その顔は明らかに不機嫌そう。 「…姉様が…」 姉様?扶桑がどうかしたのかな? 「姉様分が、不足してるのよ…」

2014-04-20 22:00:21
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「最近、ビスマルクがやたらと姉様に絡んできて…姉様も親睦を深めるため、なんて言って律儀に付き合っちゃうし、あぁ…姉様ぁ…」 少し前に着任したドイツ艦達。彼女達も今度の大規模作戦で主力として投入されるらしい。艦隊を率いる立場の扶桑としては、そういうことも大切なんだろうね。

2014-04-20 22:05:11
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「でも、夜は一緒になれるんじゃないの?」 「…最近は大規模作戦の為の会議もあって、私もだけど…疲れてすぐ寝ちゃうのよ…。お陰であっちの方もご無沙汰…」 「あっち…?」 「あ!?ご、ごめんなさい、何でもないわ…」 う、うん…あっちって、どっちかな?はは…

2014-04-20 22:10:11
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「僕分でよかったら、いつでも補給させてあげるよ?」 そう言って、両手を差し出してみる。 「……」 うわ、すごい顔された。冗談だって。 「…全く、いつからそんな余裕が出来たのよ。可愛げのない…」 「え?」 「何でもないわよ」

2014-04-20 22:15:09
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そんなとき、廊下を歩く扶桑の姿が目に入った。 「あ…!姉様!」 山城が立ち上がって、そのまま廊下に出ようとしたみたいだけど、扶桑の後を追いかけてきたビスマルクが扶桑の腕に手を回したのを見て、固まった。 「ちょ…ちょっと!?ななな何してるのよ、あいつ!?」

2014-04-20 22:20:10
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扉を談話室の扉を勢い良く開けて、山城が出て行った。僕も後を追いかける。 「ビスマルク!!なに扶桑姉様に手を回してるのよ!離れなさいよ!」 「あら、山城。何でそんなに怒っているの?これくらい普通じゃない」 ビスマルクが首を傾げる。

2014-04-20 22:25:09
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「ドイツがどうだか知らないけど、ここは日本よ!!そんな軽々しくするものじゃないわよ!」 そ、そうかな…?結構みんな普通にやってるような…。夕立もよくやってくるし…。まぁ、山城にしてみれば、扶桑にそうされる事自体、気に食わないのだろうけれど。 「もう、煩いわねぇ…わかったわよ」

2014-04-20 22:30:11
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ビスマルクが離れた。そして今度は山城が扶桑に近づいていく。そして、扶桑の腕に抱きついた。扶桑が少し困った顔をする。 「まぁ、山城ったら…」 ビスマルクはその様子を呆れた目で見ていた。 「何なのよ、全く…軽々しくするものじゃないんじゃなかったの?」

2014-04-20 22:35:10
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「わ…私はいいのよ!」 「ふーん…。ねぇ、ひょっとして貴女達って、付き合ってたりするの?」 「そうよ!悪い!?」 「や、山城…」 扶桑が少し、頬を赤くさせる。

2014-04-20 22:40:09
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「なんだ、そうだったの。単なる仲の良い姉妹だと思ってたわ。そう…」 ビスマルクが妙に残念そうな顔になった。ん…? 「まぁ、いいわ。そうだ、もう聞いてると思うけど、私も次の作戦で一緒に行かせてもらうわ。よろしく」 差し出されたビスマルクの手を、山城は意外そうな目で見つめた。

2014-04-20 22:45:10
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「え…ええ、宜しく頼むわ…」 山城が扶桑から手を離し、ビスマルクと握手を交わした。そんな二人を見て、扶桑が微笑む。 「…あら、貴女もいたの。ええっと、時雨?」 ビスマルクが、今ようやく僕がいたことに気づいたらしい。そんなに存在感ないかな…。

2014-04-20 22:50:10
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「貴女って何だか、レーベに似てるわね。まぁ、あのコの方がふわふわしてるけれど」 レーベって、ドイツ艦のコか。確かに親近感は少し感じたけど、似てる…かな?まさか一人称だけで言われてないよね…? 「あの二人と仲良くしてあげてね、時雨」 「え、あ、うん」

2014-04-20 22:55:09
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「じゃあ、山城、私はビスマルクと打ち合わせがあるから…」 「え…そ、そうなんですか…」 「そんな顔しないで、山城。私は…」 扶桑が山城の耳元で、何かを言った。途端に山城が顔を真っ赤にして固まった。 「またあとでね、山城。ビスマルク、行きましょう」

2014-04-20 23:00:12
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山城がまた、談話室のソファーに腰を掛け、クッションを抱く。でも、今度は不機嫌そうな様子はなかった。 「扶桑は何て?」 「…べ、別に…大したことじゃないわよ…」 思わず苦笑してしまう。そんな恥ずかしそうな顔して、耳まで赤くしちゃって、大したことないわけないよね、ふふ。

2014-04-20 23:05:09
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「…ちょっと、そんなに見ないでよ…」 「え、ダメ?」 「…見てるって自覚はあるのね…」 だって、こんなに可愛い山城、見逃しちゃうのは勿体無いもの。 「…ふん、勝手にすれば…」 山城がクッションで顔を覆った。山城の表情が隠れてしまう。

2014-04-20 23:10:10
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顔が隠れた代わりに、山城の髪の隙間から赤くなった耳が覗いていた。僕はなんとなく、そこを突いてみた。 「ひぁっ!?」 山城がびっくりしたように飛び上がる。 「ななな!?何するのよぉ!?」 「あ、いや、可愛い耳だなって思って」 「もぉー!!何なのよぉ…!!」

2014-04-20 23:15:11
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涙目になってきた山城を見て、ちょっとやり過ぎたかなと反省。 「…あ、もうこんな時間だね。僕、そろそろ部屋に戻るよ」 「……」 山城がクッションから目だけ覗かせ、僕を睨んでいた。 「ごめんってば。そんな目しないでよ。おやすみ、山城」 「ふんだ。早く行っちゃいなさいよ」

2014-04-20 23:20:10
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「…おやすみ」 部屋から出る間際、山城の声が聞こえてきた。思わず、頬が緩んだ…。 「おやすみ」 僕は山城に手を振り、部屋を出た。 「…顔、ちょっと熱い、かも…」 …どうしよう、たったあれだけのことなのに…すごい嬉しいや…。山城…。

2014-04-20 23:25:09
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「あれ?」 廊下の角に、白いマフラーの端っこが覗いていた。あれは…もしかして。 「夕立」 「ぽい!?」 角に隠れていた夕立が、酷く驚いた様子で声をあげた。 「もしかして…見てた?」 あ、目を逸らした…。いつからかはわからないけど、談話室の様子、見てたんだね…?

2014-04-20 23:30:11
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…山城とのやり取りを見られて恥ずかしい気持ちはあるけれど、それ以上に、罪悪感のようなものを感じていた。…何て声かかければいいのか、迷う。 「…時雨、お願いがあるっぽい…」 夕立が、上目遣いで僕を見た。 「何かな…?」

2014-04-20 23:35:10
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「あのね、夕立…別に嫉妬とかしてるわけじゃないの。だって、時雨は山城さんのこと、好きなんでしょ?だから、いいの。でも、ちょっとだけ、夕立の我儘聞いてくれたら、嬉しいなって…」 「…うん、いいよ、何でも言ってよ」 夕立が遠慮がちに、身を縮こませる。

2014-04-20 23:40:09
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「…時雨分、欲しい…」 僕はつい吹き出してしまった。まさかそこを聞かれてたなんて…。扶桑達が来た時には夕立の姿は見かけなかったけど、さっきみたいに隠れていたんだろうか。…夕立ってば。 「あ!あのね!ずっと聞いてたわけじゃないよ!?そこのところだけ…聞こえたちゃったの…」

2014-04-20 23:45:10
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慌てて取り繕う夕立があまりに可愛いかったから、罪悪感からくる緊張が何処かへいってしまった。 「…いいよ、あげる」 山城にやったように、両手を差し出す。山城には一蹴されちゃったけど、一応、抱きついてもいいよってサイン。 「あ…こ、ここではちょっと恥ずかしいっぽい…」

2014-04-20 23:50:11
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「じゃあ、部屋で?」 「う、うん…」 その返事を聞いて、僕は部屋へ足を向けた。…その途中、夕立が呟くように僕に言った。 「…本当に…夕立のこと、気にしなくていいから…。夕立は、時雨に笑っていて欲しいの。泣かせたくなんか、ないの。…きっと、時雨が山城さんに思ってるみたいに…」

2014-04-20 23:55:12
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「夕立…」 …僕は、その場で夕立に抱きついていた。 「わっ!?し、時雨…!?ここじゃ恥ずかしいっぽいぃ!?」 「…ごめんね、夕立。ありがとう…」 そう囁いたとき、びっくりした様子だった夕立が、スッと落ち着いた…。 「…うん、うん…」 僕の心も、何処か落ち着いていた…。

2014-04-21 00:05:11