茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1281回「感情の、レッスン」

脳科学者・茂木健一郎さんの7月9日の連続ツイート。 本日は、さっき。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート1281回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、さっき。

2014-07-09 06:56:28
茂木健一郎 @kenichiromogi

かれ(1)ぼくは、数年前に見た、『宇宙戦争』という映画が大好きだった。HGウェルズ原作の、宇宙人が攻めてくる近未来・パニック映画。トム・クルーズ主演で、人類が、圧倒的な技術力を誇る宇宙人の攻撃になすすべもなく、トム・クルーズも、ただ、逃げ回るだけ。

2014-07-09 06:57:49
茂木健一郎 @kenichiromogi

かれ(2)宇宙人たちに勝つ見込みなどない、とも見えた地球人たちだが、最後に、地球上の細菌で宇宙人たちがやられてあっけなく負けていくという、地球人にとってはよかったヨカッタなのだが、結局、自分たちの手柄で勝ったわけではなくて、ラッキーだったのかよ、みたいな結論の映画。

2014-07-09 06:59:08
茂木健一郎 @kenichiromogi

かれ(3)なぜ、映画『宇宙戦争』が好きだったかと言うと、そこには、「絶望」とか、「無力感」が描かれていたからだ。アメリカ映画は、地球人のヒーローが出てきて、結局勝つ、みたいなご都合主義が基本だが、珍しく絶望な状況、何もできない時間の流れをきちんと描いていた。アメリカも変わったね。

2014-07-09 07:00:44
茂木健一郎 @kenichiromogi

かれ(4)ネイマールが抜けたら、ブラジルがああなってしまうなんて、誰が思ったろう。精緻なパス間しと決定力のあるシュートで攻めてくるドイツの前になすすべもなく、前半終了で5−0、そのあとも2点追加されて、最後にようやく1点だけ返して、7−1で試合が終わった。

2014-07-09 07:02:28
茂木健一郎 @kenichiromogi

かれ(5)これが現実だ、と思う。現実は、時に、私たちに無力感、絶望感を味合わせる仕打ちをする。いくらネイマールが抜けたからと言って、ブラジルの選手層って、そんなに薄かったのかとか、開催国のホームとしてのアドヴァンテージはどうなったのかとか、そんな思いが交錯する試合だった。

2014-07-09 07:03:53
茂木健一郎 @kenichiromogi

かれ(6)ファンタジーの世界では、やはり、開催国は決勝に行くのだろうし、優勝してブラジル全体が盛り上がるのだろうけれども、現実は、そんなファンタジーは粉々に砕いてしまう。そして、私たちがピッチの上に立つわけでもないのに試合を夢中になって見るのは、そんな経験が人生にあるからだ。

2014-07-09 07:04:50
茂木健一郎 @kenichiromogi

かれ(7)人生には、自分の無力さにうちひしがれる日が必ずある。圧倒的な力の差に、勝利が絶望になっても、それでも闘い続けなければならない時間帯がある。終了のホイッスルが鳴って、敗北感と屈辱にまみれながら横たわる時が来る。それでも人生は終わるわけではないし、生命のバネも切れはしない。

2014-07-09 07:06:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

かれ(8)これは、一つの「感情のレッスン」なのである。開催国ブラジルの子どもたちは、どんな思いで、この試合を見たことだろう。悔しさ、失望、砕けた夢。それは、負の経験であるようでいて、かえって心の「ワクチン」となり、精神を強め、人生の「明日」へとつながっていってくれることだろう。

2014-07-09 07:07:58
茂木健一郎 @kenichiromogi

かれ(9)このワールドカップは、日本にとっても悔しい、無力な経験だった。世界との壁を実感した。しかし、それは、感情のレッスンでもあった。日常では出会うことのない感情の振れ幅と向き合えるからこそ、たとえそれが代理経験であったとしても、スポーツは私たちに感情の強靭さを教えてくれる。

2014-07-09 07:09:48
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート1281回「感情の、レッスン」でした。

2014-07-09 07:10:10