天上院照樹の憑魔録 プロローグ

@siren_Unknownさんから影響を受けて始まった、もう一人の退魔師の物語。その序章です。 ひょんなことから蔵に封じられた狗神に憑かれた少年、天上院照樹はどうなってしまうのか……? ※TS(性転換)+TF(獣化描写)があるので、苦手な方はご注意を。
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たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

天上院照樹君の家は特段に何かがあるわけではない普通の家。しかし、彼は知らなかったのです。自分の家が代々、狗神と呼ばれるものを人知れずひっそりと封印する家系であったことを……

2014-07-11 22:37:23
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

彼の家には、成人するまで近づいちゃいけないと言われていた蔵がありました。小さい頃の彼は律儀にそれを守っていましたが、成長した彼は反抗期真っ盛り。ある日、「友達」が用事があるということで先に帰ってしまい退屈を持て余した彼は、成長した体で侵入を試みてしまうのです……

2014-07-11 22:46:32
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

鍵を開けることはできませんでしたが、蔵には窓がありました。よじ登れないこともない高さなので確認したところ、鍵はかかってないようです。……ニヤリ、と笑って彼は足を踏み出すと、一気に中へと飛び込んでしまうのでした。……しかし、着地は失敗して鼻の頭をぶつけてしまいましたが。

2014-07-11 22:51:26
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

鼻をさすりながら見渡して見ると、中にあったのは奇妙な紋様が描かれた箱ばかり。 不気味だとは思いましたが好奇心が勝り、鍵のかかっていなかった一番大きな箱を彼は開けます。……覗き込むと、中にあったのは小さな絆創膏がひとつでした。外観は大きかったというのに、照樹君としては拍子抜けです。

2014-07-11 22:59:06
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

手にとって見ても、変な紋様がある以外は照樹くんには絆創膏にしか見えません。でも彼は、ちょうどいいやと思い直しました。鼻はまだヒリヒリするので、絆創膏が欲しいと思っていたところだったのです。躊躇いなく、照樹君は鼻の頭にそれを貼り付けます。それが、天上院家に伝わる封印の札とも知らず…

2014-07-11 23:05:42
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

ぺたりと鼻の頭に貼り付けた照樹君はあたりを見回して、そろそろ倉を出ようかと思いました。もっとわくわくするような何かを期待していたのにあったのは変な箱だけだったのですから、無理もありません。さて、窓から出ようかと思ったその時。……なんだか、鼻の頭がムズムズし始めました。

2014-07-11 23:19:02
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

最初は鼻の頭がムズムズするだけ程度だったものは、だんだんと体中に広がっていきます。それはまるで、絆創膏の中から何かが自分の中へ入っていくような、奇妙な違和感。体中をめぐるその感覚を気持ち悪いと思いだした頃、違和感は照樹くんの目にも形として映るようになったのでした。

2014-07-11 23:32:26
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

学校帰りなだけあって、照樹君は学ランに身を包んでいます。それはもう、ひと目見れば学生だとわかるような真っ黒いものです。しかし、その色に今は白が混じってきているのです。汚れのない純白が胸元から広がって、服の色だけでなく形までも染め上げていくのでした。

2014-07-11 23:36:23
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

リーン……リーン…… それも、寂しげな音が胸元から聞こえてくる毎に、です。ハッとして視線を下ろすと、そこには大きな鈴がいつの間にか首に巻かれていた首輪からぶら下がっていたのです。慌てて取ろうとして左手を伸ばすと、そこで彼は気づきます。……自分の手は、こんな色だったっけ?

2014-07-11 23:42:57
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

一度気づいてしまえば、後は時間の問題でした。いつの間にか高くなってる目線、短くなっているズボン。自分の足回りよりも少し大きなものを買ったはずなのに、足がズボンに締め付けられるような感触を覚えるのです。それも、肌ではなくそこから生えるもの……柔らかな毛に。

2014-07-11 23:46:36
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

胸元の鈴の音もそう大きな音ではないはずなのに、今の照樹君には少しうるさく感じてしまいます。まるで、耳が鈴に近づいたかのように。 怖くなって咄嗟に自分の胸元に伸ばした腕は、袖の中に隠れていました。 照樹くんは腕を引っ込めた覚えなどありません。大きくなったのは、袖の方なのでした。

2014-07-11 23:52:47
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

そして、大きくなったのはそれだけではありません。胸元に伸ばした手が、自分の想像よりもはるかに早く肌にぶつかります。 その感触も……想像よりはるかに、柔らかいものでした。 本来の彼の体つきなら、首輪からぶら下がっているだけだった鈴。その感触が胸からも伝わることに気づいた瞬間でした。

2014-07-11 23:57:25
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

視線はそのまま胸元から更に下、足元まで向かいます。足の裏から伝わる感覚も変で、土踏まずと靴の間に何か柔らかいものが詰まっているようだったからです。いつもの革靴だったら意味がない行為だったのですが、照樹君の目には手と同じような色の毛と黒い爪。更には、木製の下駄まで目に映りました。

2014-07-12 00:09:28
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

怖くなり、彼はバッと顔をあげます。すると細長くて白い糸のようなものが何本も、顔の動きに合わせてさらりと動いたのです。頭の後ろに垂れ下がるそれは、袖越しに触ってみても明らかでした。……髪の毛です。長くきれいな白髪が、照樹君の短いくせっ毛に変わって彼の頭から生えていたのでした。

2014-07-12 00:16:55
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

派手に胸元の空いた着物のような白い服。首輪にぶら下がった大きな鈴と、それを受け止める大きな胸。ぶかぶかになった袖と短くなった下履きに包まれるのは、人ではありえない量の柔らかい毛。高くなった足の下には高い靴底の下駄。美しい白い髪と…ここからは、彼の気づくことができなかったことです。

2014-07-12 00:24:37
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

白い髪をかき分けて、頭には三角形のものが生えていました。外側は手や足と同じ色で、内側だけ白い色の毛が生えているもの。そこだけを見せれば、誰もが間違いなくこう答えるでしょう。あれは、犬の頭に生えた耳だと。いつの間にか手と同じ色の毛が生えて、黒色の鼻が突き出た顔を見せれば、余計に。

2014-07-12 00:28:48
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

その姿には最早、鼻の頭に貼られた絆創膏以外に天上院照樹としての面影はありません。陽の光がわずかに差し込む蔵の中、人ならざる姿へ変わり果てた照樹君は困惑の表情で立ち尽くします。 ――――しかしこれは、彼がこの後に巻き込まれる騒動のほんの序章にすぎないのでした。

2014-07-12 00:37:23
たんがん@R-18創作垢 @monoeyeforging

照樹君 変身シーン1 illustration by 彗嵐さん(@suzuka2037pic.twitter.com/auRkqIpQrx

2015-05-25 22:19:22
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