D-Day Destroyer #3

劉度 @arther456

◇◇◇◇◇◇◇ ←九十一式徹甲弾

劉度 @arther456

【D-Day Destroyer】＃３

劉度 @arther456

（これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss を使用していただけると大変ありがたいです。宜しければ暫くの間、お付き合い下さいませ）

劉度 @arther456

２１世紀、もはや『自衛』では耐えられないほど人類は逼迫していた。太平洋からは巨大生命体が現れ、それに乗じてイルカやペンギンが攻めてくる。地上には魔法の復活とともに居場所を主張するかのように怪物たちが蠢き、空の彼方からは不穏な電波が絶えず降り注いでいた。 1

劉度 @arther456

海上自衛隊改め、国防海軍。横須賀を本拠地とするこの軍事組織の旗印となるのは、ドリル戦艦『荒覇吐』。艦首に対巨大生物用のドリルを装備し、更に重厚な武装と装甲に身を包んだ、２１世紀の大艦巨砲主義を象徴するフラッグシップであった。 2

劉度 @arther456

「『湯島』より入電。第二次攻撃隊、発艦とのこと」「魔力反応、特に変化はありません」その『荒覇吐』CIC、艦隊の情報全てが集まる司令塔で、艦長はモニターを見据えていた。「……『シャングリラ』らしき艦隊は？」「見当たりません。攻撃隊も異常は見受けられなかったと報告しています」 3

劉度 @arther456

オペレーターからの報告を受け、艦長は溜息を付いた。横須賀第一艦隊、国防海軍の頂点を動かした相手が、肩すかしだったことに対する失望と、艦隊を失うリスクが消えたことに対する安堵だった。「『湯島』『宗像』に、引き続き航空攻撃を行うよう伝えろ」 4

劉度 @arther456

空母『湯島』と『宗像』に搭載されているのは、日本初の国産マルチロール機『閃空』である。二隻120機の航空機から撃ち出される長距離ミサイルが、深海棲艦の群れを近づけることなく爆砕するのだ。万が一その航空攻撃を乗り越えても、イージス艦『摩利』『金毘羅』そして『荒覇吐』が迎え撃つ。 5

劉度 @arther456

全くもって完璧な布陣だ。技術研究本部が開発した深海棲艦に対する決戦兵器『艦娘』など不要であった。数少ない霊能者の少女を人柱にする必要など感じない。「『出雲』の様子は？」「以前変わりなし、敵側面に回りこみつつあるようです」「そうか……」艦長がまたため息をつく。 6

劉度 @arther456

「やはり『シャングリラ』など存在しなかったか」３水戦を葬り去ったとされる敵艦隊には、理想郷を表すコードネームが与えられた。確かに存在すれば理想の兵器だろう。だがこの名前には存在しない理想郷という意味のほうが強く含まれている。彼は３水戦が敗北した理由を別のところに見ていた。 7

劉度 @arther456

それは油断、慢心だ。３水戦は先の日本海海戦で艦娘と共に大戦果を収めた。初めて艦娘を前面に押し出した戦闘で、Ｓ級大戦艦を撃破したのは確かに見事だ。だがそれは本来の３水戦の実力ではない。恐らく、あの時よりもっと少ない戦力でこの軍勢に挑み、結果全滅したのだろう。 8

劉度 @arther456

故に第一艦隊は同じ轍を踏まない。日本海海戦のような丁字戦法など狙わず、航空戦力による飽和攻撃をもって敵を「どうしました、『湯島』？」オペレーターの声が、艦長の思考を遮った。「どうした？」「いえ、急に向こうが騒がしく……ッ！？」 9

劉度 @arther456

CICに緊張が走った。航空レーダーが、魔力測定器が、モニターが、そして何より戦場に張り詰めた空気が異常を訴えかけていた。最初にその異常を言葉に出来たのは、レーダー監視員だった。「ゆ……『湯島』の戦闘機部隊が次々と消えています！」「バカな！？」思わず艦長が立ち上がる。 10

劉度 @arther456

レーダー上では『閃空』を示す青い点が、次々と消失していた。機械の故障？いや、オペレーターの様子がその希望的観測にNOを告げる。「『湯島』でも部隊の消失を確認しているとのこと！何かに、何かに攻撃を受けている模様！」だがレーダーに敵影は見当たらない。「出力上げろ！」「はいっ！」 11

劉度 @arther456

電波と魔力が更に微小な物体を見つけようと、強力に増幅される。そしてある一点を突破した時――レーダーに、無数の赤い点が現れた。CICに驚愕が走る。「これは……っ！？」「高度2000から6000に魔力反応多数！数は……ひゃ、100！？」「モニターに映せ！」 12

劉度 @arther456

すぐさま、前方の空がモニターに映し出される。丁度、一機の閃空が火を吹いて海に落ちていくところだった。よく見るとその周りに、鳥ほどの大きさの物体が飛んでいた。それの先端部が時折マズルフラッシュのように点滅する度、戦闘機が火を噴き、失速して落ちていく。 13

劉度 @arther456

「戦闘機の式神だと……！？」艦長の口から驚愕の呟きが漏れた。技研では式神を航空機として運用する空母型艦娘の研究が進められていると聞いたことがある。だがそれが既に実現し、しかも敵によって運用されているとは。「『宗像』の戦闘機隊は何をしている！援護に回れ！」 14

劉度 @arther456

一機の戦闘機が式神に向けミサイルを放つ。だが当たらない。全長50m以上の深海棲艦相手に作られた対艦ミサイルを、空中で旋回する鳥のような式神に命中させるなど無理な話だった。そして式神の一隊が、海面スレスレを飛行しながら『湯島』に向け飛行する。 15

劉度 @arther456

「いかん、避けろォ！」だが艦長の声は届かない。式神の腹部から何かが海中に投下され、白い筋を残して海中を進む。あの軌道を彼は知っている。士官学校時代、映像データで見せられた古い時代の戦闘映像で、米軍のレジプロ戦闘機が行っていた攻撃方法。航空雷撃。 16

劉度 @arther456

凄まじい轟音が『荒覇吐』のCICに届いた。『湯島』の側面に直撃した雷撃が装甲に穴を穿ち、更に中に搭載されていた航空機用の燃料に引火、大爆発を起こしたのだ。「くそっ……対空戦闘用意！」「どうするんですか！？」「何でもいい！対空火器に使えるものは全て使え！」 17

劉度 @arther456

『摩利』『金毘羅』そして『荒覇吐』が対空攻撃を開始する。だがその精度は荒い。空の敵など、ましてや対航空機戦闘など、国防海軍は考えていなかった。彼らはやはり異種生物から国を守るための軍隊であり、人類同士や、人類の戦術を知る相手との戦いに創られたのではなかったのだ。 18

劉度 @arther456

―― 19

劉度 @arther456

「前方にＤ級駆逐艦３隻！」「ウチに任せな！」富士の報告を受け、敷島が背中の砲塔を動かした。「方位よし、距離もよし……喰らえぇっ！」２基の30.5cm連装砲が火を噴き、紋付き袴が翻る。放たれた砲弾は、吸い込まれるように前方の敵駆逐艦に命中した。 20

劉度 @arther456

２隻のＤ級が爆発したが、残り１隻がこちらに向かってくる。「朝日！」「うん！」黒いパーカーを羽織った小柄な影が、私の声に応じて飛び出す。背中のリュックから対艦ロケットランチャーを取り出し、砲撃。残ったＤ級が、一瞬で爆炎の中に沈んだ。「敵艦隊の撃破を確認！」 21

劉度 @arther456

『よし、そのまま進撃しろ』後方、『出雲』から提督の通信が入った。『空母から第二次攻撃隊が出てる。巻き添えになるんじゃないぞ？』「わーってるって！心配性ねえ、もう」朝日の頭を撫でながら答える。この子は一々褒めないとすぐに拗ねてしまうのだ。 22