【センティメンタル、ミー】福間健二 #2factory64

ずばり、タイトルはエルヴィス・プレスリーの「Sentimental Me」から。エルヴィスは「きみも愛していると言ってくれ」と歌っている。私のノートには「愛していると言わなくていい」というメモがあった。そっちへひっくり返そうと思った。フランク・シナトラほかの歌ったスタンダード「I’m Getting Sentimental Over You」も意識している。プラス、アニー・レノックス(ユーリズミックス)の「Be Yourself Tonight」とジョン・レジェンドの「All of Me」も使っています。でも、やりたかったのはハードボイルド。 音楽は、やっぱりエルヴィスの「Sentimental Me」ということに。 https://www.youtube.com/watch?v=KelG77t4qTQ
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福間健二 @acasaazul

腐ったもの、汚れたものが、ずっと前から、ぼくの中にある。それをどうすることもできずに生きのびてきたし、さらに生きのびる。でも、切り出しナイフ。暴れるだれの父親にもならずに吸う琥珀色の葉。血の一滴。いつかは、すべてが消えるんだね。(センティメンタル、ミー1)#2factory64

2014-04-30 08:41:58
福間健二 @acasaazul

ぴかぴかのもの、つるつるのものに用はない。雨と風にさらされて静かに老いていくドアを探した。大都会。こわれた把手だけが握手の相手。ロスト、ロスト、最後は何と交換されるのだ。死んだポケットの、火薬の夢。意欲、いらない。砂糖とミルクも。(センティメンタル、ミー2)#2factory64

2014-05-01 08:38:06
福間健二 @acasaazul

近づいてきた足音が止まる。だれが泣きだしたいのか。知りませんでした。引き返して理屈にならない言い逃れをくりかえすのだ。細部が爪と縫合の跡の、夜の入口の黒いガラスになにか映っている。ここにも人間がいる。少なくとも人間と名乗っている。(センティメンタル、ミー3)#2factory64

2014-05-02 09:03:57
福間健二 @acasaazul

何をしてきたのか。排気口からの風に問われる。へたくそなキス、へたくそな復讐、そして最後はへたくそな溝堀りだ。新しい情報のかわりに中也の詩集が捨てられている。ドアのむこうの、コピーの街。そうじゃない、いま通った街の方がコピーなのだ。(センティメンタル、ミー4)#2factory64

2014-05-03 08:50:08
福間健二 @acasaazul

ビー、ユアセルフ。アニーおばさんじゃなかったら、どんな純情な悪魔が言うのだろう。酒の匂う薄暗い片隅。貧しくて偏執症でも従属状態じゃない。富沢商店のミックスナッツ買っている。本物のぼく。ブレーキはどうした。故障した。ぶっつけたんだ。(センティメンタル、ミー5)#2factory64

2014-05-04 08:39:51
福間健二 @acasaazul

二日酔いと余震の、生産緑地地区。どうして相手のいやがることを言うのか。またどうして過剰に反応するのか。守勢にまわる植民地主義の音楽。自分の得意のトーンを守るだけの「私たち」、飽きられた作家。じゃまだって。いいです、連れていきます。(センティメンタル、ミー6)#2factory64

2014-05-05 08:37:48
福間健二 @acasaazul

きのう水をやったのに葉を散らしている。むずかしいのだ。パンフレットや書類の山のなかに。鋏からも新種のチューリップからも逃げたいのなら。相手がそれをするのは当然だという顔をしない。どんなことでも初歩からの、五月。郊外。お願いします。(センティメンタル、ミー7)#2factory64

2014-05-06 09:51:09
福間健二 @acasaazul

重い。硬い。あかない。入れない。「おまえはだれだ」の包囲網からどこに抜けるのか。目を閉じる戦争には飽きた。朝の、シダの丘。ラジオ、自転車、はにかみ屋の動物たち。取り返す手はわかってる。オール、オブ、ミー。投げるよ。きみにむかって。(センティメンタル、ミー8)#2factory64

2014-05-07 09:21:41
福間健二 @acasaazul

もっとセンティメンタルに、紙と葉。スモーキング、ブラウン。ちょっと甘い。人間の歴史の、二〇四頁。数千年ののちに。おとなと子どもの、ふたつの死骸をつつむ作業。もうすぐ終わる。ふたりで仕事に出かけ、ふたりとも帰って来られなかったのだ。(センティメンタル、ミー9)#2factory64

2014-05-08 10:19:00
福間健二 @acasaazul

ぼくのジグザグの線は雑草のように泣く。「愛していると言わなくていい」。酔った機械の、主張できない重心のなかに「ある日」のサックスが鳴って。きみへの最終出口。「いつまでも一緒にいると言わなくていい。いま、そばにいてくれたらいい」。(センティメンタル、ミー10)#2factory64

2014-05-09 08:04:04