Blades-H" 6日目前半

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Blades-H @Blades_H_

早朝7時。……俺にとっては早朝である。異論は受け付けない。ここ最近早起きが出来るのは、俺の身体が何らかの危機感を抱いているからなのか。それとも、昨日は一度、沮桐の膝枕で寝ったからか。……思い出すと中々に恥ずかしい。

2014-04-18 21:38:18
Blades-H @Blades_H_

今日は土曜日で、学校は……休みだったっけ?まだ寝ぼけた頭で考える。前に居た高校は私立だったので、半ドンだが普通に授業は有った。「うーん……休みっぽいな」時間割表を引っ張りだして確認する。……今日は、三好さんに話を聞きに行こうと思っていたのだが、これではどうすればいいのか。

2014-04-18 21:42:00
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「……取り敢えず、神社に行ってみるか」パジャマのまま、階段を下りてリビングへ向かう。まずは朝御飯を食べなければ。リビングでは、母さんが朝飯の準備をしていた。「おはよう」「あら、今日も早いのね」まだ朝御飯の準備が出来ていないようなので、お茶を淹れて待つことにした。

2014-04-18 21:43:58
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急須にお湯を入れ、湯のみに注いで口を付け「昨夜は楽しめた?」ブッ、と思わずお茶を吹きそうになった。母親の方を見るとニヤニヤしている。「一体何を聞くんだよ?」「別に?デートは楽しかったかなって思って」わざとだ。「デートって言い方無いだろ」付き合ってるのは秘密にしている……筈だし。

2014-04-18 21:47:28
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「だって、付き合ってるんでしょ?あんた達」……何で?「最近何故か家によく遊びに来るし、最初の時とは大分距離感が違ったから……友達、って感じとも違う。かまをかけたら、あっさり吐いてくれたわ」忘れていた。この母親、勘が無駄に良い。兄貴の薄いエロ本が没収されて行く様を何度目撃したことか

2014-04-18 21:50:04
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しかしそれ以前に、何故付き合っていると疑ったのか、この母親の脳の構造を一回調べたい。本当に。「ドウカゴナイミツニ」俺に言えるのはそれだけだった。「言わないわよ。母さんを信用しなさい」凄まじく信用出来ない。過去に裏切られたことが何回か有るし。

2014-04-18 21:53:54
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……母親にもばれた以上、そろそろ付き合っているのを秘密にしておくのは限界が来ているのだろうか……?(まだ3日も経っていないんだが)朝食を食べた後。そんな事を考えながら、俺は三好と「話をする」ために……神社へと向かった。

2014-04-18 21:55:34
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ちなみに、食事中にいろいろ聞かれたのだが、それについて思い出すと俺の精神は限界を迎えそうだ。……とりあえず、三日前の騒動については頑なに口を噤んだものの、執拗な質問に耐えかねて『神社で告白された』、とだけ答えてしまったのだが。

2014-04-18 21:57:09
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神社に着くと、三好は掃き掃除をしていた。……まだ朝早い筈なのだが。「おはようございます。どうしたんですか?こんな時間に」俺の姿を見た三好は、そう挨拶する。昨日の剣呑な雰囲気は嘘のように無い。「おはよう三好さん。掃除が終わってからで構わない。……少し、話があるんだ」俺はそう返す。

2014-04-20 20:20:59
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「構いませんよ。……丁度、休憩にしようと思っていた所ですし」彼女に招かれ、俺は社務所の中に上がらせて貰う。社務所の中は、三日前の騒動が嘘のように元通り……と言っても、俺は元の状態を知らないのだが。そんな様子になっていた。「すみません、何もお構い出来なくて」

2014-04-20 20:29:39
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彼女がお茶を出しながら、申し訳無さそうに言う。「いや、こっちこそいきなり押しかけて済まない」「都久志さんなら何時でも歓迎ですよ。……と言っても、ここ別に私の家でも何でもないんですが」二人分のお茶が置かれ、俺達は机を挟んで向かい合うように座布団に座っている。

2014-04-20 20:35:33
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「ところで……何でこんな時間に掃除を?」俺は気になっていた疑問を口にした。彼女が掃除していたのは、夕方だったような気がするのだが……「本当はこの時間帯にお掃除したいんですけど、普段は学校があるので。土曜日はいつもこの時間ですよ?」そうなのか。

2014-04-20 20:39:41
Blades-H @Blades_H_

引っ越してから一週間に満たない俺には、真偽の程は分からないが。「さて……今度は、私の番です。本日はどのようなご用件で?」場の空気が一瞬にして張り詰めた。俺がここに何をしに来たのか。「……今日は、言いたいことが有って来たんだ」そう俺が口にする。彼女は微動だにしない。

2014-04-20 20:42:41
Blades-H @Blades_H_

「言いたい……こと?」そう言うと、三好の目が訝るように少し細まる。聞きたいこと、ではないのか?と言っている気がした。俺は深く息を吸って、こう言った。「俺、沮桐と付き合うことになりました」 直後、俺は人の顎が外れる瞬間を初めて目撃することになる。

2014-04-20 20:47:48
Blades-H @Blades_H_

「えっ……え?」彼女は本気で混乱している様子だった。 心の中でガッツポーズを決める。散々彼女の言動に振り回されてきた。……沮桐にはそれ以上に振り回されてきたが、今回はそれは置く。卑怯な方法とはいえ、やっと一矢報いることが出来たのだ。

2014-04-20 20:52:01
Blades-H @Blades_H_

「付き合うっていえ、察しは付いて……というか知ってはいましたけど……それをここで今言います?」「それを、言いに来た」俺は必死で笑いを堪えながら、そう言う。「えっと……それだけ?」「それだけじゃないさ、勿論」俺がそう答えると、三好は次第に落ちつきを取り戻していく。

2014-04-20 20:57:33
Blades-H @Blades_H_

……思った通り、面白いものが見られた。「……こほん」三好がひとつ咳払いをして、「結局……何をしに来られたのですか?」「ああ、沮桐との事だ」俺は本題を口にする。「もう一度……戦うつもりなのか?」そして、そう彼女に尋ねた。「……それは、沮桐さんがそう言っていたのですか?」

2014-04-20 21:03:08
Blades-H @Blades_H_

「ああ」「良かった。『伝言』は正しく伝わった様ですね」そう言って彼女は小さく笑う。「本当に……戦う気なんだな?」「ええ、そういうことになるでしょう」三好はまるで他人ごとのように答え、「どうしてだ?」「それは、野暮というものですよ?」窘めるように彼女は言う。俺も、それ以上は聞かない

2014-04-20 21:07:56
Blades-H @Blades_H_

「昨日、意趣返し……って言ってたよな。沮桐は因縁なんて無いって言ってたぞ」 「……そうでしょうね。これは、一方的な片思いですから」 片思い。そういう、事なのか。三好は最初から、俺ではなく沮桐に興味を持っていて。だから彼女をけしかけた。……そういう話なのか?

2014-04-20 21:34:41
Blades-H @Blades_H_

「……三日前。沮桐に何を言った?」公平に言って、俺は冷静さを失っていたと思う。「そこで怒るのは筋違いでは無いですか?都久志さん。それとも……貴方も、彼女の側なんですか?」それを嘲るように、三好は言う。「どちらの側だっていいだろう」 そう言われた時、確かに俺の心は揺らいでいた。

2014-04-20 21:37:53
Blades-H @Blades_H_

俺は、「今の」沮桐を肯定してはいけない筈なのに。いつの間にか、彼女を否定することが出来なくなっていた事に気付いていたからだ。それは、俺が変わったからなのか。それとも、沮桐が変わったからなのか。……いや。俺は、彼女を止めると決めたのだ。

2014-04-20 21:41:42
Blades-H @Blades_H_

「第一、決闘って犯罪だろ。 ……今なら間に合う。三好まで罪を犯すこと無いだろ」務めて平静を取り戻し、俺はそう言った。言う迄も無いかもしれないが、決闘は殺人や障害とは別に犯罪である。今の彼女に、正論が通じるとは思えないが、俺が切れる札は最早少ないのだから。

2014-04-20 21:47:03
Blades-H @Blades_H_

「いい加減にしてください。……私の事を大切になんて、思っていない癖に」俺の愚にもつかない足掻きに、彼女はそう答える。最初は口調を荒らげて。最後は悲しそうに。……その言葉に、彼女の素顔がはじめてほんの少し見えた気がした。

2014-04-20 21:50:06