@Clairherlion 「だが、勝ったんだろう?」 布団に座ったまま、女は声をかける。自分の勝負であるかのように、喜びながら。勝負をするからには、勝たなきゃ意味がない。 「なら、もっと誇るべきよ。その結果を掴んだのは、お前の力なんだから」 最後に勝ちを狙って、何が悪いという。
2014-05-24 14:04:16手に取ると同時、震える機械剣が、ぴたりと静止した。 「――RaR,misio 『主(キュエーネ[queene]』」 異国の、言葉。持ち上げられた『剣』の歯車が、がちゃりと回る。 「認識。クレアーヘリオンは、『決闘』に勝利しました。よって、キュセルの持ち主は、クレアーヘリオンです」
2014-05-24 14:11:42@tfhMichelle しずしずと歩み寄れば、ぺこりと頭を下げてくる女性人形。玩具のように小さな背丈から、人間染みたそれになっても、玉繭色の白い髪は相変わらず腰に届くまでに長い。少年に向けて恭しく頭を垂れる際、女性人形の髪は絹糸のカーテンのようにさらりと揺れて。
2014-05-24 14:30:19@tfhMichelle 「おはようございます。……はい、Cです」にこ、と淑やかに微笑む。「ミシェルさまの願いもあって、皆が集う最後のいとまに、こうして食卓をご用意することができました」「御味のほうまでは、きちんと再現できているか自信がありませんが……」悩ましげに言いよどんで。
2014-05-24 14:31:13敷布の上に仲睦まじく居るふたりのもとに、女性人形が静かに歩み寄る。エプロンの下にある黒いスカートの裾が、行儀悪く翻らないように、丁重な所作で。「アステーリアさま、牡丹さま」人間と同じ背丈に変わり、声も仕草もすべてが大人びた人形が、慎ましやかに声を掛けてくる。
2014-05-24 14:37:08ふたりの前にやって来ると、花びらが舞い降りるような静かさで、両膝をついて座り込み。「選定の誓いを交し合ったのですね。おめでとうございます」床に指をつきながら、恭しく頭を垂れた。
2014-05-24 14:37:13「やーったー! 勝ったー!」 歓声を上げて、満面の笑みで、まるで子供がぬいぐるみにそうするように、機械じかけの剣を両腕で抱きしめる。一度は自分に致命傷を与えた凶器。その柄に頬をすり寄せるように。 他人事ではないかのように喜んでくれる牡丹に、勝ち取ったキュセルを抱きしめながら頷く。
2014-05-24 14:54:52彼女に対しては、自然と態度が改まった。 「はい、牡丹。私が、はじめて戦って得た勝利です」 誇れと言われれば、そわりと落ち着きをなくして。 「……これは、私の『誇り』になるでしょうか」 僕はまだ、『誇り』をよく理解できていない。
2014-05-24 14:54:58「楽しみにしております」 浮かぶ笑みは楽しげに、くすりと笑ってすらみせて。 「それは何よりです。アステーリアも魔力は十二分に戻りました」 小さく首を垂れて、また上げて。辺りのやり取りに耳を傾けながら、近付いてくる人形に、一層人間味を帯びた笑みを向け、上半身を軽く倒すような礼をし。
2014-05-24 15:07:14「是。ありがとうございます、C」 頭を垂れた人形に顔を上げるよう言ってから、向けた瞳は橙を灯して柔らかく弧を描いて。 「――C、変わりましたね」 外見の変化では無く、内面を指して。書は微笑みを湛えるまま。
2014-05-24 15:07:18「これもまた、<改竄>に伴って変化した仮の姿。時が過ぎれば、もとの姿に戻ります――」そう丁寧に返してから、相手の言葉に秘められた指摘――内面が変わったという意にはたりと気がつき、思わず「あ」と声を洩らして。
2014-05-24 15:17:37「す、すみませんっ。そ、そういうことでは、ないのですね! あ、は、はいっ、えぇ、はいっ。Cは変われました!」行き場を失った人形の両手が、顔の近くであわあわと所在なさげに蠢いて。顔に朱を走らせながら、わたわたと恥ずかしそうにしている。
2014-05-24 15:17:42くすくす、と小さく笑い声すら立てて書は慌てる人形の玉繭色の髪を、落ち着かせる意味も含めて、撫でて。 「良い変化と視えます。C、貴女はもっと自信を持って良いかと」 橙は虹へ移ろい、微笑みはままに人形の硝子の双眸を見つめた。
2014-05-24 15:30:28@b_astrologia なでなでとされれば、一瞬は「はわっ」と申し訳なさそうな表情をして俯いていたが、すぐに大人しくなって静かに撫でられて。「……心身ともに<改竄>された今でなら、想いを告げられそうと思い立ち、こうして皆さまのもとを廻っている次第です」
2014-05-24 16:07:25@b_astrologia ちら、と上目遣いに星の乙女を窺った。色の移り変わる瞳の色は、深みがあって、とても綺麗だと思えて。そんな瞳と、感情表現は淡白なのに温かみを感じる面持ち、見つめながら。静かに語る。「アステーリアさま」
2014-05-24 16:07:31@b_astrologia 「虚ろなるCを打ち砕くきっかけを担ってくださった、あなたさまの星の煌きには……どう感謝を述べれば良いのか分かりません」ふる、と小さく首を横に振って。申し訳なさそうに目を細めながら。「そしてあなたさまを傷つけてしまったことを、詫びなくてはなりません」
2014-05-24 16:07:36@b_astrologia 「あれもまた、わたくしの本心の一部であることは、揺るぎない事実だからです」「神具として惹かれた部分もございましょう。けれどもあなたさまの心の煌きは、Cにとっては胸の内に輝く星だったのです。尊いまでに」
2014-05-24 16:07:48@b_astrologia 「あなたさまに照らして欲しかった。あなたさまの傍にいたかった。あなたさまに消えて欲しくなかった、離れたくなかった。……そんな想いが、虚ろに利用されてしまったのだと思います」しゅん、と眉根が下がりつつ。
2014-05-24 16:07:56人形が得た大人びた雰囲気も、やはり表向きにしか過ぎないもの。見目は星の乙女と同じか、あるいはそれ以上だと言うのに、人形の表情はうぶな少女のように不安げで。「アステーリアさま」ゆる、と人形が顔をあげる。緊張に張り詰めた顔。口をぱくぱくとさせながら、何かを紡ごうとしていて。
2014-05-24 16:08:53膝の上に置いて、かたかたと震える手に、ぎゅっと力を込めながら。一度、大きく息を吸い込んで。胸の中にある機巧仕掛けの心臓が、とくとくと煩いほどに鼓動するのを感じた。胸に宿る星の脈動、その熱さに後押しされるようにして。人形はゆっくりと、想いを唇にのせる。
2014-05-24 16:09:28想いを告げた、告げてしまった。心の内を不躾に晒してしまった恥ずかしさに気がついて、かあっとした熱が人形の全身に奔る。ぱっと目を逸らして俯き、ぎくしゃくと落ち着かない様子で視線をあちこちに向けながら。
2014-05-24 16:09:43「Cが勇者であれば、あなたさまを選びたかった。アステーリアさまが勇者であれば、Cはあなたさまに選ばれたかった。どの願いも、今はもう叶わぬことではありますけれども……」
2014-05-24 16:09:53顔を上げられは、しなかった。声の震え、必死に押し殺す。つとめて、すまして。淡々と。大人らしく。――けれど、そんなこと、できるはずもなくて。
2014-05-24 16:09:59