艦々これ#4
「それはともかく、意識が戻って何よりです。配置転換で別の提督をこの泊地に充てようと考えていたところでしたから」 「冗談でも笑えない話ですね」 私はひきつった笑いを返しつつ、椅子に腰かけた。 「それで、敵艦隊はどうなったの?」 「全艦撃沈、だそうですよ」 #knknkr
2014-07-12 02:17:00全艦、か。 なんとなく察してはいたけれど、人の口から聞かされると余計にその言葉の重みを実感する。 あんな啖呵を切っておきながら、結局彼女は殺されてしまった。 それがあの雷撃によるものなのかはわからないとしても、沈んだことに変わりはない……。 #knknkr
2014-07-12 02:22:25「話は変わりますが」 と大淀。 暗い空気を察してくれたのだろうか、それとも逆に読めていないのか。 「港湾設備を拡張しました。今度の事件でこの海域の重要度が高まりましたので、今後遠征艦隊の寄港も増えると考えまして」 「それはどうも。泊地の戦力構成に変化は?」 #knknkr
2014-07-12 02:27:03「いえ、特には。提督の療養中は建造も停止していましたから。ただ、改装により重巡洋艦と軽空母の開発が可能になりましたので、一度試してみると良いかと」 ほう。航空戦力が運用できるのはありがたい。 この泊地だけこのまま水雷戦隊のみ、というわけにもいかないだろうし。 #knknkr
2014-07-12 02:30:32「あとは工廠に妖精が増えました」 「……増えるものなのね」 「大きくしたせいでしょう。貴方に会いたがっていましたから、挨拶に行ってはいかがかと」 なんともわざとらしい言い方だが、確かに会わないというのも失礼だ。 「ではリハビリがてら歩いてくるとしましょう」 #knknkr
2014-07-12 02:36:06久しぶりに歩く泊地はずいぶんと様変わりしていた。 拡張したと言っていたが、港湾と工廠以外にも色々と手を加えているようだ。 「まったく、好き放題やってくれたものね」 「船渠が改装されたのは嬉しいですけど」 隣を歩く漣が言う。 まあ、確かにそれは嬉しいかも。 #knknkr
2014-07-12 02:39:03そんなこんなで辿り着いた工廠。足を踏み入れると、一回り大きくなった建物内を妖精達がせわしなく歩き回っていた。 その中の一人にふと目が留まる。他の妖精達と共に働く彼女の顔立ちはまるで――。 「そうね、それもいいのかもね」 「ご主人様?」 自然と口が動いていた。 #knknkr
2014-07-12 02:45:20なぜか満足したような、安堵を覚えたような気になって私は踵を返した。 背を向けた先に、磨かれ輝きを取り戻した艤装の一部が飾られていることには気付きもせず、その場を後にする。 さて、次の任務編成はどうしようか。 考える私の足取りは前より少し軽やかになっていた。 #knknkr
2014-07-12 02:50:38