「我が鎮守府の提督は艦娘と仲が良い。とりわけ、夕張、秋雲と笑いながら話す姿をよく見かける。部下との意思疎通を円滑にすべく、普段から気安く付き合うのは悪い統制方法ではない。しかし深夜に複数の艦娘を自室に招いているという噂を耳にした時は、どうしたものかと考えた」
2014-05-02 18:26:58「のちに思い過ごしにすぎないとわかったが。夕張はたびたび秘書艦を務めるし、趣味もあうようで、公私共にもっとも親しい艦娘といっていいだろう。しかし信頼しているかというと微妙なところだ。夕張はあくまで真面目な少女であり提督の傾いだ精神を真正面から受け止めるのは過酷に過ぎると思われる」
2014-05-02 18:29:28「提督の信頼、という点であれば不知火をおいてほかにない。この陽炎型駆逐艦はなるほど条約破棄後の艦隊型駆逐艦の集大成ともいえるが、所詮は駆逐艦にすぎない。しかしながら彼女が信頼される理由は別にある。性根の問題だ。」
2014-05-02 18:35:53「不知火は、他の艦娘を殺すことを躊躇わない。おそらく夕張であれば彼女の瑕疵を問わず艦娘への攻撃は躊躇するだろう。もしかしたら抗命するかもしれない。これは大なり小なり皆そうである。しかし不知火は違う。彼女は一旦提督の命が下るや否や、迷うことなく「出撃」しその首をとるだろう」
2014-05-02 18:46:55「実際過去にいた、どうしても素行不良がおさまらなかった艦娘の「処断」に提督は不知火を用いている。もともと他の艦娘と合わせることをあまりしなかった不知火が周囲から浮き上がったのはそれが原因に違いない。勲章を貰える殺人はともかく、味方殺しと仲良くはできない」
2014-05-02 18:48:22「加えて、提督が不知火に性処理を任せている事実もある。睦み合う男女であればともかく、平素の二人はまったくの機械的であり、使用者とその道具でしかない。まぐわいも不知火がひたすら奉仕する形であるのは容易に想像がつくし、事実そうである。ともなれば、女性が嫌悪感をしめすのも当然であろう」
2014-05-02 18:50:28「不知火はそれでかまわない。不知火には提督しかいない。ほかのなにもいらない。提督には不知火のあずかり知らぬところでまた人付き合いがあるし、シャバに戻れば意中の相手もあるかもしれぬ。だが鎮守府においては不知火だけを使っていた。」
2014-05-02 18:53:14「不知火がいつからこうなってしまったのかはわからない。素行不良の艦娘を「処理」したときからなのか、そもそもがそういう艦娘だったのか。だいたいなぜ提督に尽くすのかもわからない。不知火にわかっているのは、提督がすべてだということと、提督の寵愛を一身に受けているという事実のみだ」
2014-05-02 18:54:52「提督の寵愛というものは、艦娘にとっては特別な意味がある。もともと人に指揮され戦うのが軍艦である。艦娘であってもそれはかわらない。戦争という局面においては人は無理な指揮をとらねばならない。その時、その指揮官に特別な感情を抱いていれば、保身よりなお命令を優先させるだろう」
2014-05-02 18:56:24「そのため艦娘は提督に特別な感情を抱きやすい。そういう生き物なのだ。もちろん、女の姿をとっている以上、女性的な感性もおおよそ持ち合わせていて、他の女性に優って、異性と特別な関係にあるという事実はまた彼女たちを喜ばせるのである。」
2014-05-02 18:58:12「不知火にはそれだけでじゅうぶんだ。今日提督に寵され、明日提督に奉仕して起こす。日中は雑事を済ませ、もしも命令があれば敵の首をとる。うまくいけば褒めてもらえるだろう。それだけでじゅうぶんだ。」
2014-05-02 19:00:50「こうして、不知火の毎日は充実している。提督とともにいられればそれだけでいい。明日もはやい。提督の顔を、匂いを思いながら、寝ることにしよう」
2014-05-02 19:01:41