ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/11/06
#twnovel 宇宙人研究家へインタビューを行った。彼は幾多の宇宙人写真を公開したが多くはトリックだ。なぜ彼は宇宙人にこだわるのか?「地球のためです。平和への努力も空しく争いは止みません。人々がまとまるには共通の敵を意識するしかないでしょう。それには宇宙人が最適です。」
2010-11-06 00:37:41#twnovel また寝坊したのかな。歩道橋から、立ちこぎの自転車が見えた。スカートが脚にはり付くスピードを少し緩めて、手を繋いだ黄色い帽子の小学生たちの横を安全距離ですり抜けてく。白いマフラーが流れ星みたい。あの、必死で走る真っ赤な顔が見たくて、最近私は寝坊しなくなった。
2010-11-06 00:48:59#twnovel 腐りかけの林檎を汚らわしいと評する君の潔癖さは微笑ましく、けれどその事に諸手を挙げて賛成できるほど、僕は君に入れ込んでいるわけでもない。だからきっと、この先に決別があるだろう。同時に、林檎と蠅とフォークの三すくみは僕が手づかみにして全てを台無しにしてしまうのだ。
2010-11-06 02:27:26#twnovel 昔から幼馴染が好きだった。いつも一緒だったが気弱な僕はいつも彼女のいいなりだった。だけど苦ではなかった、楽しかった。そんな彼女から結婚式に招待された。式には妻と行く。妻を紹介してくれたのは彼女だったっけ。誘われたからには行かないと。今も僕は彼女のいいなりだから。
2010-11-06 03:27:37#twnovel 凍えそうな砂漠の夜空に三日月が揺れている。月は触れれそうな程鮮明に映っているのに、星はない。月の真下でラクダがアクビをすると、こぼれ落ちそうな程の星が現れ、月の光を弱めた。やがてラクダの眠りと共に星は一つ、また一つと月へ吸い込まれ、夜空は元の月夜を取り戻した。
2010-11-06 05:15:08#twnovel マフラーが苦手だった。あれを首に締めると、息苦しかったから。去年の冬。付き合っていた女性がマフラーをプレゼントしてくれた。そのとき、一瞬だけ苦い顔をしてしまったみたいだ。彼女の悲しそうな顔。僕はそれからマフラーを付けるようになった。いつか慣れるものと信じている。
2010-11-06 06:06:33#twnovel 妻の祖母は、所謂「見える」人だった。ある日、坂を上っていると、幽霊が迷っていた。声を掛けると、道が分からずに困っているという。「ちょっとそこで待っていなさいね」と彼女は言い渡し、知り合いの寺に行き、住職を連れて戻って来た。幽霊は、住職によって道を示されたという。
2010-11-06 06:18:43#twnovel ベランダ間にある仕切りは非常時には打ち破ってもいいのだが、隣の奥さんにとっては「ベランダに物を置きすぎて洗濯物が干せなくなった」が非常事態だったらしい。以来彼女は布団も下着も遠慮なくうちの方に干す。旦那とプチ野外プレイを楽しむこともあり、時には僕も呼ばれる。
2010-11-06 06:52:56#twnovel 生命が統一通貨になった。生命銀行で管理し、人類の生命総量を最適に制御する。物を買う時に命を払うのだ。金がつきると命がつきる。人は富者として生まれ貧者として死ぬ。金持ちは利子で余命を伸ばし、貧者は借金を余命で払う。生命資本主義のもたらす新時代。
2010-11-06 09:39:37今日は久しぶりに嫁とデート。息子は泊りだし思い切り羽を伸ばせる。約束の場所に行くと嫁は既に来ていたが、少し浮かない顔だ。とりあえず予約済みのレストランへ。注文を終えて、どうしたのか聞いてみた。すると彼女は言いづらそうに、「もうこんな事はやめましょう、お義父さん」 #twnovel
2010-11-06 11:03:09#twnovel 妹を捨てた男を破滅させた。色仕掛けで近づき、私との情事の写真をばら撒いた。家庭は崩壊し、勤め先を辞めなければならなくなった。だけど復讐を遂げた充足感は無く、彼を求まる熱情だけが私の心で疼いている。一人呆然といる彼の許へ私は向かう。誰に蔑まれても私は構わない。
2010-11-06 14:27:21元子ども兵に、日本の自殺率を聞かせてやると「かわいそうだ、恐ろしい国だな」と言った。生きるために生きてきた者にとっては、所詮、理解できない世界なのか。生きる世界を違える者同士が、互いを憐れんでいる。この世に救いを求めることのなんと儚さよ。と、神はつぶやく。 #twnovel
2010-11-06 15:40:05#twnovel 悲しみや怒りや憎しみが満ちると、崖に大きな木の実がなって村は平穏を取り戻す。村の言い伝え。何度かその木を見に行こうとしたが、子供は危ないと行かせてもらえなかった。僕は大人になり、その木に行く時が来た。かついできた妻の死体を木につるすと妻への憎しみは消えた。
2010-11-06 17:36:55お金が消えていると思ったら、財布が音を立てて咀嚼していた。うまいものが口の中に放り込まれたら顎を動かしちまうのは道理だろ、と財布は言う。試しに泥のついた福沢諭吉を入れると、これは農家の爺さんが汗水垂らして手に入れた味がするぜ、大事にしろよ、と言って吐き出した。 #twnovel
2010-11-06 18:33:02何もない部屋。一見すると何もない空き部屋。一見すると何もないように見える空き部屋。一見すると何もないように見えるが妙に壁紙が新しい空き部屋。一見すると何もないように見えるが妙に壁紙が新しく、北側にデッドスペースが存在する空き部屋。ガリゴリ、ゴリガリ、…カリカリ。 #twnovel
2010-11-06 18:54:38きみはともだち。5歳になった僕に親が与えたきみはともだち。一緒に遊んで、おやつを食べて、同じベッドで寝た君は友だち。大人になって、奥さんができて、息子が欲しがる君は友達。布が擦り切れて、縫い目が解れて、ボタンが取れた君は友達。同じ穴、同じ墓、同じ棺の君は友達。 #twnovel
2010-11-06 19:13:57#twnovel 渋谷駅前。デモ行進取材に来たTVクルーは、首をひねった。プラカードも行進も見つからない。ディレクターが主催者に電話した。「どうなってんの?」「言ってなかった? ARデモなんだ」慌てて、スマートフォンで交差点を見る。誰もが、頭からプラカードを生やして抗議していた。
2010-11-06 20:04:38食卓でコーヒーを飲んでいると、妻は紅茶を持って横に座った。妻が差し出した紙にはいくつもの女性の名前。あと数ヶ月後にはこのテーブルを3人で囲むことになるんだと実感がわいてくる。寒い夜、やかんから蒸気が上がる音をBGMに生まれてくる娘の名前を話し合う。 #twnovel
2010-11-06 22:04:21傷つき、疲れ、もう恋なんてしないと思う人がいる。それなのにまた、恋に落ちてしまう人がいる。終わりの辛さを知っていてもなお、甘さの記憶が背中を押すのか。恋は、辛子入り饅頭の混じったロシアン・ルーレット。中身は食べてみないと分からない。一度食べ始めたら止められない。 #twnovel
2010-11-06 22:22:40