街の散策(運び屋さん)

主人が末娘と運び屋さんのお宅に行きました。
1
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

「文乃、雛。私は今日は店をあけるから、いろいろ頼んだよ。運び屋に行って、くろにあさんのご機嫌伺いをしてくるからね。いらっしゃるといいんだが…」 店主は桃の髪を梳いてやりながら、ううんと唸った。

2014-05-23 08:54:35
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

「そうだね、雛。お土産に果物を持って行こう。枇杷に無花果に杏に…え、もって行き過ぎかい?それに無花果は潰れやすい?…そうだねぇ。なら、枇杷だけ持っていく事にするよ」 主人は桃の髪を結い上げて、花の簪でまとめてやった。 桃は嬉しそうに頭を振って、簪のゆれ具合を確認している。

2014-05-23 09:19:51
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

桃はトン、と主人のひざの上から下りて、振り返る。 「じゃぁ、桃と出かけてくるからね。後は頼んだよ」 主人はそんな桃の肩に手を置いて、店を出た。

2014-05-23 09:23:33
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

主人は少女と町外れまで歩く。 「りんご飴」「メレンゲ」「劇場」「浮き輪」「轍」「ちゅ、ちゅ…ちゅ…ちゅろす?」 朝の日差しを浴びながら。 ゆっくりしりとりをしながら。

2014-05-23 10:23:44
運び屋 @hakobiyasan_bot

『誰かが歩いている…幸せそうな足音を。草木がざわめいている、これは知人か。店は開けっ放しだったな……着替えなければ。手袋も変えなければならない。掃除とお茶の準備を』 (男は目を耳を澄まして遠い足音を察知した。急いで手袋を填め変えると、箒とティーカップに手を翳して働かせ始めた)

2014-05-23 10:28:24
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

@hakobiyasan_bot 「さて、此処のようだね。」 町の外れのお屋敷の前に主人と少女は到着した。 「この距離なら、桃にお使いを頼む事もできそうだねぇ」 主人は笑いながら、門を叩く。 「えー…運び屋さんはいらっしゃいますかー?」

2014-05-23 10:29:21
運び屋 @hakobiyasan_bot

@Couic_Couturier "やぁ、お客様ですか。主人を今呼ぶよ。ちょいと待っておくれ。それにしても見ない顔だね、お初かな?ああいや、僕には関係がなかったね。いやすまないすまない" (門の上で眠っていた猫が大きな瞳で客人を捉えると、目を細め眠そうにしながらにゃあと鳴いた。)

2014-05-23 10:34:40
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

@hakobiyasan_bot 「あぁ、お前さんは綺麗な目をしているねぇ。おはよう、宜しく頼むよ…あぁ、桃。怖がらなくていいよ。今はお前のほうが大きいのだから」 主人はニコニコと笑いながら、猫に驚いた少女の頭をなでてやる。

2014-05-23 10:41:30
運び屋 @hakobiyasan_bot

@Couic_Couturier "人にしては良いこと言うねえ。まあ僕の目は宝石で出来ているから、見惚れて門なんかにぶつからないでねぇ。おや、その可愛いお嬢さんは鼠ちゃんかい。残念だけど僕は鼠を食べる種じゃないんだよねえ…"(猫はくるりと回転しながら地面に着地をして笑った)

2014-05-23 10:44:23
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

@hakobiyasan_bot 「あぁいやいや、ご忠告ありがとう。気をつけて歩くよ。…ほら、猫も桃に意地悪してこないだろう?シャンとしなさい。」 主人は励ますように少女の背を優しく叩いて、そして門を開いた。 「ウチの者が失礼してすまなかったね。案内をお願いしてもいいかな」

2014-05-23 10:55:11
運び屋 @hakobiyasan_bot

@Couic_Couturier "それは良いけど、勝手に門を開けない方が良いよ。ほら、あれ。お客さんも死にたくないでしょ、退いてて" (猫は土埃を払って立ち上がると、シルクハットを深くかぶってにやりと微笑んだ。指先で蠢いているのは鮮やかな緑のツタ。猫は杖を片手に門前に移動した)

2014-05-23 11:01:18
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

@hakobiyasan_bot 「これは申し訳ない。」 主人は少し照れくさそうに頬をかき、頭を下げた。 「桃や、紳士さんだねぇ」「しゅっとしてはるね、父様」 少し離れて猫の様子を見る。

2014-05-23 11:10:22
運び屋 @hakobiyasan_bot

@Couic_Couturier "そんなに褒めても御茶位しかご馳走してあげられないよ。ふふ、有難く頂いておくけれどね。" (猫は嬉しそうにヒゲをぴんと立たせると、ツタに向かって杖を振りかざす。杖先からは何か光るものが飛び出したかと思うと、いつのまにかツタは消えていた)

2014-05-23 11:17:33
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

@hakobiyasan_bot 「…くろにあさんのトコの人はみんな紳士で魔法使いみたいだね…」 ほう、と主人は息を吐いた。 少女も驚いた表情でツタと杖を交互に見ている。

2014-05-23 11:24:40
運び屋 @hakobiyasan_bot

@Couic_Couturier "これは魔法じゃなくてただの機械だよ。風を利用しただけのね…術を使えるのはご主人様だけ。紳士で美しいってのは間違っちゃいないけどねえ……!" (片目を瞑って見せ、杖を地面に突く。すると下から旋風が巻き上げて猫の来ていたスーツを揺らした)

2014-05-23 11:31:06
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

@hakobiyasan_bot 「はは、面白いおヒトだ。…これでお店にいけるのかい?私たちは今日は、くろにあさんのお顔を見に来ただけなんだけどね。彼のお加減は如何だろうか。無理をしていないといいのだけれど…」

2014-05-23 11:38:00
運び屋 @hakobiyasan_bot

@Couic_Couturier "僕はしがないネコさ、客人。ご主人様なら中で待っているだろう…さ、遠慮なく入っておくれ。……ああ足元に気をつけて、特にそこの可愛いお嬢さん。此処の植物は女好きなんだ" (猫がトントンと杖で門を叩くと、音もなく門は開いて客人を出迎えた)

2014-05-23 11:48:06
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

@hakobiyasan_bot 「そうかい。親切にしてくださって、ありがとうネコさん。…さぁ桃、おいで」 主人は少女の手を握ると、開かれた門の内側へ入っていった。

2014-05-23 11:55:41
運び屋 @hakobiyasan_bot

@Couic_Couturier "ああ、良いんだよ。いってらっしゃい。帰る時には一声掛けておくれ。僕は門の上にいるからさ" (猫は歩いていく客人の背を見つめ、ハットを取って一礼する。客が見えなくなると、大きな欠伸を噛み殺して門上に戻った。猫は杖を抱え、またうとうとと眠り始める)

2014-05-23 12:00:28
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

@hakobiyasan_bot 枇杷の入った紙袋を少女に渡して、手を繋いだまま主人はあいた手でコンコン、と扉を小さく叩く。 「こんにちは、野鼠和裁の主人です、ネコさんに門を開けてもらったんですが…」

2014-05-23 12:03:39
運び屋 @hakobiyasan_bot

@Couic_Couturier いらっしゃいませ。綿太様。本日は私のためにわざわざ御足労賜りましたこと、誠に感謝しております。さ、どうぞ……古びた屋敷ですので、特にこれと言ったものはございませんが…(男は扉を開け微笑んで一礼すると、二重扉の前に立って何かを囁いた)

2014-05-23 12:15:04
運び屋 @hakobiyasan_bot

「新入りが生意気なんだよ、それでさぁ…」 業務を放棄してお友達とご歓談とは…随分良いご身分ですねえ…? 「せ、先生!だってルヴァが俺っちのことを」 貴方は優秀な蜥蜴ですよ、アルタ。ですから、もっと自信を持ってあの子に接して差し上げなさい。宜しいですね? 「お、おう。わかったよ…」

2014-05-23 12:18:47
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

@hakobiyasan_bot 「あぁ、くろにあさん。お会いできて良かった。いやいや、大きなお屋敷で驚きました。」 ほっとしたように主人は微笑むと、頭を下げた。同様に少女も頭を下げる。 「こんにちは。くろにあ様、お加減はいかが?」

2014-05-23 12:22:54
運び屋 @hakobiyasan_bot

@Couic_Couturier 光栄にございます……ええ、貴女様方のおかげで随分と良くなりました。御礼申し上げます。さ、こちらへ…お好きな場所へお座り下さいませ。お茶を用意して参りますので。 (二重扉は蝶番を軋ませ開くと、奥に部屋が並んでいた。男は開いたドアの前まで歩いていく)

2014-05-23 12:31:42
仕立て屋『野鼠和裁』 @Couic_Couturier

@hakobiyasan_bot 主人と少女は、誘われた部屋へ進み、いすに腰掛けた。 「おっきいね、父様。ネコさんも怖くなかったわ」「それが見極める目を養うという事だよ」 少女の言葉に、主人は嬉しそうに頷いた。 「桃を連れてきてよかったね」

2014-05-23 12:52:54