ウキ成短編小説だよ!

ウッキーが小さくなると成実さんがかわいい。
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江田・K【小説書き】 @koudakei

【25】 「それはまた……、どこかで妙な時差付きの術式でも食らったので御座るかな」 「かも知れないわ」 「ところで、成実殿がウッキー殿をそうして抱えられているのは何故で御座るか?」 「推進器の加速調整ができないのかしらね。ほうっておくとあらぬ方向に飛んで行くからこうしているのよ」

2014-06-18 22:09:51
江田・K【小説書き】 @koudakei

【26】 「大変で御座るなあ」 「ええ」 「でも、普段見れないウッキー様、ではなくて――」 小さく咳払い、 「――ウルキアガ様の姿が見れるのは喜ばしいことですね」 屈託のない笑顔でメアリが言った。

2014-06-18 22:11:12
江田・K【小説書き】 @koudakei

【27】 成実はふむ、と頷き、 「そうね。その通りだわ。そして英国王女、貴女もそうなのね」 断定口調で言う。 「えっ」 構わず続けた。 「貴女も第一特務の普段と違う姿を見ては喜んでいるのね」

2014-06-18 22:11:41
江田・K【小説書き】 @koudakei

【28】 「えっ……と」 メアリの頬が紅潮し、傷痕が映える。 それを綺麗だと感じていると、虚空に花が咲いた。白い、睡蓮だ。 後から後から咲き続けている。 「第一特務、なんとかしたほうがいいわ」 そうこうしている間に今日も検索最上位が「あの忍者」になっている。

2014-06-18 22:12:05
江田・K【小説書き】 @koudakei

【29】 「そ、そうで御座るな! メアリ殿? ちょっと落ち着くで御座るよ?」 真っ赤な顔をしたメアリが、点蔵を見て、すぐに視線を逸らした。 「私、はしたない女ですよね」 「そんなことないで御座るよ! メアリ殿はそれでよう御座る!」 「本当ですか?」 「本当です、で御座るよ!」

2014-06-18 22:12:31
江田・K【小説書き】 @koudakei

【30】 目の前でいちゃいちゃされるのは流石の成実にもクるものがある。 自分の相方が今こんな有様なのもそんな気分に拍車を、 「あら」 いない。 ウルキアガがいない。 いつの間に。 ずっと抱いていたはずが。 「キヨナリ?」 いないのだ。

2014-06-18 22:12:52
江田・K【小説書き】 @koudakei

【31】 オリオトライにウルキアガ捜索のための早退を申し出ると、 「あー、そうね。じゃあ、ここからは体育にしましょう。ウルキアガを見つけてさっさと帰ってきなさい。いい?」 「先生、授業するのがめんどくせえだけじゃね?」

2014-06-19 21:18:55
江田・K【小説書き】 @koudakei

【32】 捜索は幾つかのチームで行われることとなった。 成実は一人で行動しようと思っていた。 その方が気楽だからだ。 が、 「成実殿、拙者ご一緒して構わんで御座るか?」 「武蔵副長……」 二代だ。

2014-06-19 21:19:45
江田・K【小説書き】 @koudakei

【33】 二代なら足手まといになることもあるまい。 「構わないわ。ついてこれるなら」 軽く挑発してみると、二代は何故か笑顔。 「この機会に成実殿の体捌きをパクるとするで御座る」 「そういうことを言うのは感心しませんよ本多・二代」

2014-06-19 21:20:31
江田・K【小説書き】 @koudakei

【34】 誾だった。 嗜める口調。表情は薄いが怒りが透けて見える。 しかし二代は何故か笑顔。 「誾殿も一緒に行くで御座るよ!」 誾の義腕をがっちりとホールドする。 「えっ」 「おや、女性ばかりでしたら私は遠慮しましょうか」 「宗茂様……!」

2014-06-19 21:21:17
江田・K【小説書き】 @koudakei

【35】 宗茂は爽やかに笑い、 「私のことは気にしなくて大丈夫ですから。第一特務、お邪魔しても構いませんか?」 「ん? 自分はよう御座るよ?」 誾の中で「あの忍者」と「この副長」の検索順位がジャンプアップしているのを察しつつ、

2014-06-19 21:23:33
江田・K【小説書き】 @koudakei

【36】 「別に無理に一緒に来なくてもいいのよ」 「でももう宗茂様は」 ……行ってしまったわね。 誾はすっかり肩を落とし、うなだれ、爪先で地面にのの字を描いている。

2014-06-19 21:24:02
江田・K【小説書き】 @koudakei

【37】 この立花・誾という人は無表情に見えて、わかりやすい女だ。そう思う。 私もはたから見たらこんな感じなのかしら。 ……それはないわね。 「では参ろう!」 ひとりご機嫌で二代が地を蹴り駆け出した。

2014-06-19 21:24:39
江田・K【小説書き】 @koudakei

【38】 義腕を掴まれたままの誾が、 「ちょっ! 待ちなさい本多・二代! 離しなさいっ!」 「誾殿は怒りっぽいで御座るなあ」 「この……!」 成実はそんな二人を見て、短く吐息。 後を追うべく、疾走を開始する。

2014-06-19 21:25:06
江田・K【小説書き】 @koudakei

【39】 キヨナリ・ウルキアガは空を飛んでいた。 ずっと成実に抱きかかえられていたが、不意に力が緩んだ隙を逃さず離脱、幸か不幸か誰にも見とがめられることなく教室を出て、開いている窓から外へと飛び出したのだ。

2014-06-20 21:41:39
江田・K【小説書き】 @koudakei

【40】 だが、未発達な推進器では上手く飛べない。 無茶苦茶な軌道で宙を舞い、そして地面へ激突するように着地した。 派手な音がしたが、ウルキアガは無傷。 幼いとはいえ半竜である。 着地の衝撃程度では怪我などしない。 「うー」 だが気持ちのいいものでもない。

2014-06-20 21:42:21
江田・K【小説書き】 @koudakei

【41】 ウルキアガは軽く頭を振って歩きだす。 どこへ行くかは考えていない。 ただなんとなく歩いているだけだ。 そもそもここがどこだかも分かっていないのだ。

2014-06-20 21:43:00
江田・K【小説書き】 @koudakei

【42】 「~♪」 鼻歌混じりに歩く。歩く。 道往く人の好奇視線など気にもしない。 気の向くままに歩くのみである。 その行く先の道端、側溝から黒い塊が顔を出した。 『うっきー』 黒藻だ。

2014-06-20 21:44:25
江田・K【小説書き】 @koudakei

【42】 『せっそー』 『さんじょー?』 後から後から姿を現して、 「うー」 気付けば全周を囲まれていた。 『なんかへんー』 『ちっちゃい』 『みにうっきー』 『みっ――』 「うー!」 何か危険を察知したウルキアガは一声啼くと大きく跳躍した。 そして、そのまま加速。

2014-06-20 21:44:55
江田・K【小説書き】 @koudakei

【43】 ウルキアガは幼竜の未発達な体で不安定なバランスのまま飛び去って行った。 黒藻の群れはそれを仰ぎ見送って、 『ざんねん』『むねーん』 ゾロゾロと側溝へ戻っていく。 最後の一匹が戻ろうとした時だった。

2014-06-20 21:46:07
江田・K【小説書き】 @koudakei

【44】 「何やってたんだ。お前たち」 『まさずみー』 「ああ。今飛んで行ったのはウルキアガか」 『そうそう』『うっきー』『ちっちゃいのー』 「そうか」 正純はツキノワを軽く撫でて、 「艦橋に行ってる向井に繋いでくれ」 「まー!」

2014-06-20 21:46:26
江田・K【小説書き】 @koudakei

【45】 ・ベ ル:「成実さん、ウルキアガくん、品川に、いる、よ」 成実は鈴からの通神を受けて、足を止めた。 先行する二代と誾は気付いていない。 ぎゃあぎゃあとやり合いながら走っていく。 最早当初の目的を見失い速度を競い合っているような状況だ。 だが、まあいい。

2014-06-21 23:46:04
江田・K【小説書き】 @koudakei

【46】 ・不退転:「艦長代理、それはどこからの情報なの?」 ・ベ ル:「正純が、ね、飛ん、で行くのを見た……の。その方角を、聞いて、あとは“武蔵野”さんに、調べてもらって」 ・不退転:「有難う。助かるわ」

2014-06-21 23:46:32
江田・K【小説書き】 @koudakei

【47】 そういうことなら信頼性は高い。 成実は踵を返し、疾走開始。 現在位置は左舷二番艦村山、右舷一番艦の品川まではやや距離がある。 「待ってなさいキヨナリ。確保したら説教ね……」

2014-06-21 23:47:00
江田・K【小説書き】 @koudakei

【48】 キヨナリ・ウルキアガの背筋に悪寒が走る。 「うー?」 本能的な危険察知だが、今のウルキアガには深く考えるという機能は備わっていない。 今、彼は小等部の集団に囲まれていた。 「あはは」 「はんりゅーかたーい」 体のあちこちを掴まれ、引っ張られ、叩かれる。

2014-06-21 23:48:08