「千の想いを」~第三章・境界・固定イベント「演習」#7~
- mamiya_AFS
- 1227
- 0
- 0
- 0
仲間達と離れた矢先に、颯爽と前方に立ち塞がる2人の艦娘を視認し、夕張は傷の付いた頬を歪める。 決着を付けたいのは向こうも同じ、という嬉しさが、満身創痍でありながら1対2に再度挑むという絶望感すらも塗り替える。 つまりは『相手として不足無し』と捉えられた、という事であるから。
2014-04-05 20:36:56夕張は炎を恐れる。 あの日の事を思い出すから。 夕張は失う事を忌む。 あの日の事を繰り返したくないから。 だけど。 夕張は胸に宿る炎を嫌わない。 あの日に受け取った想いだから。 夕張は戦う事を恐れない。 艦娘となった今では。 あの日に交わした約束の一部となっているから。
2014-04-05 20:43:01息を吸い、深く吐き出す。 身体も頭も痛みと疲労で休息を求め喘いでいる。 自慢の武装もダメージが深刻で、武器というより荷物と言える。 向かい合う相手は2人。それも単独で充分に強いと来ている。 だけど夕張は諦めない、絶望しない。 そうあの日に教えられたから…!
2014-04-05 20:47:30五十鈴が迅速に安全地帯をつくったものの、2人は夕張が与えたダメージに加えて機雷による被害も目に見えて受けている。にも関わらず、夕張と同様に諦め等の後ろ向きな感情はその瞳からは伺えない。 2人同時に1人を相手にする、という背徳感すらも見えない。 それが、何よりも夕張を奮わせる。
2014-04-05 20:52:21夕張が頷き、呼応するように敵対する2人が風となりその姿を現象からかき消す。左右に散開するのではなく、榛名が一気に詰め寄り、夕立は小刻みにブースト移動で相手のタイミングを外しつつ夕張から見て時計回りに回り込む。
2014-04-05 20:56:14遠巻きの位置からの射撃と肉薄しようとする榛名の砲撃を掻い潜り、冷却を終え辛うじて動く武装で撃ち返しながら夕張は思考をフルに回転させる。 照準がまともに利かない分を、自らの計算と勘だけを頼りにまともに扱っている時点で、既に彼女も怪物と言えた。
2014-04-05 20:59:30破壊できないまでも照準機能は狂わせた筈の武器からの応撃にも、夕立は今更驚かなかった。むしろ、それくらいやってもらわなければ困る、とすら感じている。自分には逆立ちしてもできない事を、相手は軽くやってのけると。それ故に全力で戦い、必ずや乗り越えてみせるとマフラーを巻いた怪物は考える。
2014-04-05 21:02:35黒髪を翻し、もはや海戦とは思えない程に至近となった距離での攻撃をかわし、榛名は夕張を見据える。 戦艦であり、駆逐艦にも負けない速さを誇る彼女は自身の能力を過大評価したりしない。いつぞやの事件で足りない部分は周りに頼る事を覚えた彼女は、夕立との共闘を自然と見た。 その価値が、ある。
2014-04-05 21:09:06@Haruna_not @tiyodadayo タイミングを外せば負け。問題は、互いに間合いを癖や間合いは把握済、か。
2014-04-05 21:06:06さっきの時点では優位に立っていた『相手の癖を利用する』という面が、今の2人には通用しない事を夕張が理解する。2人は間抜けではない、読まれている事に気付いたのならば、そうされないように戦うだけだ。 夕張の選択肢が、榛名の接近と夕立の位置取りに併せ、みるみる減っていく。
2014-04-05 21:13:22得意の足技で攻めるも、決定打に欠ける。夕張と常盤から貰った損傷は、確実に榛名の体力と身体能力を奪っていた。 夕張も創痍なのは間違いないが、長期戦が有利なのか不利なのかすら、もう3人の誰にも把握できない。 ならば彼女らは何を考えるか。
2014-04-05 21:16:00@Yubari_Yasaka @tiyodadayo そうね……お互い弾も残り少ない。砲もまともに動かない、照準なんて合わないでしょう? 決めるなら…… この一撃に全てを賭けるわ
2014-04-05 21:09:51@tiyodadayo ……(決めるならこの一撃、威力も機動力も榛名さんのほうが上…普通なら夕張さんに勝ち目はないけど…)
2014-04-05 21:13:09足元で散る水滴を置き去りにして駆ける2人が計らずも同時に決意する。 短くは無い付き合いと、極限下の応酬を繰り返した事により研ぎ澄まされた精神で以って、夕張は相手の意を汲み取る。 どの途、彼女もそうするしかない。
2014-04-05 21:18:55隠していたわけじゃない。 夕張には最後の武器があった。 武器と呼ぶには『それ』は艦娘全体の中で比べるのならば粗末な部類だろう。 何よりも『それ』は相対する2人のまさしく得意分野であり、遠く及ばない。 だからこそ―― 今は切り札に為り得る…!
2014-04-05 21:22:31