奏でる言の葉

奏さんの素敵な文章を纏めてみました。
3
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@shiba_s15 「運命みたいな恋をするの!」いつまでも夢見がちな幼馴染を笑ってからかったいつもの帰り道、まさか女の子が空から降ってくるなんて思わないだろう?羽根代わりの白い傘をくるりと回して少女が笑う。それが、しばちゃんと僕の出会い。

2014-05-08 00:28:54
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@yuuki__san いつもの道を曲がると、何故かピエロがいた。ぎょっとして立ち止まったら、視線を外せなくて無言のにらみ合い。「なにしてんの、逃げるよ!」腕を掴まれて駆け出した背中に耳つきパーカー…ゆーきさんとこんなに長い付き合いになるなんて、そのときの僕は知らなかった。

2014-05-08 00:44:24
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@masa770419 夜にしか現れない美少女幽霊に会うのだと息巻く友人に、相手が美人なら生死を問わないのか、と呆れた溜息で巻き込まれた深夜の学校。鏡の向こうに忘れ物をした、なんて変な理由でついてきたマーサと名乗る自称転校生は、妙にサマになる仕草で肩をすくめてみせたのだった。

2014-05-08 00:53:41
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@shiroikumo0924 るるらら、音階とおなじ階段を駆け下りる足音にワンテンポ遅れてスカートがふわり。「見た!?」真っ赤な顔で詰め寄る女の子に「見てない!」って答えたのに右ほっぺにそれはみごとな紅葉。そこから始まったケンカ友達がピンクの水玉だったことはここで懺悔しておく。

2014-05-08 01:08:32
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@rinken1979 コツコツ。白い廊下にステッキの音が響いて、シルクハットの紳士がにこりと笑う。「ごきげんよう、お嬢さん」夢と同じ顔が、友人の横でハジメマシテと笑った。それ以来、リンさんはもしかして黒い羽を隠してるんじゃないかと疑っている。

2014-05-08 01:14:27
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@akkycom 鍋底みたいな人混みの街の外れに、夕焼け色のコートを着た人が口笛を吹いていた。見知らぬ顔、知らない旋律。"たびびと"だ。言葉はない。僕がその旋律を覚えたのを察したように、彼は再び旅立つ。自由の旋律と、あっきーという名前だけを残して。

2014-05-08 01:27:56
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@pitty009 あの日はやたら暑くて、自販機になけなしのコインを入れたら、「あーっ!」女の子の絶叫に指が滑っておしるこ(ホット)を押す、コントみたいな悪夢をやらかした日だった。泣きそうな気分で振り向いたら、見知らぬ女の子がにっこり手を突き出してた。それがpikittyだった。

2014-05-08 01:41:46
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@tnb808 夜中に家を抜け出して森の奥。鳥籠の流れ星は、空へ帰る方法がわからないと泣くばかりで、途方にくれる僕の前に現れたノッポの昼寝研究家(寝過ごしたらしい)タナベさんが「そぅら!」星の仔を放り上げる。キラキラ。帰っていく星に、星空研究家になればいいのに、と思ったのは秘密。

2014-05-08 01:57:37
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@tic_tac_toe_ 月と太陽の同居する昼、混乱して道ゆく人に尋ねた。「今何時ですか?」「君は何時が好きかね?」「え?」「朝9時なら右手、夜12時は左手、おやつの3時が帽子の上だ。君は何時がいい?」めれる先生との最初の会話。とっておき、とポケットに眠る25時を見せてくれた。

2014-05-08 07:51:02
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@sonekamone 電車待ち、徐に折り畳みを拡げる男がいた。延々続くジッパー音にチラ見したら、ジグザグにジッパーの走る布はすでに2m四方をゆうに超え「何これ!?」絨毯に決まってる、と真ん中に座り込んだのと同時にふわりと浮いた。ちゃっきーがなんで電車を待っていたのかは知らない。

2014-05-08 08:10:49
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@kaicho_okocha お菓子の家があるよ、と町の人が教えてくれた。悪い魔女が?と尋ねた私に、彼らはまさか、と首を振る。道すがら、広場で子供達に囲まれた青年が腕を振るとパラパラとお菓子の雨。笑顔の子供達の真ん中で誰より楽しそうに笑う魔法使いは、かいちょさん、と呼ばれていた。

2014-05-08 08:18:23
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@himitaconan 海へ行く道の途中で物売りに会った。「雲の欠片の瓶詰、森兎の羽、あぁでも、君にはこれかな」なんの変哲もない林檎。なんでだ。 だけど、必要な時に必要なものを。賢者みたいな不思議な物売り・ひみたこさんは、この先の旅路で何度も僕を助けてくれることになる。

2014-05-08 08:32:20
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@ebarisa 蜂蜜色の肌にチョコ色の髪のとんでもなく綺麗な娘さんは「それちょうだい!」と返事を待たずに林檎に飛びついた。赤い実に軽快なリップ音。お礼よ、と手のひらに零された綺麗な鱗。ぽかん、とする間に海に飛び込む背中に慌てれば、波の狭間に鱗と同じ色の尾ひれが楽しそうに揺れた。

2014-05-08 08:42:20
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@nayu178 林檎は人魚の好物なのよ、クスクスと笑う少女は物知らぬ旅人が面白いらしい。なゆ、といたる所で声をかけられる彼女も随分と人気者だ。周囲の視線が痛い。今も、恋人に?と花を見立ててやっているが、かけてもいい。あの青年が渡したいのはなゆ嬢だろう。気を利かせるべきだろうか。

2014-05-08 08:52:02
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@sha2438 秘密屋、という看板に興味を惹かれない人間はいるだろうか。いかにも怪しい店内は、いつのまにか眼鏡の男が猫を撫でている。「ご店主」「店主はこっち」抱えられた猫が迷惑そうににゃあと鳴く。「君の秘密は高く売れそう、だってさ」猫の爪が弾いた冬色のペンを誰かの秘密だろうか。

2014-05-08 12:23:14
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@sozokobo38 みやちゃんが、みやちゃんは、と話題によくのぼる彼を初めて見たのは、彼が虹をペンキ缶に詰めている時だった。ぐるぐると缶で渦巻く七色は等しく美しく。「これはどうするの?」笑わないと約束して教えてもらった。彼は海の中に虹を作るために材料を集めていたのだ。

2014-05-08 12:29:27
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@aiko189090 遠方の客人と紹介されたのは、藤色の鞄を提げた華奢な女性だった。興味津々に覗き込むのを嫌がりもせず、「見てて」小さな赤い宝石に息を吹き込むと、掌はあっというまに緑に溢れ、とりどりの花が咲いた。アイコさんが有名な鉱石使いなのだと知ったのは、このずっと後のこと。

2014-05-08 12:44:36
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@yuhyuh_f ひゅいひゅいと不思議な音を立てて走る青年に「忙しそうだね」「そうだね!」相槌は明朗快活。ところで、「翼は使わないの?その方が早そう」立派な翼がバサバサと彼の背を叩く。「隼の走る音を貰ったんだ。かっこいいだろ?」自慢げな青年はゆーすけと名乗って、私に道を尋ねた。

2014-05-08 22:24:00
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@_hide_and_seek さてはてお立会い!滑らかな口上で扇子を繰る手品師はハイドと名乗ると、帯の蝶を現実に招き、代わりにしゃぼん玉を封じて、雪を降らせる。魅入る客の中でいっとうまぬけな顔の僕をくすりと笑い、おまけに、と僕の襟巻きをみごとな金色のキツネに変えてみせた。

2014-05-08 22:31:35
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@sakananana 涙に溶ける幸福は水溶性で、つまり海は幸福そのもの!熱弁を振るう娘さんに出会ったのは山の上の小さな村。いつか海に住む準備はできてるのと、木々に阻まれて遠く景色にすら見たことのない海へ限りない憧憬が熱弁に透ける彼女は、古い言葉で美しい魚を示す名前をしていた。

2014-05-08 22:57:04
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@Mukku1105 ざぁざぁと雨の音で世界が満ちる夜に、隙間を埋めるような小さなノック。3階の窓を覗き込む青年は、目を剥く私にひらひらと手を振る。「届けもの」窓の外からころりと妖精の卵を転がす。ムックと呼ばれる秋雨の使者は、夜に映える赤い影を連れていた。

2014-05-08 23:04:17
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@ubiquitous2112 空が本当はパズルで出来ていると知っている人は少ない。彼女はその内の一人だ。渡り鳥がつついて落としてしまった冬の空をゆびこ嬢はいつも首にかけて、鳥が戻るのを待っている。雪の銀が混じる小さな空が、彼女の胸元を飾る役目を誇りに思っていることを知らずに。

2014-05-08 23:10:04
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@n_o_a_666 美術館であり図書館でもある大きな建物には、学者がひとり。いつも何かを調べては感嘆の声をあげるその人は、街の外にやってきた春に気付いていなかった。「ごきげんよう」ちょい、とつついて窓を示せば、やっぱり感嘆の声。そんなかわいい人は名をのあ、という。

2014-05-08 23:18:27
奏@ティーポットを探して彷徨う @ainamlc

@nekosuki6 動物の楽園、と言えば誰もがあぁと頷く、ありとあらゆる動物の暮らす屋敷には、アンディという名の人間もひとり住んでいる。「なぜ玄関で寝ているんです?」「寝室をさかさコウモリと月光鳥の夫婦に譲ったのさ」真顔の動物愛護主義者は寝袋の中でくしゃみをひとつ零した。

2014-05-09 00:12:06