【アナ雪】アナとチビ九尾エルサ(1-3)【パロ】
- yorozuya753
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***** 部屋に着いてバッグの中を整理して、で荷物の中で一番重たかったソレを取り出す。工具一式がギッチリ入ったツールボックス。日曜大工とか割と趣味で良かったなんて思う日が来るとはね。 エルサはペンチとかスパナとか金槌が入った多段式のボックスを怯えた、でもちょっと興味あるような
2014-07-06 11:56:09瞳で見てた。この子はすごく臆病だけど、やっぱり好奇心旺盛だわ。瞳の中に控えめだけど「なにするの?なにするの?」って期待も混ざってるの、あたしはちゃんと知ってるのよ。 「アナ……」 服の端をきゅっと握ってくる。あたしは「んとー」と前置いて、ソファーを視線で示して座るように促した。
2014-07-06 12:02:36エルサが二人掛けのソファーの端っこにちょこんと座る。一人分の面積も占有しない小さな体。九本の尻尾を広げればきっと一人分になるんだろう。 BOXの中からニッパーが見付からなくて、あれあれ?としてるあたし。ちょっと暇になったエルサは、自分の長い尻尾を前に持って来て抱き締めて、
2014-07-06 12:16:57毛づくろいを始めた。 (あ、グルーミング……) 毛並に沿って根本を小さな指先がたどたどしく梳いていく。九本もあるから大変なんだろうなってぼんやりと見詰めた。 「……ぅ?」 エルサもあたしがどういう奴なのかまだ図りかねてるんだろう。不思議そうに小首を傾げてくる。あたしはようやく
2014-07-06 12:25:19ニッパーを見付けて、エルサの傍に片膝を付いた。 「これ、外しちゃお?」 手枷と足枷と、それから首輪。エルサのほそっこい腕を取ると、長い鎖が垂れてカシャンッと音を立てた。 「はずせるの?」 「付けられたんだから、外せる筈よ。エルサも外したいでしょ?」 「……わかんない」
2014-07-06 12:28:24なんで分かんないんだろう?今度はあたしが首を傾げる番。あたしの様子を見て、エルサは口をもごもご。不器用で口下手な子だけど、言いたい事があるなら聞きたい。だから辛抱強く待ってみる。すると、 「ぁ、あの……アナがわるものになっちゃうのはやだから、はずしたい。けど……」 「けど?」
2014-07-06 12:32:46さっきの話ちゃんと覚えてたのね。あたしは忘れかけてたけど。静かに問い掛けて先を促す。けれどエルサは口を開けたり閉じたりと、微かにパクパクさせて。ややあって引き結んでしまった。 「エルサ?」 「わかんないの。でも、外しちゃいけない気がするの」 エルサの言葉を受けて、改めて枷を見る。
2014-07-06 12:35:11細い四肢に似合わないゴツい鈍色の枷。表面にはたぶん『漢字』っぽい、なんだか古めかしくてよく分からない文字が整然とした列を作って彫られて……ううん。埋め込まれてる。じっと見詰めていると背中に僅かな悪寒を感じた。 (そういえば技術者の誰かが東洋の術式を取り入れてどうとか……)
2014-07-06 12:40:23あの技術者の話をもっとちゃんと話を聞いておけば良かった。あたしにはあんま関係ないかなって思って聞き流しちゃったわけだけど……あぁ、あたしのバカ。 「大丈夫よ。取り敢えず外してみて、なんかダメな事あったら、また考えればいいのよ」 「……それでいいの?」 楽観的すぎるあたしにエルサが
2014-07-06 12:53:33訝るような視線を投げてよこすけど、にっこり笑顔で「だいじょうぶ!」と胸を張っておいた。 エルサの手首の上辺りを持って、ニッパーを近付ける。恐がるエルサは不安そうに自分の尻尾を抱き締めた。 「危ないから動いちゃダメよ」 コクリと小さく頷くのを見てから、あたしは手首に意識を集中する。
2014-07-06 12:56:07エルサのか細い手首を傷付けないように、狭い隙間にニッパーを入れて、ぐぅっと力を込める。噛まれた左手の握力筋が痛んで、右手に持ち直して力を入れ直す。 「くっ……っっ!」 ぐぅーっとぎゅーっとニッパーのグリップを握るけれどビクともしない。右手の上から左手を重ね、両手で力を入れるけど
2014-07-06 13:00:11やっぱりビクともしなかった。 「っっ……なにこれ、かったっ!」 「アナ、だいじょうぶ?」 「ん。頑張るから、まだ動かないで」 ぎゅーっと両手に力を入れる。なんか汗が出て来て、額から流れ落ちた。 「ぁ、アナ……も、もういい!」 大人しくて静かにしかしゃべらないエルサが、
2014-07-06 13:05:54声を荒げたから思わず顔を上げた。 「え?でもまだ」 「いいのっ!もうやめて……」 「エルサ?どうしたの?」 なんで泣くの?あたし、なんかしちゃった? 「ご、ごめんね。痛かった?」 「ち、が……」 「違うの?」 「ちがうのぉ……アナ、て……ちが……」 よく分からなくて、とりあえず
2014-07-06 13:26:29自分の手を見てみて、ぎょっとした。エルサが痛いというのは違ったけれど、確かに血が滲んでいた。 左手の親指と人差し指の間。包帯が巻いてあるところ。握力筋があるところ。 「きのうわたしがかんだ、か、ら……」 エルサの声が涙が混じり始める。室内の気温が下がり始めた認識した頃には、
2014-07-06 13:31:17雪が周りにチラついていた。 「うわわ、エルサ!」 「ふぇ、ごめんなしゃ……」 「大丈夫よ!これくらい全然平気よ!痛くないし!」 「でも、ちが……ち、が……」 紅く染まる包帯を見詰めるエルサの潤んだ瞳が、淡く光り始める。チラつく雪が服の上から噛み付いてくる。突き刺すような寒さに
2014-07-06 13:35:42身体が震えた。 あたしは昨日と同じようにエルサを飛び付くように抱き締めた。ソファーのスプリングが軋む。ソファーに二人で倒れ、腕の中にエルサを閉じ込める。 もう氷の檻の中には入れたくないから、この両手でしっかり抱き締めた。 「エルサ……大丈夫だってば。ちょっと心配し過ぎ」
2014-07-06 13:39:43よしよしと頭を撫でる。今日半日で頭を撫でられるのは嫌いじゃない……って、そう理解したつもり。 頭を優しく撫で続けていると、雪が治まって来た。情けなく垂れる大きな耳をくすぐると、ピルピル震えて、転がって行く涙の結晶が止まった。 「よしよし……いい子だから泣かないの。ね?」
2014-07-06 13:44:36頬を包み込むとすり寄せて来る。あたしの手の平、気に入ってくれたのかな? 涙目のエルサはあたしの左手を両手でおずおずと掴むと、血が滲んだ包帯を舐めた。ガーゼと舌先が擦れてざりざりという音が鳴る。 舐め癖でもあるんだろうか、とそんなことを考えながら、もう一度「大丈夫」と囁いて、
2014-07-06 13:47:17左手の親指でエルサの唇をなぞる。もう舐めなくてもいいよ、の合図のつもりだったんだけど。エルサはあたしの親指をペロペロと舐めだして。もう擽ったくて笑ってしまった。 「エルサ、そんなに舐めちゃダメ。くすぐったい」 「ぁ……ごめんなさい」 あ、しょぼくれた。玩具を取り上げられた犬みたい
2014-07-06 13:50:30エルサには悪いけど、可愛らしい表情が見れてちょっとだけ得した気分。あたしはそんな笑みを隠さず、エルサを抱き締めたまま起き上がる。膝の上にエルサを乗せて、もう一度頭をなでなでしてから、枷をどうしようかと考える。 「あたしの力じゃ無理みたいだから、明日になったら他当たろう?」
2014-07-06 13:55:16あたしの言葉に、エルサはただ小さく頷く。 枷は無理でもこの鎖は外しちゃいたい。なんかジャラジャラして邪魔だし。 枷と繋がっている鎖の根元は案外簡単にニッパーで切断できた。こっちは普通の金属だったみたいね。 でも力は相応に必要で、五か所全部の鎖を切断し終える頃には、
2014-07-06 13:58:12あたしは汗だくになっていた。あと、体力相応に使ったからお腹もペコペコ。もう手に力が入らなくて、床に散らばる鎖の欠片の上にニッパーを落とした。 「あ゛ー」 額に浮かんだ汗を拭って、ソファーの背凭れに背中を預けて、天上を仰ぐ。膝の上のエルサから心配そうな眼差しを感じたけど、
2014-07-06 14:01:41ちょっと待ってて。少しだけ休むから。 「アナ、だいじょうぶ?」 「んー。平気。ちょっと疲れただけ。オトメがやる作業じゃないわね、これ」 「うん。ごめ」 「謝らないの。エルサが悪いわけじゃないんだから」 「ぅ?わたし、わるくないの?」 「だって自分でつけたわけじゃないでしょ?」
2014-07-06 14:04:00「うん」 「ね。こんな変なもん付けた奴が悪いのよ」 「でも、つけなきゃいけないわたしが、わるいんじゃないの?」 「え、なんでそうなるの?」 「え、ちがうの?」 二人してキョトンとしてしまう。あたしはちょっとビックリしていた。薄々思ってたけど、この子めちゃくちゃネガティブだわ。
2014-07-06 14:06:52「なんていうか……エルサって教え甲斐がありそうよね、ほんと」 「おしえ?」 「うん。まぁ、ちょっとずつね……あたしも頑張るから、エルサもちょこっとだけ頑張ってね」 小首を傾げるエルサの後ろで、モフモフの尻尾が左右にゆらゆらしている。頭を撫でてあげると、そのゆらゆらが大きくなった。
2014-07-06 14:11:11