オペラ:【道化】/舞台【刺青】

0

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

『……彼も、初演が終わった頃だろうか。』

2014-06-14 23:01:13

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

『この町でロニカ様の舞台が見られるなんて……夢のようだわ。』『少し残念なのは、オムニバスだから出番が少ないことかしら?』『彼の歌声が聞けないというもの残念だわ。』『今回は東洋の国の小説が原作なのよね?』『キモノ姿のロニカ様がみられるのかしら』婦人が姦しくポスターの前で話している。

2014-06-15 21:00:57
シャオイー(小伊) @applex002

「今日はパパが来るからそのつもりでね」『はい』昨日に引き続き気合をいれておめかしをする主人の手伝いをしながら夜のことに思いを馳せる。ロニカさんがくださったチケットを取り出しては確認する度に頬が緩んでしまうのは不可抗力だろう。「…ちょっと、ニヤつく前に腰紐締めるの手伝いなさいよ」

2014-06-15 18:28:53
シャオイー(小伊) @applex002

『アンジュ、クリスくん。やぁ元気にしてたかね』「パパ、調子は上々よ」『ご無沙汰しております』『三人揃って外出だからね、舞台の後はディナーでも如何だろう?』「それはとても楽しみね」『はい、ご一緒できてぼくも嬉しいです』三人を乗せた馬車はゆっくりと走り出した。

2014-06-15 21:15:22

[舞台:道化]

裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

≪開演≫ (オムニバス形式の舞台のテーマは“蜘蛛”。古今東西の様々な作品を元に構成されている。大取を飾るのは、隣の街の劇団の人気俳優である。観客の中には待ち切れずにそわそわと上の空な者もいるようだ。)

2014-06-15 21:10:22
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

≪大取≫ (最後の作品は東国の作品を元とした『刺青』。舞台上にはその東洋の国が再現され、この国では見たこともないような不思議な衣服をまとった人々が行き交っている。その国では美しい“刺青”が持て囃され、往来の人々も皆刺青を入れ、またその刺青を見つめる人ばかりである。)

2014-06-15 21:25:22
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(往来に現れたのは一人の目鼻立ちの整った男。彼は引く手数多の刺青師である。しかし、彼の心を惹きつけるような身体の持ち主でなければ、彼は仕事を引き受けなかった。そしてもし描いてもらえることとなっても、その費用・構図全てを彼に任せなければならなかった。)

2014-06-15 21:35:23
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(この男、腕は確かだがその性癖は酷く歪んでいた。彼が用いる彫り方は刺青の中でも最も苦痛を伴う“ぼかし彫”“朱刺”。それを施された者は男も女も皆悲鳴を上げ、痛みに顔を歪ませた。男はその姿を見ることが何よりの喜びであった。)

2014-06-15 21:45:23
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(そんな男の宿願は、自分の求める最高の身体に、自分の魂を込めて刺青を彫ることであった。男はその身体を必死に探し求めた。しかし、容易に見つかるものではない。数年の後漸く見つけたその身体は、とある陰間の身体であった。初めて目にしたのは青年の脚のみ、されど男はその脚に一目惚れした。)

2014-06-15 21:55:22
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(男は青年を求め、手を尽くし、遂に青年を自分の家に連れ帰ることに成功した。そして青年に二本の巻物を見せた。そこに描かれていたのは、他の人間を肥しとし、美しく輝く女性の姿である。気の弱そうな青年はその絵を恐れたが、しかしその容貌は絵の女と妙に似通っていた。)

2014-06-15 22:00:43
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(『この絵の女はお前だ、この女の血がお前の身体に交っている筈だ』そう笑う男に青年は震える声で訴えた。『後生だから、早くその絵をしまってください』しかし青年も、自分の内に宿る本性に気付き始めていたのである。男は逃げようとする青年に麻酔剤を使った。)

2014-06-15 22:05:23
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(男は漸く手に入れた身体をじっくりと眺め、それから一心不乱に青年の背に刺青を施し始めた。一点一点に、男は己の魂を込めた。そうしていくつかの夜が明け、遂に青年の背に巨大な女郎蜘蛛が浮かび上がった。目覚めた青年の顔は苦痛に歪んだが、その瞳には不思議な光が宿っている。)

2014-06-15 22:10:22
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(青年の紫の瞳に見つめられた男は笑う。『苦しかろう、蜘蛛が抱きしめているのだから』その言葉に青年はくつりと笑い返す。『美しくなるのなら、どんなことでも辛抱してみせましょう』そうして仕上げのために湯浴みに行き、戻ってきた青年は、最早もとの青年ではなかった。)

2014-06-15 22:20:25
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(ゆったりと着物を纏った青年は言う。『私はもう今までのような臆病な心を、さらりと捨ててしまいました。――アンタは真っ先に俺の肥料になったんだ』男はその姿に息を呑む。『帰る前にもう一度、その刺青を見せてくれ』青年は頷くと背を向け着物を脱ぐ。背の刺青は妖しく輝いた。) ≪終演≫

2014-06-15 22:25:22
裏・舞台俳優と奴隷 @xxxRonica

(いつもの舞台ではないから目に留まることもないかと思っていた。だが確かに、白い少女とその父親、そしてあの日の少年がいた。「――客が一人減らなくて良かったぜ。」そう独りごちると衣装を脱いだ。「今日はもう帰る、あの宿はもうダメだ。バレてる。やっぱり家から通うことにするわ。」)

2014-06-15 23:12:23

シャオイー(小伊) @applex002

「いいの?パパについて挨拶に行けば良かったじゃない」チケットを持ってこられた際にお会いしてからはずっと舞台の日にもう一度お会いして話ができたらと思っていた。けど、『はい。ファンだからこそ客席から応援しているだけで良いんです』役者の彼を見たら主人の気持ちがわかった気がする。

2014-06-15 22:43:28

シャオイー(小伊) @applex002

お父さんの招待で今まで入ったことのない高級なフレンチの店に三人で席をとった。テーブルマナーも一通り主人から仕込まれていたため不必要だと思える程たくさん並べられた食器や見慣れない器具に戸惑うこともなく、あの頃猛勉強した自分を褒めてあげたくなった。

2014-06-15 23:18:02
シャオイー(小伊) @applex002

『いや、あの刺青は実に素晴らしかったね。本物と見間違えるほどだったね』「ロニカにとってああゆう奇人的な役柄はオハコだもの。ロルフさまみたいに新しい挑戦として少しは硬派な役もやってみればいいのよ」料理を待つ間中感想を言い合う二人。その内容はともあれ饒舌な所を見るとご満悦のようだ。

2014-06-15 23:26:19
シャオイー(小伊) @applex002

『ともあれ、今日はこうして君と食事の場を設けられて嬉しいよ、クリスくん』『っ、はい、恐縮です』『はは、そう畏まらないでくれると嬉しいね。君にはとてもお世話になっているんだ。今や家族のようなものだと思っている。そうだろう?』厳格な顔を柔和に緩ませてお父さんは笑った。『…、はい!』

2014-06-15 23:34:40