魔法使いは君だった~傷を負った魔法使い

君の涙と、この本と、すてきな相棒を連れて 2014/3/14~の妄想です。 本人とはまったく関係のないフィクションです。
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cyk @nmnmab47

ねぇ、聞いてる?と怪訝そうな声が聴こえて、すかさずごめん、考え事してた、と返した。あれから俺は別の大学に通い、"元からいた"学生として過ごしている。前いた大学で、俺はなかったことにした。そんなの、魔法を使えば簡単なことだった。

2014-03-04 00:00:57
cyk @nmnmab47

煙草を灰皿に押し付けてから、ソファに座って俺の肩にもたれている女の子のあごを少しだけ持ち上げて口づける。顔を離すと、まだ足りない、みたいな表情をする。俺はその子に少しだけ笑いかけて、今日はもう帰って、と言う。

2014-03-04 00:11:27
cyk @nmnmab47

玄関でヒールを履いたその子は少しだけ背伸びをしてキスをしたけれど、それでお利口に帰っていった。指を一度パチンと鳴らすと、その辺に落ちている長い茶色の髪の毛が浮き上がる。もう一度鳴らすと、音もなくそれが燃えて消える。別の女の子が来たとき、やいのやいのと言われるのが面倒だから。

2014-03-04 00:17:42
cyk @nmnmab47

水をコップ一杯飲んで、携帯に目をやると何人かの女の子からの連絡を示す赤いマーク、明日でいい、と画面を暗くしてベッドに倒れこむ。ネックレスを外し、それを指に絡ませて、ペンダントトップにキスをする。夜の光できらりと光るそれは、しょっぱいような味がした。君のこと、ずっと、忘れてない。

2014-03-04 00:30:06
cyk @nmnmab47

君と、最後に一緒にいた日のことを思い出す。俺は君のおかげで生きている。君の涙と魔力で生かされている。君の涙が俺の体の中で今も巡り巡っているような気がする。きっともう一度君に会ったら、俺の体の中の君が強烈に君に惹かれてしまって、きっと、もう離れられなくなるだろう。

2014-03-04 00:40:38
cyk @nmnmab47

こうして眠りに落ちて、それから昼くらいになってから大学に行き、サークルに行く。いつものサイクル。今日の夜は他の大学との合同でのサークルの飲み会だった。大所帯だからふらっと行ってお金を出さずにふらっと帰れる。輪から外れて煙草を吸っていたら、2人組の女の子に声をかけられた。

2014-03-04 00:48:54
cyk @nmnmab47

みんなと飲まないんですか?と声をかけられる。あんまりうるさいとこ得意じゃないんだ、と言うとなにそれ、矛盾してますね、じゃあ来なければいいのに、と一人の女の子が笑う。その隣の子が、きっと俺に気があって、友達に協力してもらって話しかけてきたことはすぐ読めた。

2014-03-04 00:55:32
cyk @nmnmab47

ただ酒飲みたいだけだから。これ、みんなには内緒だよ、と笑いかける。それからその2人と連絡先を交換して、そろそろ帰ります、と席を立った。今回も誰にもばれずに帰ることができた。帰路で携帯が鳴って確認すると、あの2人からだった。

2014-03-04 01:03:39
cyk @nmnmab47

あの傍にいた方の子から、最後にまた一緒に飲めたらいいですね、とメッセージがあって、そうだね、と返す。そこでやりとりが終わった。家に帰って、シャワーを浴びている間に別の女の子から連絡が来ていた。近くに来たから寄っていい?って。いいよ、ついでに煙草買ってきて、と返事をした。

2014-03-04 10:18:08
cyk @nmnmab47

帰るね、という声がして目が覚める。布団から腕を伸ばして、女の子の首元に回す。そのままキスをする。口紅とれる、と言ったけど顔は全く嫌がってない。じゃあね、と玄関まで見送って鍵を締める。トースターに食パンを2枚入れてダイヤルをひねる。煙草の火をつけて、焼けるまでの時間をつぶした。

2014-03-04 10:32:59
cyk @nmnmab47

パンが焼けて調味料の棚から瓶をひとつ拾って食卓に向かう。瓶を見ると残りわずかだった。新しいの買い忘れてた…最近は魔法使いも楽できるようになり、毎朝食べなければならない1匹の蜘蛛を、この瓶の中の黒い粉3振りで代用できるようになった。不味いけど魔力の維持には欠かせない。

2014-03-04 10:44:19
cyk @nmnmab47

とりあえず電車に乗って街に出る。路地に入って映画館の前を過ぎて少しのところにある建物の地下に入る。普段はバーとして営業しているが、ここのママは魔女、蜘蛛の粉を買って少しだけおしゃべりして店を出た。暇だし映画館でも寄ってくかな、と思いながら階段を上がり、駅の方向へと歩みを進めた。

2014-03-04 11:47:33
cyk @nmnmab47

あの、と後ろから声がして肩を叩かれる。振り返るとその声の主と目が合った。やっぱり、カラスくんだ!と笑う金髪の男に、あの、どちらさまですか、僕急いでるんで、とその場を立ち去ろうとする。待って!僕です!あの、悪魔に取り憑かれた!…男はガオーと怖い表情をしてその時のことを再現した。

2014-03-04 11:53:34
cyk @nmnmab47

いや、急いでるんで、と一礼してから逃げるように歩きだす。一瞬の間が空いて背後から、あの子、まだカラスくんのこと探してるんです、と声がした。そのまま歩き続けると、わわ、ちょっと待って!と腕を掴まれた。仕方なしに、俺、お前にもう一度会う機会があったら殴ろうと思ってたんだ。と行った。

2014-03-05 21:55:26
cyk @nmnmab47

男は、暴力はやめて!と目をぎゅっと瞑って両手を挙げた。殴らないよ、と言うと目をゆっくり開いた。お茶しよ!もちろん、おごるからさ、と言うと半ば強引に駅の中にあるコーヒーショップへと連れて行かれた。席につくと、お互いの様子を伺って、飲み物を飲んで、むず痒い沈黙に包まれた。

2014-03-05 21:59:55
cyk @nmnmab47

いま何してるの?、大学生、どこ大?、……教えません、そりゃそうだよねー!…魔女のお店でなに買ったの?、見てたんですか、ごめんね、…蜘蛛の粉です、じゃあまだ魔法使えるんだね?、はい、……あの子のおかげだよね?、……話したいことは何ですか、いや!ごめん…怒らせた?、いや別に

2014-03-05 22:08:26
cyk @nmnmab47

どうして、あの子の前から急にいなくなったの?と尋ねられる。すぐに、あの子、僕のことなんて嫌いになったでしょう、と答える。考えると泣きそうになるから。そんなことないです!いまでも君のこと大好きです!とすぐ大声で返ってきて周囲から好奇の視線を浴びた。

2014-03-05 22:35:53
cyk @nmnmab47

傷つけたことには変わりないですから、と席を立とうとする。すると、傷ついたのは君のほうでしょう、いまでも傷ついたままなのは君だけだ、もう彼女は大丈夫、と言った。俯いてから金髪の男の目を見て、ごちそうさまでした、とその場を立ち去った。相手は追いかけてこなかった。

2014-03-06 00:08:03
cyk @nmnmab47

そわそわしながら電車に乗る。好きな作家の新刊が出たのだ。飲み会までの時間の暇つぶしにしようと考えていた。本を読むのに夢中で飲み会をドタキャンしても後味悪くないメンバーだとわかった上の行動だ。書店の新刊コーナーに平積みされたハードカバーを一冊手に取る。

2014-03-23 01:19:51
cyk @nmnmab47

あ、あのう、と声をかけられる。この間もこんなことがあったような…?と思いながら顔を上げると、深緑色のエプロンを身につけた、ポニーテールの女性店員だった。彼女が、この間の飲み会の、と絞り出すような声で言う。ああ、ふたりで声かけてくれた子、と言うと、はい!と華やかな笑顔になった。

2014-03-23 01:29:05
cyk @nmnmab47

君、本屋さんだったんだ、と言うと、そうです!その作家さんいいですよね、と伏し目がちに俺の手元を指差した。もしかしてもう読んだ?と聴くと、あともうちょっとで読み終わりますよ。今回のはヒロインにイライラしてたらいつの間に最後まで読んでました、と笑った。

2014-03-23 08:54:15
cyk @nmnmab47

そうか、じゃあ俺もヒロインにイライラしながら読もうかなあ、とページをペラペラとめくると、わたしの主観なので…!と手を振った。その仕草を見て目を細めると、会話がぱたりと途切れた。それじゃあ、と彼女が言いかけたタイミングで、俺が今日何時までバイトなの、と声をかけた。

2014-03-23 09:11:14
cyk @nmnmab47

…6時までですけど、と遠慮気味に答える。じゃあそのあと飲み行こ、と言うとえっ、ほんとですか、全然おっけーです、むしろいいんですか、とあからさまに取り乱していて、なんだか可愛い。終わったら連絡して。それまでこの本読めるだけ読んどく、とだけ言って彼女に背中を向けた。

2014-03-23 17:31:33
cyk @nmnmab47

俺さ、前付き合っていた子と訳あって別れなくちゃいけなくなって、でも、まだ好きで。本当はだめなのはわかってるけど。だから俺、いっつもさみしいんだよ。……こんなのは、俺のいつもの決まり文句だった。途中まで本当で途中から嘘の話。この話をすれば、どの女も代わりのポジションに収まりたがる。

2014-04-18 19:25:08
cyk @nmnmab47

本屋さんを飲みに呼んで、本の話や好きな映画の話、大学で何を勉強してるかを話し込んで、ちょっと酔っ払ったふりをしてあの話を持ち出した。彼女は、どんな事情かはわからないですけど、わたしでよければいつでもお付き合い、っていうか、なんだろ、本の話しかできないけど…と答えた。

2014-04-18 19:29:36