- koiflachuchu
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「ブッダ……」ガンドーは一人ごちながら事務所を出ていく。(大変だったんだね、先輩)こいしは第三の瞳を開きながらニューロンの中で呟く。そして数秒も経たないうちにその三つの瞳は閉じられた。 22
2014-04-27 09:40:22現在に戻り、ガンドー探偵事務所。眼鏡をかけたこいしが報告を打ち込んでいる。宛先は例の「Nomark」相手だ。 #OKU:Komeiji:ウサギ入手| #OKU:Nomark:場所は| #OKU:Komeiji:八階| #OKU:Nomark:ルートは| 24
2014-04-27 09:45:53#OKU:Komeiji:角刈り| #OKU:Nomark:ブッダ……| #OKU:Komeiji:報告は終わり。満足?| #OKU:Nomark:充分。約束通りカネは渡す| #OKU:Komeiji:振り込みじゃないの?| #OKU:Nomark:直接だ。ウサギも欲しい| 25
2014-04-27 09:50:32#OKU:Komeiji:デートのお誘いかしら| #OKU:Nomark:そんなものだ| #OKU:Komeiji:わかった。どこで落ち合う?| #OKU:Nomark:転送する| 数秒もしないうちにUNIXがキャバァーン!と音を立てる。位置情報の転送が完了した。 26
2014-04-27 09:55:42場所は、アッパーガイオンドラゴン地区。シルバーキー鍼灸院。「鍼灸院ナンデ?お医者さんなのかな」こいしは眼鏡をはずし、UNIXから離れる。第三の瞳は普段通り閉じられている。UNIX越しの相手の思考を除きこむのは不可能故にだ。「後はお金をもらいにいくだけ。探偵も割とチョロイね」 27
2014-04-27 10:00:53これならガンドーの用意したコネを使うこともない。こいしは嬉々として冷たいシャワーをサッと浴び、石鹸で髪の毛を簡単に洗い、いつもの服に着替える。黄色のブラウス、緑のスカート、黒の鍔広帽子。これが彼女にとってのニンジャ装束、もといヨーカイ装束のようなものだ。 28
2014-04-27 10:05:08「アッパーガイオンかあ……一回おさんぽしてみたかったんだよね」こいしは外に出るなりリフト乗り場に向かって真っ直ぐ飛んでいく。途中ケビーシ・ガードの検問があるが、姿を消せるこいしにとって何の意味もない。誰にも咎められぬまま、ゆっくりとアッパーガイオンへ飛翔していく。 29
2014-04-27 10:11:58シルバーキー鍼灸院の正確な場所を割り当てるのは困難であった。一年前ほどに院長が行方不明になり、景観を損なう放置物件という名目でキョート政府に差し押さえられたのだ。その上キョートを襲った未曾有の大災害で差し押さえの件がうやむやになり、結果廃屋として放置されている。 31
2014-04-27 10:15:22熱心な常連客は災害で命を落としたか、アンダーガイオンに逃れたか、見切りをつけて他の医者を頼ったか、既にアッパーガイオンにはいない。役所に問い合わせたが、役に立たなかった。そして、こいしが最後の望みをかけたのが、情報屋として名高い闇ブローカーのブーンズ洞であった。 32
2014-04-27 10:21:06こいしに情報屋を満足させるほどのカネは持ち合わせていない。だが、誰にも知覚されることのない無意識を操る程度の能力と、本来の能力である心を読む程度の能力を組み合わせれば情報屋にカネを払わず情報を盗み取ることは容易かった。 33
2014-04-27 10:25:32だが、自由に開閉出来るようになった第三の瞳には制限が設けられていた。一つは読心を行った後は暫くの間無意識を操る事が出来ないこと。一つは読心の有効時間はわずか5秒でありその後暫くの間読心を行えないこと。そして、こいし自身が読心を嫌悪しており、読心後ニューロンが損傷すること。 34
2014-04-27 10:30:13「ごめん、おじさん。探偵……チョロくなかったよ……」以上の要因が重なった結果、ブーンズ洞の配下に追い回されたこいしは無意識を操る事が出来るようになるまでガイオンを走り回り続けた。そして、心を許していない者の思考を読んだ嫌悪感がこいしを支配し、その場に吐瀉物を撒き散らした。 35
2014-04-27 10:35:34時刻は既にウシミツ・アワー。依頼人が起きている保障はゼロに等しい。「あーあ、これじゃあデートどころじゃないよ」嫌悪感に包まれたニューロンが頭痛を起こす。そして、目の前にあるシルバーキー鍼灸院であった廃ビルを見上げる。かつて掲げられていた屋号は既に色褪せていた。 36
2014-04-27 10:40:12「おじゃましまーす……」不用心にも玄関の鍵は開いていた。中からは微弱なテクノ音が聞こえる。一階は真っ暗で人の気配はしない。恐らく二階からだ。玄関横の階段を上ると、光が漏れる。テクノ音も大きくなる。二階に上がってすぐ側にある部屋。ここに「Nomark」がいるはずだ。 37
2014-04-27 10:45:39「よかった、まだ起きてるのね」「アーーーイイーーー!!!」「アイエッ!?」こいしがカーボン・フスマを開けると、そこには全裸でブリッジしながら奇声を上げる中年男性がいた!「ネコ!ネコ!カワイイー!ファッキンブッダクライスト!アッギャッギャッギャッガガピー!」 38
2014-04-27 10:50:13おお、ゴウランガ!男はブリッジの体勢から腰を地面に打ち付け、反動で天井まで跳ねる!そして地面に落ち、その反動でさらに跳ねる!「バーイオイオイオイ!バーイオイオイオイ!」跳躍!落下!跳躍!落下!奇声を上げながら部屋を縦横無尽に飛び回るその姿は、まるで平安時代のニンジャだ! 39
2014-04-27 10:55:12「アイエエエ……狂人……」全裸中年男性はその場にへたりこんだこいしの存在に気付くと、跳躍をやめブリッジ体勢のままこいしを見据える。「ウサギチャン」「ヒッ」「……ヨージタイコーッ!」「た、助けてお姉ちゃーん!」ブリッジしたままこいしに向かって走る全裸中年男性!こいしは逃走! 40
2014-04-27 11:00:06「シシセツダーン!」「ンアーッ!」ナムアミダブツ!なんたるリアル・ヨーカイであるはずのこいしをも圧倒する人間離れした身体能力であろうか!こいしは無情にも全裸中年男性な押し倒されてしまう!このままでは青少年のなんかがアブナイ!「ヒヒーッ!」「アイエエエ!?」 41
2014-04-27 11:05:09全裸中年男性はこいしの帽子を剥ぎ取ると、その中に隠してあった『シアワセ戻る』を奪い取る!「スーハー!スーハー!クンカクンカ!」そしてそのまま全部吸引!「ウウウマーイ……ハッ!?」我に帰った全裸中年男性は、クスリをキメると自らの置かれた状況を正確に判断する。 42
2014-04-27 11:10:59「もうやだ……コワイ……おうちかえる……アッパーガイオンいい加減にしろよ……」男の下には押し倒されている少女。しかも泣いている。慌てて飛び退く。男に先程までの異常身体能力は無かった。「スンマセン……」そして、ドゲザからの謝罪である。先程までの凶行が嘘のような綺麗なドゲザ。 43
2014-04-27 11:15:23「……ドーモ、Komeijiです。あんたがNomark?」「ドーモ、Komeiji=サン。Nomarkです。すまない、大変見苦しいものを見せてしまった」「見苦しいと思ってるならまず服を着てよ」こいしが男の股間の方を指差しながら言う。「アッハイ」男はすごすごと部屋に入る。 44
2014-04-27 11:20:23数十秒後、男はパンツ一丁で現れた。「ムイシキ!」「グワーッ!」こいしは第三の瞳のコードを纏めて男をはたく!「真面目にやってよ!」「すまん、つい性癖が……」「ムイシキ!」「グワーッ!」殴打!「真面目にやれ!」「アイエエエ!」半裸中年男性は再び部屋に戻る! 45
2014-04-27 11:25:09一分後、パンツ一丁の上に白衣のみ纏った男が現れる。こいしは一瞬男を睨んだ後、ため息をついた。「もうツッコむのも疲れたよ」「すまない。実はこれしか服が残っていないんだ」「……ナンデ?」「クスリの……シアワセ戻るの買いすぎだ」こいしは再び溜め息をつく。(キョートの人って……) 46
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