ラバウル少佐日誌：暗黒の海溝編其ノ参

檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

------ラバウル基地、地下1階。(1) #ラバウル少佐日誌

檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

水着を纏う四人の少女は一言も会話を交わさず、白い部屋へと入る。 ややあってサイレンが短く鳴り、白くやや粘性のある液体が、彼女達へと降り注いだ。 これは防護液だ。 長時間水中に潜り続ける彼女達を、水圧と『水』自体から守る為の、である。(2)

檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

シャワーが止まると、自動で進行方向の扉が開いた。 その先の部屋は、赤い光源しかない。 だが、彼女達は何も怖じる事なく進む。 ぺたぺた、ぴちゃぴちゃと水を帯びた裸足の音を、静かで広く、真赤な空間に響かせて。(3) #ラバウル少佐日誌

檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「また三隻？」「今日は5隻なのね」 漸く口を開いたのは、赤い髪の少女と青い髪の少女だった。 然し、やはりそれ以上の会話は交わさなかった。 四人はそれぞれ、真面目な顔、奇妙な程ニタニタした笑顔、達観した笑み、そして鼻にかけたような微笑を浮かべていた。(4) #ラバウル少佐日誌

檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

アームバンド、髪飾り、そして奇妙な機械を身に着けて、 四人は6つある円形のドアの内4つを開け、その先へ一人ずつ入り、内側から閉じる。(5) #ラバウル少佐日誌

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……暫くあって後、 「さあ出撃よ！伊号潜水艦の力、見ててよね！」 掛け声の直後、部屋は轟音と共に揺れ、何かを射出する音が響いた。 ……それきり、再び部屋は沈黙に包まれた。(6) #ラバウル少佐日誌

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------(7) #ラバウル少佐日誌

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東部オリョール海。 此処は謂わば、深海棲艦側が東京急行を敢行している海域の一つだ。 防衛予算の都合上名前のみ陸『軍』となった、実質的には陸上自衛隊の延長線上でしかない彼等が闘う、陸の魔物達。 それを供給しているのが、この海域に現れる輸送級深海棲艦である。(8) #ラバウル少佐日誌

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故に、はっきり言って輸送級を放置しても海軍は痛くも痒くもない。 寧ろ仲の悪い陸軍を殲滅させて、新たに海軍内で陸戦担当部署を作ればいいとすら唱える者の方が多数派である。 ……が、先程出撃した潜水艦隊の主たる『少佐』は、陸軍贔屓なのだ。(9) #ラバウル少佐日誌

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「わぁー！こわいのいっぱいみぃーつけちゃったー……！」 伊58は目を見開き、ぎらぎらと輝かせ、口角を耳まで裂けんばかりに吊り上げる。 「ゴーヤ、落ち着いて。私は右から3番目の軽巡洋艦を狙うから……」 「ぎょらいさん！おねがいします！」 伊58は無視した。(10)#ラバウル少佐日誌

檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ああっ、もう……！魚雷一番から四番まで、装填発射！」 「ゴーヤはせっかちなの」 「ですねー」 三人は伊5)に続いて、魚雷を放つ。 全弾命中。しかし、伊168と伊8の雷撃は、同じ相手に当たっていた。(11) #ラバウル少佐日誌

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「残ってる艦種と数は！？」 「重巡一隻、軽巡1隻、雷巡が一隻……かな？」 「爆雷来るの？」 「もう来てるでち！」 伊58が叫んだ直後に四人の上方で、 ドボン、 と大きな音が鳴った。 「やば、急速潜行！皆急いで！」 慌てて潜る四人を、爆発の衝撃が追う。(12) #ラバウル少佐日誌

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だが、精度が甘い。 爆雷はかなり浅い場所で起爆していた為に、衝撃は伊168達へ届く前に単なる水流と化していた。 「……もう大丈夫かしら？」 「では、お次は8っちゃん達の番ですね……！」 「イクの魚雷攻撃、行きますなのね！」 「でちー！」 (13) #ラバウル少佐日誌

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四人はそれぞれ雄叫びを上げると、残った三隻へ魚雷を向ける。 放たれる4発、沈む三隻。 そして……水中に『落ちた』其れ等は、四人を凝視しながら、四人よりも更に深みへと、ゆっくり沈んでいった……。(続く) #ラバウル少佐日誌