授業か遊びか

ゲームデザイナー&シナリオライターの生田美和さんのゲームの話『授業か遊びか』のツイートまとめ
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生田美和 @shodamiwa

今日は、少しまとまって、ゲームの話を。たぶん、長くなりそうです。『授業か遊びか』――。

2014-05-19 20:34:20
生田美和 @shodamiwa

1)パラメータや技名、特殊能力や世界の危機など、RPGでは様々なものに設定がある。体力=HPのような、今となっては説明不要の記号だけで成立するゲームもあるかもしれないが、それでも、そのゲームならではの遊びを考えていくと、どうしても新規のオリジナル設定が必要になってくる。

2014-05-19 20:35:54
生田美和 @shodamiwa

2)しかし新しい設定は、当然、ユーザーさんが知らない知識だ。なので、ユーザーさんに知らせていく過程、知ってもらう時間が必要になる。例えば、「完全オリジナル言語で話すキャラ」を設定したとする。このキャラの台詞は、翻訳しないとわからない。では、その翻訳方法をどう教えていくのか?

2014-05-19 20:37:50
生田美和 @shodamiwa

3)『聖剣伝説レジェンド・オブ・マナ』のアナグマ語は、この「翻訳方法の学び」を巧みに導びく。アナグマ達と話すのが楽しいし、覚える言葉もシンプル。味わい深い話と相まって、独特の効果を生み出してる。ここの担当は、プランナー井上信行さん(@inouenobuyuki)。尊敬する大先輩。

2014-05-19 20:45:08
生田美和 @shodamiwa

4)アナグマ語のような、新しい言語設定には、「楽しんで覚えられる工夫」と「楽しんで使える工夫」の両方が必要になる。読むことがメインのAVGなら、辞書機能搭載&新ワード収集で、嫌われる設定ではないかもしれない。けれど、RPGではここまで工夫しないと、ユーザーの負担になってしまう。

2014-05-19 20:46:15
生田美和 @shodamiwa

5)ここでざっくり、RPGにおける設定の良し悪しを。その設定が『システムになる』、『マップギミックになる』、『イベント等で雰囲気作りに大きく貢献する』、『台詞で言う』。上から、松竹梅、没。「台詞で言う」は、まずやらない。なぜ台詞に頼らないのか?は、実例を上げていくとわかりやすい。

2014-05-19 20:47:32
生田美和 @shodamiwa

6)例えば私が担当した、『サガ・フロンティア』アセルス編の主人公アセルス。彼女は、妖魔の血を受け、半分人間、半分妖魔の半妖になってしまったという設定。物語では、人でも妖魔でもない彼女の苦悩と成長が描かれる。そして、この半妖の設定は、成長システムに乗っている。

2014-05-19 20:48:51
生田美和 @shodamiwa

7)人間の成長システムと、妖魔の、倒したモンスターを憑依させる独特の成長システム。アセルスは、この二つを併せ持つ。半妖設定は、バトルで体感できるものなのだ。この半妖の成長システムは、バトルプランナー小泉今日治さん(@DextroII)の手による。やはり、私が尊敬する大先輩だ。

2014-05-19 20:56:24
生田美和 @shodamiwa

8)もうひとつ、私が担当した『聖剣伝説LOM』の宝石泥棒編から、真珠姫とレディパール。彼女たちは、真珠姫で一人分、レディパールで一人分のモーションと顔グラを持つ。バトルの時だけ変身して、グラフィックや効果が変わる…というような一時的なものではない。

2014-05-19 20:57:41
生田美和 @shodamiwa

9)また、真珠姫はまったく戦ず、レディ・パールは最強と言われるほど強い。二人分のキャラデータを用意し、それを正反対の意味にする。このバトル要素があるからこそ、ユーザーさんはバトルを通じ、ダブルヒロインとの、守ったり、守られたりが体感できる。これが、システムに乗る設定。

2014-05-19 20:58:38
生田美和 @shodamiwa

10)次に、マップに溶けこむ設定の例。氷の滑り床は、マップギミックとして、誰もが思い浮かべるものだろう。上手く滑らないと、宝箱が取れなかったり、ボスに辿り着かなかったり。ここに、そのマップが凍りついた理由がうまく設定できれば、その設定は遊びの仕掛けと一体となった奥深いものになる。

2014-05-19 21:00:26
生田美和 @shodamiwa

11)もうひとつマップ例で、聖剣伝説シリーズの、ガラスの砂漠。一見、普通の砂漠だが、ところどころ、虹色の結晶が砂に埋もれる。この結晶は、ファンタジックな絵づくりのためだけではなく、かつて超高熱で焼かれた砂漠である――などの想像を促すものになっている。聖剣世界らしい設定だ。

2014-05-19 21:02:42
生田美和 @shodamiwa

12)「半妖です」とか「変身します」と台詞で言われるより、その特徴をバトルで味わいたい。「寒い地方なので凍ってます」とか「暑い地方なので砂漠です」と説明されるより、「邪竜を氷漬けにしたらしい」とか「古代大戦跡地」と噂されるダンジョンを冒険したい。これがゲームが求める設定だ。

2014-05-19 21:05:09
生田美和 @shodamiwa

13)まとめる。設定は「システムから起こす」か「システムになるもの」これが一番。次点で「マップギミックや世界観を助けるもの」。最後が「イベントで雰囲気づくりに大きく貢献するもの」。ユーザーさん相手に授業しなければ伝わらないような設定はRPGには合わない。ゲームは、遊ばせてこそだ。

2014-05-19 21:06:19
生田美和 @shodamiwa

以上、『授業か遊びか』でした。

2014-05-19 21:07:30
生田美和 @shodamiwa

ゲームの設定というと、「アニメで見た異能力をやりたい!」とか「映画の映像美を!」とか言う人もいるのですが、ゲームは眺めるものじゃなく、遊ぶものです。受動じゃなくて、能動です。どんなに見栄えがよくても、遊べなければ意味がありません。ゲームならではのものづくりをしたいですね。

2014-05-19 21:08:50