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夢を、見ていた。宴のために用意された自室で、泣きながら怒っていた。 戸を叩く音に立ち上がり、返事もせずにドアノブをひねる。 勢い良く開いたドアの向こうには、もう見慣れた、空の色。 助走をつけ。踵を上げる。 「遅い!」 飛び蹴りを、胸のあたりにかましたところで、目が覚めた。
2014-04-26 00:23:29![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
は、と気づいたら、ベッドから落ちていた。 「んにゃ」 呻き、起き上がる。夢を思い出してくすりと笑い、左手の護符に小さく口づけを。 着替えをすると、髪を綺麗に整える。紅を手に取り、唇と、目元に。 「最後だからな」 下駄をどうしようか悩んで、結局普通のものにして、広間へ向かった。
2014-04-26 00:26:33![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
眠りが深い。日が高く昇っても、目覚める気配はなく。寝息は静かで、注意深く見なければ死んでいるように見えるかもしれない。 角を覆う布は、今はない。傷痕も、顔の右半分も、窓からの光の下で見て取れる。 ゆうべも結局、いくらも話をしないうちに、疲れと安心が呼び込んだ眠りに落ちてしまった。
2014-04-26 01:28:31![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ごく浅く、意識が覚醒に近づく。半端に寝返りをうつように身動ぎをする。広い、と思う。もっと、狭いところへ行きたくて、もっと、あたたかいところへ行きたくて、微睡みの中、手探りをする。 「……ジェルト……」 ただひとつしかない、私の檻の名を、幽かな声で呼んで。
2014-04-26 01:29:28![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「昨晩は悪手を打った」 ぐらぐら揺れる視界にうめく 「朝か。悪くない、朝だが」 血の匂いが少々考えものだな…… 「窓を開けよう」
2014-04-26 01:33:25![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ゆらり、どすっ、どたり 地面に這いながら、窓下へ。ずりずり、と壁を這い、窓を開いた ごろごろと転がり、沐浴の部屋へ 「うー……早朝の、一発……貰います、ぞ」 黒絹を脱ぎ捨て冷水を浴びる
2014-04-26 01:33:31![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「まだ朝の5時。よし、鎧を着て二度寝といこうではないか」 鎧を着込み、ふらついた足取りでベットに戻って、ジェネヴラの手を握り睡魔に勝ちを譲る
2014-04-26 01:34:24![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
@Nirfata 「何だ、ニルファタ?」 声が、返って来た。檻が、眠ったままの剣の呼びかけに応えた。部屋の中、寝台の傍ら。椅子の上。片膝を抱えるような姿勢で、ネザーフェミアの王子は、其処に居た。 「起きろ。そろそろ昼になるぞ。相手が決まったからと言って、寝過ごす訳には行くまい」
2014-04-26 01:47:54![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
@jeltferluo 名前が鍵であったかのように、閉じていた瞼がうっそりと開く。感じ取った光の強さに眇めて、掌で陰を作り。 「昼……?」 身を起こす。結っていない金髪が、肩から滑り落ちて袖を撫でた。 「……ジェルトどの。其方、此方にいったい、どんな魔法をかけたのだ?」
2014-04-26 02:21:57![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
@jeltferluo よく眠れたせいか、身体がいつもより軽い気がする。 「久方ぶりに、眠った気がする」 布団から脚を出して、寝台から下ろす。裾から一瞬、左脛に伸びた穢れの根が見えて、慌てて押さえた。見えないだろう。けれど、私には見えて、ひどく気になるのだ。
2014-04-26 02:22:04![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
燦々と輝く朝日を浴びながら目を覚ます、屋根の上で。星明かりでひと通り書物をした後そのまま意識を落としたようだ。「やっべ着替えないと広間にいけん。」慌てて屋根を飛び降りて風を切る。行きと同じように自室へと戻ると服を脱いで浴室へと向かう。足から臍の上まで緑の蔦のような痣が這っていた
2014-04-26 02:26:14![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
@Nirfata 「……おはよう。ニルファタ」 既に王子は、常の軽鎧まで身に付けていて、殆ど身支度も済んでいた。 「済まぬ。朝になってから、流石に服は着替えに戻った。急いで戻ってきたのはいいが、今度は眠っている其方を起こしたく無くなった故、触れられなかった」 緩い、笑顔と共に。
2014-04-26 02:27:45![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
水で身体を清めながら眠たげな頭でぼんやりと痣に意識を向ける、此処に来る前は臍の下辺りであったような気がする、痣の進行に気づけばほんの僅かに表情を曇らせた。「いそがねーとな。」それは何に対しての言葉だろうか?水浴びを終えると手早く翼を羽ばたかせて水気を飛ばし新しい服に袖を通した。
2014-04-26 02:30:25![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
@Nirfata 「俺がした事と言えば、それだけだ。後は、其方が眠るまで、傍に居ただけに過ぎぬ」 窓枠。日差し。椅子から立ち上がると、伸びを一つ。 「……どうした? 痛むのか?」 しゃんと、伸ばした背筋のまま、近くへと歩み寄る。隣、寝台へ腰掛けるように。 「昨日、挫いたのか?」
2014-04-26 02:33:07![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
海の中にいた。深海に向かって尾を揺らす。魚達と戯れ、海面を見上げた。朝焼けの海面。白い光が海に差し込んでいた。その中に、強い金色を見つけ——。 ぼんやり、と瞼を開いた。思考はまだ微睡んでいる。夢、と声なく呟き、温もりを求め、身動ぐ。ふと手の先に熱を感じ、首を傾げ、其方を見やる。
2014-04-26 02:47:14![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
薄く開いた青が、隣で眠る獅金の王子の姿を認める。じぃ、っと数分程見つめ、そっと体を寄せた。再び目を閉じながら、頬を寄せれば、鎧に阻まれて。じんわりと冷えていく頬に、意識は覚醒を促された。 ゆっくりと体を起こし、寝ている間に乱れた服を整えながら、肩の『証拠』を愛しげに撫でる。
2014-04-26 02:47:33![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ふと流れ込む風に気づき、窓を見やった。窓の外の太陽は、朝というには既に高い位置に昇っていて。 (……着替えて、広間に行かないと) 握られた手はそのままに、寝台の上をゆっくりと膝立ちで移動する。獅金の王子の顔を覗き込むと、目尻を緩め、タテガミを梳き。起こすべく、軽く肩を揺すった。
2014-04-26 02:50:08![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
明け方、戸を文字通り叩く音で目が覚めた。了解の意を伝える文を扉に挟んで帰ってきたフアンは、此方の事など気にする風も無く、ベッドにくてんと転がって。 「――ああ、そうだった」 小さき龍に雌雄は無い。ふとそのことを思い出した。撫でられれば、フアンは気持ち良さそうに喉を鳴らす。
2014-04-26 05:55:54![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
明け方の冷たい空気に伸びをして、顔を洗い、手早く着替えを済ませた。黒地に金の刺繍が施された、少し煌びやかな衣装。きちんと髪も編んで、根元と毛先を留める。 「フアン、果実はそこにあるからね」 甘く香る果実を一つ、朝食代わりに齧りながら、ぷすーと寝息を立てる小さなお供に笑って。
2014-04-26 05:59:01![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
――昼時も近い。首元を留め、服を正す。柔らかい素材で作られた履物故に足音は静かなもので。 扉を閉める。鍵を懐に、フアンがひらりと尾を振ったのが見えた。呑気なものである。 「一番乗りかな」 何時もより姿勢を正して、廊下を歩く。そして、広間の扉に手を掛けて――。
2014-04-26 06:02:50![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
――意識が覚醒し、桜色はふと、目を開く。目を開いたということは、眠っていたということだ。夢を見ていたということだ。巨鎧(きょがい)の姿は、眠りになど落ちない。眠りを忘れヒトが持つべき五感を忘れた戦士になるのだから。
2014-04-26 09:16:43![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
しばらくは、巨鎧姿であった気がした。異形たる姿を晒して、婚礼の儀に参加していたはずだ。様々な出会いがあったはずだ。そう、そこで。素敵なひとを、見つけたはず。徐々に回復していくまどろみの中で、桜色は回想する。人々の顔と声。ある異性の表情と、言葉と。甘い、香り。
2014-04-26 09:16:49![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
しかし、はたりと考える。ひょっとしたら、それは全部夢だったのでは? 巨鎧になって迷宮の異形と戦い、疲れ果て、憔悴し切った心が見せたただの夢だったのでは、と。いつまで経っても伴侶を持たず、きちんと異性を抱こうともしない自分を見て、急かすように周囲のものや兄が婚礼祭への参加を勧めて。
2014-04-26 09:17:10![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
そうした重圧が生み出した、刹那の夢だったのでは、と考える。そう悟る。(なんだ……どうりで、都合よく素敵なひとが現れて、弱いぼくを見てくれたり、巨鎧を受け入れてくれるわけだ……こんなの、夢だよね)呆れた哂いと、溜息ひとつ。
2014-04-26 09:17:32