ウキ成短編小説だよ!

ウッキーが小さくなると成実さんがかわいい。
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江田・K【小説書き】 @koudakei

【朝目が覚めると、伊達・成実はキヨナリ・ウルキアガが幼児になっていることに気がついた。】←タイトル

2014-06-12 23:27:07
江田・K【小説書き】 @koudakei

【1】 「……キヨナリ?」 朝目が覚めると、伊達・成実はキヨナリ・ウルキアガが幼児になっていることに気がついた。 ウルキアガの巨体は見る影もない。 軽く抱えられる程度のサイズにまで縮んでいる。

2014-06-12 23:27:41
江田・K【小説書き】 @koudakei

【2】 成実はさして驚いた風もなく、何の術式の効果かしらね、などと寝起き頭で考える。 これくらいで驚いていては武蔵では暮らしていけない。 伊達とは文化が違うのだ。

2014-06-12 23:27:59
江田・K【小説書き】 @koudakei

【3】 とはいえ、放っておけるわけでもない。 昨夜は抱きしめられるようにして眠っていたはずが、今は全くの逆。 小さなウルキアガは軽く身じろぎをして、成実に体をすり寄せてくる。 いつもとは違う挙動。 くすぐったい。

2014-06-12 23:28:26
江田・K【小説書き】 @koudakei

【4】 ふ、と口元が緩みかけるのを抑えて、ウルキアガの頬を軽く叩き、 「起きなさいキヨナリ。あなた、大変なことになってるわ」 「……うー?」 いつもとは違う返事。 こんなだらしない返事は聞いた記憶が無かった。

2014-06-12 23:28:55
江田・K【小説書き】 @koudakei

【5】 「キヨナリ、大丈夫?」 「う?」 短い前足――もとい手で目元を擦りながら、ウルキアガが目を覚ました。 その様子を途中まで眺め、成実は視線を逸らした。顔を背け肩を震わせる。頬には若干の朱。 深呼吸。 整調化の術式を起動し、呼吸、血流を通常レベルに抑制。 向き直る。

2014-06-12 23:29:43
江田・K【小説書き】 @koudakei

【6】 「うー」 こちらに両手を伸ばしてくるウルキアガを右の義腕一本であやしながら、 「キヨナリ。あなた中身まで退行してるのね……」 空いた左手で表示枠を開いた。

2014-06-13 23:46:00
江田・K【小説書き】 @koudakei

【7】 ・不退転:「浅間神社代表、朝から悪いのだけど教えてもらえるかしら」 ・あさま:「おはようございます。なんでしょうか?」 ・不退転:「幼児退行について」 しばしの間があった。

2014-06-13 23:46:47
江田・K【小説書き】 @koudakei

【8】 ・あさま:「え、えーとですねえ、それはつまりどういう?」 ・不退転:「キヨナリが幼児になってしまったの」 ・あさま:「プレイの一環で?」

2014-06-13 23:47:19
江田・K【小説書き】 @koudakei

【9】 ・不退転:「何を言っているの浅間神社代表。キヨナリが何かの術式の効果で……」 ・あさま:「で、ですよねー! わかってましたよーぅ! 本当ですよーぅ!」 その後、浅間は幾つかの事例と対応策を示してくれたが、どれも当て嵌まりそうにない。

2014-06-13 23:48:19
江田・K【小説書き】 @koudakei

【10】 ・あさま:「んー。もうちょっと調べてみますね」 ・不退転:「私は何をしたらいいかしら」 ・あさま:「ウルキアガ君のお世話をしてあげてください。完全に幼児以前みたいな状況のようですし!」

2014-06-13 23:49:05
江田・K【小説書き】 @koudakei

【11】 たしかに。 右手にじゃれつくウルキアガはいつの間にか成実の指をくわえて甘噛みしていた。 「……義腕で良かったわ」 左手でウルキアガを引きはがし、溜息。

2014-06-13 23:50:02
江田・K【小説書き】 @koudakei

【12】 成実は体を起こし、 「朝食にしましょうキヨナリ」 「うー!」 いつもの「うむ。今朝はパンだな」などと言うウルキアガの台詞が、成実には遠い過去のように感じられた。

2014-06-13 23:50:26
江田・K【小説書き】 @koudakei

【13】 朝食を済ませ、成実は教導院へ向かっていた。 ウルキアガは胸前で抱いている。置いてこようかとも思ったが、 自分で飛んだり跳ねたり危なっかしくていけない。

2014-06-16 22:32:06
江田・K【小説書き】 @koudakei

【14】 先ほどの食事の時間を思い出す。 ……大変だったわね。 まさかあれほど駄々っ子だとは。 時間が無かったので最終的には義腕で押さえつけて無理矢理口に食事を突っ込んだのだが。

2014-06-16 22:33:05
江田・K【小説書き】 @koudakei

【15】 派手に散らかった部屋のことを考えると片付けに気が滅入るが、 「まあ、あれはあれで可愛かったわよ、キヨナリ」 抱っこしているウルキアガの後頭部を見つつ、言う。 いつにない、珍しい視界だった。

2014-06-16 22:33:23
江田・K【小説書き】 @koudakei

【16】 普段キヨナリは私の後頭部を見てるのね、きっと。 いちいち言わないが、ウルキアガに包まれるよう抱きかかえられるのは好きなのだ。 ……今のキヨナリは私と同じようには感じて、はいないみたいだけど。

2014-06-16 22:33:50
江田・K【小説書き】 @koudakei

【17】 ウルキアガの機嫌はあまりよくない。ありていに言って悪い。 普段はポーカーフェイスな彼だが、今は露骨だ。時折、うーうー言ったりもする。 無理矢理食事を詰め込まれたのがひどくご不満なようだった。

2014-06-16 22:34:08
江田・K【小説書き】 @koudakei

【18】 教導院について、三年梅組の教室へ向かう廊下。 すれ違う生徒たちが奇異の視線を向けてくる。 無数の視線の波をすり抜けるように歩き、進む。

2014-06-17 22:05:57
江田・K【小説書き】 @koudakei

【19】 教室の外まで聞こえてくる笑い声と怒号、そして奇声。 そこが梅組だ。 すっかり慣れたが、 「慣れるのもどうかと思うわ」

2014-06-17 22:06:32
江田・K【小説書き】 @koudakei

【20】 ねえ、キヨナリ。そう言いかけて、やめる。 今は返事を返してくれる半竜はいない。 代わりに「うー?」とこちらを見上げてくる幼竜がいるだけだ。 強く一度抱きしめてから、教室の戸を開けた。

2014-06-17 22:06:59
江田・K【小説書き】 @koudakei

【21】 「おいおいウッキー! オメエ、どうしたんだソレ!」 全裸の武蔵総長が挨拶もそこそこに大爆笑で絡んでくる。 その傍らに立つ浅間が、 「今朝通神で話した件ですか」 「ええ、何かわかったかしら」 全裸のウザ絡みをスルーして浅間に問うた。

2014-06-17 22:07:44
江田・K【小説書き】 @koudakei

【22】 「すみません。まだあまり手がかり的なものは……ってちょっとトーリ君! むやみに触らないで」 「えーなんでだよー」 「ほとんど子供とお母さんね」

2014-06-17 22:08:52
江田・K【小説書き】 @koudakei

【23】 素直な感想を延べると、 「えっえっ」 浅間が顔面を真っ赤にして湯気を上げた。 そこへ全裸の姉が飛びこんできてあとはいつもの惨状だ。 これ以上は関わるものではない。 「浅間神社代表、何か分かったら教えて頂戴」 「あっはい」

2014-06-17 22:09:13
江田・K【小説書き】 @koudakei

【24】 ――授業の合間の休み時間。 成実の席へ、点蔵がやってきた。傍らにはメアリの姿もある。 「成実殿、ウッキー殿の身に何が起こってそのような姿に」 心配げな声音で言う彼の表情は見えないが、帽子の目は憂いの色を湛えていた。 「分からないわ。朝起きたらこうだったのよ」

2014-06-18 22:09:02