ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/11/13
人魚の肉を食べると不老不死になると専らの噂ですが、じゃあ血ならどうなんすかねってそもそも自分元から不老不死なんすけどねーあ、申し遅れました自分吸血鬼なんすけどね、なんか今夜の獲物だった娘が、魔女と取引して人間になった元人魚だとかなんとか、ややこしいんすわもう。 #twnovel
2010-11-13 00:31:44ベッドにもたれてギターを弾いていると隣で漫画を読んでいた姉の友達がぽつりと呟いた。「きみの指でね、弦がこすれて、きゅって鳴るのが好き」開いたページから目も離さずに。「あ、うん」僕は二つ年上の彼女が口にした「好き」という言葉の響きに過剰に反応して口ごもってしまう。 #twnovel
2010-11-13 02:14:26きみの寝姿からメガネを外す。起こさずにそっと素早く、もう手馴れた作業。しかし、ふと怖くなる。いつか、きみが死んで、わたしがその姿を見守らなくてはいけない、この作業はその練習のような気がするのだ。 #twnovel
2010-11-13 02:35:58左手は後ろから彼女の柔らかい重さを支えてやり、初め腫れ物に触れそうな動きだった右手のスポンジは、もうただのものを扱うように無遠慮なやり方で、彼女の体を洗ってやるのだった。鏡の中の彼女は蒸気でぼやけてしまって、ただ肌色のかたまりが蠢いているだけのように見えた。 #twnovel
2010-11-13 03:28:35#twnovel 水中で頭痛がする程に呼吸を我慢する。肺が酸素を求めるように戦慄くが、それすらも無視して。我慢を重ね、明滅する視界の果てを覗こうとしても、いつかは浮上せざるを得ない時がやってきてしまう。水を捨てた者はもう水に戻る事はない。その事実を確認する為だけに僕は潜り続ける。
2010-11-13 04:45:04あまりに孤独だったので、僕は僕を失くしてしまった。仕方なく交番に遺失物届を出したら、後日誰かが僕を拾って交番に届けてくれた。僕は謝礼として、僕の一割を誰かにあげた。かくして僕は僕を取り戻したけど、結局孤独なので、今や誰かに貰われた一割の僕が妬ましい。 #twnovel
2010-11-13 09:21:38#twnovel 夢の中で僕は目覚めた。触るもの全てに感触があるその夢は、妙にリアルで夢であることを忘れさせた。夢の中で眠りにつくと現実で目覚めた。現実で眠るとまたあの夢の中。何度か繰り返すうちにどっちが夢でどっちが現実かが曖昧になった。僕は今、どちらの世界で生きているんだろう?
2010-11-13 09:28:30#twnovel 『!』『?』『1』『1』『?』『◎』『ω』『w』『w』『ε』『3』『♪』『~』…僕と彼女とのメールのやり取り。一文字だけでも相手の言いたいことが何となく分かるのが、ちょっと嬉しいある夜だった。
2010-11-13 10:01:06風を読み高度を調整しながら気球に乗る。どこか遠くへ行きたい。夜明け前から河原で気球にガスを入れる。暗闇に気球が浮かぶ。カゴに乗り込み高度を上げた。夜が明けて眼下には田んぼのグラデーション。人が小さくて見える。そうするうちに自分の悩みなんて米粒くらいに思えてきた。 #twnovel
2010-11-13 12:47:29#twnovel 五年前僕らが爆破したビルの跡地で、前よりも高いビルの建設工事が始まった。僕らの犯行は完璧過ぎて、一人の逮捕者を出すこともなかった。あんなに壊したのに、あんなに殺したのに、僕らのことを糾弾する人はいない。「どうしたの?」何も知らない恋人が不思議そうに僕を見つめる。
2010-11-13 13:16:48【時間旅行】 約束まで小一時間あった。僕は10年前に働いていたその街を散歩することにした。歩くと、すっかり忘れていたお得意さんの笑顔を思い出した。必死だった新人の僕も。僕は、今の僕と10年前の僕に分裂して散歩していた。 一人に戻った時何かが少し軽くなっていた。 #twnovel
2010-11-13 13:26:58嫌や、と拒まれるのは承知の上だった。無理矢理押し倒している、この状況では。「あほー、何さらすねん、やめぇ……!」首筋に唇を落とすと威勢のいい声が途切れる。「昼日中から何考えてんねん」「抱くことしか考えてへん。土曜日やし」「関係あるかぼけー!」ほんま、口悪いなぁ。 #twnovel
2010-11-13 14:11:15#twnovel 「これが俺の家族の写真だ」「結婚していたなんて知りませんでした」「今まで妻には苦労かけっぱなしだったし、子供たちにも寂しい思いをさせてきた。これからはずっと傍にいるつもりだ」「実は私もこの戦いが終わったら、故郷に帰って幼馴染と結婚するつもりなんです」
2010-11-13 14:51:01「もう踊れない」唐突に彼女が指を振り解く。明かりを落とした室内に、ラジオが場違いなワルツを流し始める。「少し休む?」「そうじゃなくて」涙ぐんで、腫れた足先をそっと隠した。「もう貴方とは踊れない」知っていたから長引かせたのに。君は僕にそんな自由も許してくれない #twnovel
2010-11-13 15:23:47#twnovel [小公女] 僕がお屋敷の垣根の外から覗きこむと,いつも彼女が二階の端の窓の向うに物憂げに座っていた.夏の日は風に揺れる白いカーテンの影に.冬場は息で白く曇るガラスを通して.お屋敷にはもう誰も住んでいない.だけど今でも前を通る度つい彼女がいるような気がしてしまう.
2010-11-13 15:26:15好きなんだ、と彼が云ったのは余りに唐突で始めは今食べている目玉焼きの話かと思った位だった。どうやら告白らしい事に思い至り、知らなかった、と答えれば彼はきょとんと瞬きをする。あなたはずっと前から知ってるものだと思っていたよ。つまりずっと前から好かれていたらしい。 #twnovel
2010-11-13 15:50:22来週は遠足ですと公表すると、子供達の歓声が上がる。友達同士で三人ずつの組になって下さいと伝える。「はい、先生。霊は人数に入りますか」と聞くので、行くのは人間のお友達だけですと答えた。「じゃあ、妖怪も駄目なの」と聞かれるので、仕方なく小さな子ならと許可してしまう。 #twnovel
2010-11-13 17:17:47#twnovel コードネームOBSN――国内最強の工作員。厳戒体制の横浜――警官が、彼女に声をかけた。「おばさん、なじょしたのス?」「この先のスーパーのタイムセールに行くの。早くしないと、終わっちゃうよ」「ああそう、気をつけでネ」「あんたもね」数分後、国際会議場は炎に包まれた。
2010-11-13 17:18:58#twnovel 「僕はダメです。」小説家志望の患者はそう切り出した。「いつ言葉が枯渇するか…、それに誰かが似た話書いたんじゃぁと思うと…」「それは大変です。過去にもシェイクスピアや村上春樹が同じ症状を示したと聞きます。彼らに似た素質なのでしょう。」彼は喜んで帰った。
2010-11-13 17:58:29#twnovel (うわ小っちゃーい)抱いて実感したその日。(わーんどうしよ)熱を出されて途方に暮れた夜。(クソガキ生意気!)背で抜かれ、口で負けた朝。思い返し、ふと口もとがゆるむ。元気ならそれでいい。海の向こうの息子から、なにも書いてない絵はがき。
2010-11-13 18:40:40#twnovel もうすぐ雪が降ると、子供が自信ありげな笑みで言った。どうやら匂いが違うらしい。幼い頃に私も同じことを言った事を思い出しながら深呼吸してみるけれど、冬独特のスーッとした空気しか感じない。わかった?と期待してくる子供を見ると、少しだけ時間の流れが悲しくなる。
2010-11-13 18:41:49寝物語。「階段を昇るのがつらい歳になると『うんしょ』って言いながら昇るでしょ。あれは『運昇(うんしょう)』って言ってるの」「じゃあ降りるときは『運降(うんこ)』なんな」「言いながら降りれ」女は男をベッドから落とした。落ちた男は呟く。「うんこ」 #twnovel
2010-11-13 19:25:07何か述べようかとおもったけど、何も述べる事がないので何を述べようかみんなで述べてみようじゃないか。っていうコンセプトのハッシュタグと把握した。って事を述べてみたいんだけど、どうだろうか。 #twnovel
2010-11-13 20:47:47#twnovel 医療が進化し、臓器売買が普通に行われる様になった時代。あるオークショニアが自信満々に提供した心臓が過去最高値を記録した「今朝生まれたばかりの心臓です」「1500万!」「2000」「5000万円」そこにはもはや前世紀的なモラルという言葉は存在しなかった。
2010-11-13 20:59:05側転中のオレに近づくとその体育教官は囁いた。「昼休みに教官室に来い。」昼休み「お前昨日女子と手を繋いで下校してたろう。」「はい」教官はオレの横っ面を張ると言った。「何か有った時お前は彼女を守れるのか?」バレー部顧問の彼は知らない。彼女は隣の高校柔道の国体選手。 #twnovel
2010-11-13 21:08:20