おすとは驚愕と絶望にぶるぶると震えます こんな、こんなはずではなかったのに ぶちこわした目の前の男に対して込み上げてくるのはどうしようもない真っ黒な怒りでした 鬱ちゃんのために奪うことはできても、差し出すものなどおすとは持ち合わせていなかったのです
2010-11-10 00:54:49汚ぎる君は鬱ちゃんに微笑み、「大丈夫だよ」と囁きました 俺は君を助けるために来たんだから何だって耐えうる覚悟はしてきたんだよと 鬱ちゃんはただただ泣いていました おすとがどういう選択をするのかこわくてたまらなかったのです
2010-11-10 01:03:19おかあさんが自分や他人にそんなおそろしい行為をするはずがない、という自信はもうすでに無くなっていました おすとが一体どのような行動に出るのか鬱ちゃんは考えたくなかったのです しかしその想いとは裏腹におすとの表情はうって変わって冷めていました
2010-11-10 01:09:00「処刑の時間だ」と、おすとはまるで自分に言い聞かせるようにつぶやきました 汚ぎる君に向かい合うと、その眼光に尖った刃を突き付けます 「覚悟はいいか?」とはきすてるおすとに「ああ」と答える汚ぎる君 鬱ちゃんはおくすりのせいで朦朧となりながらも必死で赦しを請いました
2010-11-10 01:17:09汚ぎる君はおすとの背後で泣きわめく鬱ちゃんが見れたことでもう胸がいっぱいでした この世のさいごに見るものは鬱ちゃんであれば他には何もいらないと、その網膜に鬱ちゃんの泣き顔を焼き付けるように見つめ続けたのです その汚ぎる君の選択はおすとにとって初めての失態でした
2010-11-10 01:25:39おすとはためらっている自分に苛立ちました なぜ突然現れた男に鬱ちゃんを取られなければいけないのだと憤る反面、鬱ちゃんがそれは悲しそうにおかあさんと名前を呼ぶのです 挟まれた感情の中で耳に届いた汚ぎる君の「なんだよ怖じ気づいたのか」という台詞にすとん血の気が下がりました
2010-11-10 01:37:07おすとは今度こそ迷わず、ためらわずぐしゃりと突き刺しました しかし何ともいえないうしろめたさから標的を見据えることはできませんでした そしてその瞬間まるで獣の咆哮のような絶叫が鉄塔に響きわたり、次いでか細い鬱ちゃんの悲鳴も後を追うようにして広がるのです
2010-11-10 01:47:11鬱ちゃんはそれからというもの、一切声が出なくなってしまいました 以前はおかあさんと鈴のなるような声で呼んでいたのに、いまはおすとが近寄るだけで身体がこわばるのです 汚ぎる君はなんとか一命をとりとめはしたもののもう二度と鬱ちゃんの姿を映すことはできなくなっていました
2010-11-10 02:24:12鬱ちゃんはひどく悩んだ末に鉄塔から出ていくことに決めました 鍵は屑に頼むとすぐに開けてもらえたのです 鬱ちゃんはおかあさん、とすがりついてしまいそうになるのを堪えながらおすとの所へ向かいます 扉を開けるとすぐ前の机におかあさんは座っていました
2010-11-10 02:34:12「行くのか」と問いかけるおすとは大分疲れているようでした こくりと頷くと悲しげに笑って「おまえのすきなようにしな」と付け足します 鬱ちゃんはたまらなくなって扉を閉め、足早にその場から立ち去りました 後ろは決して振り返らないつもりでしたが、目に溜まる涙が邪魔で前を向くのも困難でした
2010-11-10 02:39:53@miyoco69 鬱ちゃんが出ていった後のことでした おすとは鉄塔を囲むようにして咲き誇る薔薇の中にいました そんなおすとに「何だよ、見放されたなあおかあさん」と近づく屑 振り向かないまま「そうだな…」と返すおすと
2010-11-10 02:46:39「俺はいつだってお前がうらやましかったよ…」とつぶやくおすとは今にも崩れそうでした 「よく言うぜ。んな寝言…」俺が一等だったことなんて一度だって無いのにと屑は腑に落ちません そんな屑におすとは「ころしてくれ」とつぶやきます
2010-11-10 02:52:11「鬱が行ってしまう!ああ!俺のかわいい蝶が!!」おすとはそう叫び、咳き込みました ふと手のひらを見やるとまっかに染まっています それは先程飲んだおくすりの効用でしたからおすとは慌てません それはゆっくり内から侵食していくものだったので、ここで屑に逢えたことは幸せでもありました
2010-11-10 02:59:39「おまえなら手っ取り早く終わらせられるだろ?」と問いかけると「ああ…ころしてやるよ、全力で」と屑はにやつきながら答えます トカレフを突き付けられる感触に瞳を閉じると「やっぱ嘘。だいすき、おかーさん」と抱き締められました
2010-11-10 03:05:35目をうっすら開けると泣きそうな顔の屑が居ました それはまるで幼い頃の鬱ちゃんのように見えて、おすとははっとしました ああ、こいつは俺のことをずっと遠くから見ていたのかと 鬱ちゃんしか眼中に無い自分は屑を利用するだけ利用していたことにやっと気づいたのでした
2010-11-10 03:11:39「生憎このザマだ…笑えよ…」と自嘲気味に言うおすとに、「もうしゃべんなくていーよ、俺も一緒にいくから」と屑は甘くささやきました がちゃりとおすとの手をトカレフに添えて屑はにやりと笑います 「命令しろよオスト様…」最後のキスは血の味がしました (金赤ルートEND
2010-11-10 03:25:16