駆逐艦若葉【艦これのえほん:第2巻】
ある日、若葉は初春たち3隻とともに船団護衛の任務についていました。深海棲艦の出る海ですから、船を守ることはとても大事な仕事です。
2014-06-18 17:26:15若葉はもう3日も寝ていません。若葉には、守るべき者があるのだからこれくらいはへっちゃらだと思っていました。でも、眠気は確実に若葉の判断力を鈍らせていました。
2014-06-18 17:27:40「それにしても鎮守府の幽霊船騒ぎには驚いたのう」 初春は初霜に向かって話しかけます。 「え? あ、そ、そうですね。えへへ……」 実はその幽霊船の正体は自分と若葉なのだということは、初霜は言えませんでした。
2014-06-18 17:28:31「幽霊船なんかいない、とわらわは思っておったが、居るところには居るものなのじゃな」 「ど、どうなんでしょうね」 「まあ、それはそうとして、若葉のやつ突出し過ぎではないのか?」
2014-06-18 17:29:20輸送船団の外側に、第21駆逐隊が取り囲んで護衛しています。輪形陣という陣形です。守るべきものを守るものの輪で囲うのです。
2014-06-18 17:30:07「若葉ちゃーん!! もっと中に入って!!」 初霜が叫びます。初霜の声が聞こえたのか、若葉は眠そうに元の位置へと戻っていきます。
2014-06-18 17:32:26ところが、若葉はそのまま輪の中に入っていきます! それどころか輸送船に向かって近づいていくのです! 「あぶないっ!!!」 子日が叫びました!
2014-06-18 17:33:53次の瞬間、若葉は輸送船とぶつかっていました。大きなガシーン!!!という音がして、そして輸送船が痛がって泣いています。若葉は大変なことをしたと気づいたのか、おろおろしていました。
2014-06-18 17:35:21「若葉! どうしたのじゃ!!」 初春が若葉に詰め寄ります。 「……うとうとしていた」 「たわけ!! 何をやっておる!!」
2014-06-18 17:35:56幸い、輸送船も若葉も軽いけがで済みました。でも、若葉は泊地へ戻ると提督にひどく叱られました。輸送船を守るべき護衛艦がこともあろうに衝突するなんてあってはいけないことです。
2014-06-18 17:36:25若葉は、気まずそうに輸送船に謝りました。でも輸送船たちは若葉をひどい船だと言って怒りました。若葉には返す言葉がありませんでした。そのとおりだと、思ったからです。
2014-06-18 17:37:19「……」 若葉はしょんぼりと、ドックに修理に入って行きました。若葉は、今日も眠れそうにありませんでした。
2014-06-18 17:40:53若葉は輸送船と衝突事故をおこしてしまいました。そのせいで、若葉はすこし壊れてしまい、入渠修理をしています。
2014-06-18 23:53:11若葉は情けない気持ちでいっぱいでした。ぶつかった輸送船には悪いことをしたと思っています。 「……若葉は悪くないか? ……悪いぞ。若葉が悪いぞ……」 工廠の妖精さんが自分を直している間も、若葉はつぶやいていました。
2014-06-18 23:53:55「わっかばちゃーん!!」 そんな時、大きな声が若葉を呼びました。 同型艦の子日です。 「……どうした? 若葉は修理だ」
2014-06-18 23:54:48「あのねあのね。どうして眠らないの? 若葉ちゃんすっごく眠そうだよ?」 子日が無邪気に聞きます。 「眠たくないぞ」 「そんなこと無いよ。こんな事故まで起こしちゃって」 「……」
2014-06-18 23:55:49若葉が余り眠らないのには理由があるのです。でも、それは若葉の胸だけにとっておくつもりでした。だから、若葉は黙ってしまいました。
2014-06-18 23:56:25「もー! 若葉ちゃん喋ってくれない!」 子日が頬をぷくうとふくらませます。 「子日だって初春ちゃんだって初霜ちゃんだって心配なんだよ……」 それを聞いて、若葉ははっとさせられました。
2014-06-18 23:57:41「……すまない」 「ううん。子日はいいの。だから理由を聞かせて?」 「初霜は若葉が守るから若葉は眠らないぞ」 「え? 初霜ちゃん?」
2014-06-18 23:59:00「初霜は言ったぞ。『みんなを守りたい』と。でもみんなを守るのはとてもつらくて痛い。だから若葉が初霜を守って初霜がみんなを守る。そう決めたぞ」 若葉は、子日をまっすぐ見つめて言いました。
2014-06-18 23:59:53初霜はいつでもみんな……、他の船や人々を守るために一生懸命です。若葉はみんなを守るのは辛いことだと知っていました。だから初霜の盾になろうとしたのです。
2014-06-19 00:00:53