魔法使いは君だった~傷を負った魔法使い

君の涙と、この本と、すてきな相棒を連れて 2014/3/14~の妄想です。 本人とはまったく関係のないフィクションです。
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cyk @nmnmab47

それで充分だよ、ありがとう、と言うと、彼女は少し引きつったような笑顔を見せた。今までの女の子とはちょっと違う感じ、簡単じゃないな。グラスに残った酒を飲み干して、そろそろ、行こうか、と声をかけた。彼女もあわてて自分のウーロンハイを飲み干した。

2014-04-18 19:55:16
cyk @nmnmab47

外に出ると彼女は、はい、と二千円を手渡した。いや、いらないよ、俺が誘ったから、とやんわり突き返すと、納得いかないような顔でお札を財布に戻した。家どのへん?と尋ねると××の駅の近くです、と言う。あんまり飲んでいなかったから口ぶりはしっかりだ。

2014-04-18 20:09:03
cyk @nmnmab47

じゃ、駅まで送るよ、と声をかけて歩き出した。駅前の喧騒のなか、2人ならんで歩くには少し狭い歩道。腕と腕が触れそうな距離で、言葉は交わさないままに彼女の方が慎重にその距離を保っていた。気まずくなったように彼女が、どうしていきなり誘ってくれたんですか、わたしを、と切り出した。

2014-06-03 18:17:32
cyk @nmnmab47

やっぱり迷惑だった…?と彼女の顔を覗き込むとま、まさか!と慌てる。俺あんまり本のこと話せる友達いないなーって思ったんだよ。君だけかもね、と目線は前を向いたまま言った。特別扱い、されるの好きでしょ。女の子って。横目で彼女の方を見ると、頭の中を整理しているように目を泳がせていた。

2014-06-03 18:24:55
cyk @nmnmab47

駅の入り口について、気をつけてねと手を振った。彼女は今日はありがとうございました、と一礼して同じように手を振って改札の方に歩いていく。と、突然何かを思い出したように立ち止まって少しの間その場に留まって、彼女の手に握られていた定期券を鞄にしまった。振り返ってこちらへと駆けてくる。

2014-06-03 18:40:17
cyk @nmnmab47

「あの、なんかわかんないんですけど、不安なんです。戸塚さん、すごいさみしそうな顔してるし、いやわたしがどうこうじゃなくて…その、前お付き合いされてた方のことで…戸塚さんがどっかこわいとこに行っちゃうんじゃないかとか……なに言ってんのって感じかもしれないけど、心配なんです」

2014-06-03 18:43:42
cyk @nmnmab47

お茶しかないけど、どうぞ、とコップを差し出す。駅前での彼女の言葉を聞いて、それなら、俺の家までついてきますか?と俺が言ったのだった。帰路で俺の家にある本の話でまた盛り上がって、何冊か本を貸してあげることにした。彼女は家にあがるのを一瞬ためらったようではあった。

2014-06-03 18:50:48
cyk @nmnmab47

本ある部屋はこっち、と書斎兼寝室へと誘う。スライド式の棚にびっしり並んだ本をみるなりうわぁ、すごいですねと彼女の瞳が輝く。古本屋の値札がついた何冊かを手にとってパラパラとめくって、このへん、借りてもいいですか、とこちらに顔を向けたそのとき、顔を近づけて、触れるだけのキスをした。

2014-06-03 19:02:04
cyk @nmnmab47

その瞬間彼女は目を見開いて、耳まで真っ赤になった。あの、と言いかけたのを遮るようにもう一度唇を寄せた。今度はさっきよりももっと深く。壁に無理やり追いやると彼女が手にしていた本を俺の胸に押し付けて抵抗する。その本を奪うと床に投げつける。彼女の唇はキュッと結ばれて、なにも、よくない。

2014-06-03 19:09:54
cyk @nmnmab47

それから、割と痛い感じで肩から胸のあたりを叩かれた。仕方なく顔を離すと、悲しい顔じゃなく怒りに満ちたような表情を浮かべていた。俺はひとつだけため息をついて、まだ終電間に合うから、帰りな。本はあげるから、と言った。すると彼女は間髪入れずに帰りません!と言ったのだった。

2014-06-03 19:15:37
cyk @nmnmab47

その言葉に面食らいながらちょっぴり呆れたような声色で、こんなアブナイ男のとこにいたくないでしょ、と言う。だってわたしがいなくなってまた彼女のこと思って泣いたりしないかって、不安だって言ったじゃないですか……と言われて、俺は言葉にならないものを吐き出すようにまたため息をついた。

2014-06-03 19:22:38
cyk @nmnmab47

彼女が下唇を噛んでから続ける。わかってます、さみしさを紛らわせるためにいろんな女の子と遊んでるって。でもそういうことはやめてほしいんです、前向いてほしいんです、傷つけることで傷を埋めないでください。だってわたしほんとに戸塚さんのこと、好きなんだもん、と俯いた。

2014-06-03 19:28:59
cyk @nmnmab47

俺は頭を掻きむしってから、君みたいに面倒な女は初めてだ、っていうか、前会ったおせっかいなバカに似てる、と言った。彼女は、どうせわたしはおせっかいなバカです……と唇を尖らせた。彼女の顔を覗き込むようにもう一度顔を近づけると、彼女は全身を強張らせた。

2014-06-03 19:55:17
cyk @nmnmab47

そんなに俺にまともになってほしい?と聴くと彼女は頷いた。俺の近くにいたい?と聴くと彼女は、なにもしないでただそばにいるだけでいいです、戸塚さんの傷が癒えるまで、と言った。そう、わかったよ、とだけ返事をして俺はパチンと指を鳴らして、目を見開いた彼女の頭を撫でた。

2014-06-03 19:59:52
cyk @nmnmab47

祥太、と甘ったるい声が耳に届いて目が覚める。朝ごはん、作ったから帰るね、会いたくなったらまた連絡していい?とベッドと同じ目線になって、俺に上目遣いで尋ねる。この女、いつでもメイク落とさないんだな、と感心しながら、いいよ、と答える。俺が体を起こして一度だけキスをして玄関まで見送る。

2014-06-03 20:05:34
cyk @nmnmab47

女はドアノブに手をかけて振り返ると俺の足元に目線を落とした。あれ、猫なんて飼ってたっけ?としゃがみながら尋ねる。最近飼い始めたんだ、と俺が言うと、女が手を伸ばす。黒い猫は俺の脚にピッタリ寄り添って警戒しきっている。まだ知らない人にはあまり慣れてないんだ、と俺は笑う。

2014-06-03 20:09:44
cyk @nmnmab47

へぇ、そうなんだぁ、とあまり興味なさそうな声を出して、女は去っていった。俺は黒い猫を抱き上げて、トースターに2枚の食パンを入れてから窓際のソファに腰掛けた。タバコに火をつけてふぅ、と煙を吐き出すと、黒い猫がにゃあにゃあと激しく声をあげる。

2014-06-03 20:15:49
cyk @nmnmab47

そう言われたって俺だって男だもん、そりゃ女と寝たいから、と笑うと、諦めたように鳴くのをやめて俺の胸に頭を預けた。トースターがチン、と軽快な音を鳴らす。タバコの火を消してトーストを皿に置く。それから棚から黒い粉が入った瓶と冷蔵庫から牛乳を取り出した。

2014-06-03 20:19:42
cyk @nmnmab47

コップと小さな皿に牛乳を注ぐ。おせっかいでバカな相棒さん、乾杯、とコップと皿を付き合わせた。

2014-06-03 20:21:58
cyk @nmnmab47

「これからはいつもあなたの隣にいますから、さみしいときは言ってください」 pic.twitter.com/8xvDYhwBMN

2014-06-03 20:46:07
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