4.「夜の帳に鬼ふたり」

夜が来る度街には命の最後の悲鳴が響く。血とともに狩りをしていた黒衣は、ある日ついにもう一人の殺人鬼と出会った。 (※「黒衣の殺人記録」http://togetter.com/li/674790 の24日の出来事後日談)
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知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@b_a_doctor @JoA_trades 「お願いします」朝食をかなり早いペースで食べ進めながら、相手の問いに頷いて。が、そこでふと腹の傷に触れて今朝気がついた異常な事を口にし。「そういえば。怪我なんですが“もう塞がって”て。中はまだ治りかけですが、あとは自宅療養でも?」

2014-05-28 16:21:25
闇医者 @b_a_doctor

@Maksim_xxxxx @JoA_trades 立ち去ろうとしていた医者は足を止め、隠しきれない困惑を誤魔化すように笑う。「はは…えぇと…そうですね、患部を診てもよろしいですか?」

2014-05-28 16:25:43
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@b_a_doctor @JoA_trades 「いいですよ」困惑が表情ににじみ出る相手に対して、“にこり”と笑う。塔に来て一度も笑った事がなかった男は薄い笑みを浮かべて、服を片手で軽くまくり・・・早朝に起きて確認した後包帯を巻き直さなかった腹を見せる。そこには傷跡一つなかった。

2014-05-28 18:32:45
闇医者 @b_a_doctor

@Maksim_xxxxx @JoA_trades 医者は絶句する。顔からは笑みが消え、そんなはずはないと早足で歩み寄り、肌に触れようとするが手を引く。「………、…何で……」声が出ていることにも気づかない様子で呟いた。

2014-05-28 19:56:23
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@b_a_doctor @JoA_trades 「人間じゃないからですよ」 男は笑った間々暗い目で言った。相手の手が引くのを見て目を細める。手首の包帯に手をかけほどくと・・・傷なんて最初からなかったようにそこには何もなかった 「人間じゃないからですよ」 男はもう一度繰り返した。

2014-05-28 20:02:21
闇医者 @b_a_doctor

@Maksim_xxxxx @JoA_trades 喉から唾を飲む音が聞こえる。青年の笑顔から目を離せない。無意識に少しずつ後退し、いつか隣の寝台が膝の裏に当たる。「あ………」その衝撃で我に返り、自分が後退していたことを知る。何か言おうと思うのだが、上手く声が発せられない。

2014-05-28 20:26:46
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@b_a_doctor @JoA_trades 「・・・・・もう行きますね」(そうだ。その反応が、“正しい”)服を直し財布を丸ごとテーブルの上に置く。いつも多いくらいの金額を持ち歩いているので治療費には十分だろう。ベッドから降り、悲しそうな顔をして微笑んだ後病室から出ていった

2014-05-28 20:30:13
なんでも屋 @JoA_trades

@Maksim_xxxxx @b_a_doctor 「――あっ、兄ちゃん!もう大丈夫なのかい?あんまり急に動かない方が……」病室から出てきた青年に気付いた男は慌てて椅子から腰を浮かし、駆け寄ろうとした。しかし、相手の表情を見てふっと足を止める。

2014-05-28 20:34:30
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@JoA_trades @b_a_doctor 「大丈夫ですよ」前髪の隙間から覗く目は、酷く静かで落ち着いている。はっきりとした声で良いながら、腹を撫でた。「大丈夫です」前よりもずっと慣れたような敬語で返して、男の横を通り過ぎる。その歩調は大怪我をしているようには見えない。

2014-05-28 20:38:36
なんでも屋 @JoA_trades

@Maksim_xxxxx @b_a_doctor 青年の状態が自分が想像していたものと遥かに違うことに目を見張る。面喰いながらも肩に手を掛けようとしたが、以前体に触れられた時の様子を思い出し踏みとどまった。暫し逡巡したが結局ぴしゃりと額を打って「……依頼料、まだ貰ってないよ?」

2014-05-28 20:48:14
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@JoA_trades @b_a_doctor 「・・・依頼したのはあのガキだろ。欲しけりゃアイツに言ってくれ」背後から聞こえた言葉に足を止めて、敬語を止めて返事を返す。だが眼差しは相変わらず嫌に静かで、冷たい。淡々と答えては再び足を進め、出て行ってしまった。

2014-05-28 20:57:12
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

夜道を一人歩く、ボサボサ頭の男。暗い無表情のまま近日起きた出来事を脳内で反芻していた。 最初は、左手首の酷い痛みで起きた朝の事。

2014-05-28 23:54:26

「夜のそこはひたすらに冷たい」

化け物と呼ばれることを男は望む。
人でなしと呼ばれる事に懐かしさを抱く。
それでも男は化け物と扱われる事に悲しさを思う。

知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

《見ればシーツにはぐっしょりと黒い血だまりができていて、目を開き息がつまった》 『なんっ・・・なんだ? 何だ、何だよこれッ!!?』 《続いて酷い痛み。破いた服の裾の切れ端を解けば、全く見に覚えのない刃物が貫通した大怪我。そしてコートかけにはいつものように丸洗いされたようなコート》

2014-05-28 23:56:59
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

《酷い混乱状態のまま、これは何かの間違いだ。見た目は酷いがきっと大した怪我ではない。包帯を巻けばすぐに治る。 そう思い救急箱をひっくり返して包帯を乱暴に巻いて、鎮痛剤を大量に飲んだ。そうして次に目覚めたときは》

2014-05-28 23:59:42
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

《今度は抉られた腹の傷。 何がなんだか分からなかった。自分が確実に良く無い流れの中にいるのだと。ぐちゃぐちゃの頭で眠って、そうして起きたとき》

2014-05-29 00:00:51
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

今度は怪我が異常なスピードで治っていて。 やはり自分は異常なのだと分かって。   あの医者の眼差しに、なぜかストン、と納得できた。あの眼差しこそが自分に向けられる正しい物だと、何故か懐かしささえ感じる暗い安堵を感じた。

2014-05-29 00:02:37
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

どん、 と、その時目の前に歩いていた浮浪者の肩にぶつかった。 『あ゛っ? いてぇじゃねぇか。おい、兄ちゃんよぉ・・・』 「・・・・・・・」 男は浮浪者を見つめる。その金色の目が気に食わなかったか、男は不快と苛立ちの混ざった顔になった。 『聞いてんのかオイ!!』

2014-05-29 00:05:24
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

『気色悪い目ぇしやがって! オイ! 見てんじゃねぇぞテメエ!』 唾を飛ばして怒号を上げ、その野太い腕で男の胸ぐらを掴み、

2014-05-29 00:06:53
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「ウルせえよ、ゴミ虫が」 男は歯をむき出して、獰猛な獣のように笑い。   めしゃ、 と力一杯浮浪者の顔面を殴りつけた。

2014-05-29 00:10:09
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

『ごべッ・・・!?』 「気色悪い? それが“何だ?” え、オイ、なんか言えよ」 ごっ がっ ぐしゃ ばき ごきっ 何かが折れる音と肉が爆ぜる鈍い音が何度も響く。 男は笑いながら倒れた浮浪者の顔面をブーツで蹴飛ばし、その鼻の骨を砕き、頭を踏みつけ胸に踵を落とし何度も何度も蹴る。

2014-05-29 00:13:07
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

ごきっ めしゃ ぼきっ 『が、げぇ! や、やっめ・・・!!』 「肥えた豚の癖に、あぁ豚以下か!? 虫の方がまだ役に立ってるんじゃねぇの?」 どす ぼすっ がっ ごすっ ぱきん 『や、め・・・やめ! う、げぇ・・! えぶ!!?』 「きったねぇ声。死ねよ、死ね! 死んじまえよおら!」

2014-05-29 00:21:47
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

何度も何度も鈍い殴打の音が聞こえ、苦しげな浮浪者の声も次第に聞こえなくなった。 動かなくなった浮浪者の前で、肩で息を繰り返す男は引きつった笑みを浮かべていた。 「はは、・・・・はははは ははっ はははははは!」 笑って、笑って。・・・男は俯き、そうして逃げるようにそこから立ち去る

2014-05-29 00:24:40
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

化け物扱いされて、 不快や、畏怖の眼差しを向けられて、 そういう者を殺した時の、ひどく心地よい清々しさを思い出した。   「あぁ・・・・そうだった、こうだったよなぁ、よくわかんねぇけどよ・・・・これが、正しかった気がする」 男は笑いながら呟く 頬を濡らす物に気がつかないまま。

2014-05-29 00:28:00
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

真っ暗な部屋。誰も起きていない時間。静寂の中で嗚咽とすすり泣きの声が漏れた。 ほたほたと、頬から流れる滴が顎を伝って落ちる。ず、と鼻で息を吸う音と、口で苦しげに吐く吐息が聞こえた。 「・・・あー・・・」 男の、力無い声。   だっせぇなぁ   小さく漏れた声を聞く者は誰もいない

2014-05-29 02:16:44
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