「だからその気なら、すくなくともある意味では、劇場は観衆になかを覗かれるウルダルの湖だと考えてもいい。」 E.T.A.ホフマン『ブランビラ王女』 種村季弘訳 #口ずさむ一節
2014-07-14 02:07:07彼を怖いと思ったことはなかった。子供の頃も。黄色い雨がその秘密を明かしてくれた夜も、怖いとは思わなかった。 彼を怖いと思ったことはなかった。というのも、彼もやはり老犬を追う貧しく孤独な犬獲りだとわかっていたからだ。 リャマサーレス『黄色い雨』より #口ずさむ一節
2014-07-14 21:32:44ネリさんは苗字をゲーブルと言って、俳優の娘だったらね、と笑う。ポワンソン部門が仕事場の活字彫刻師で、そこはすこし特別な場所である。 ― 港千尋『文字の母たち』 #口ずさむ一節
2014-07-14 23:05:36カメラは掌のなかの夜である。 箱のかたちをした闇、手に持って運ぶことのできる、真昼のなかの夜である。 ― 港千尋『愛の小さな歴史』 #口ずさむ一節
2014-07-14 23:06:25月の夜は大きな書物、 ひらきゆくましろき頁。 人、車、橋の柳は 美しくならべる活字。 樹がくれの夜の小鳥は、 ちりぼひて黒きふり仮名。 西條八十 『書物』 #口ずさむ一節
2014-07-15 01:14:44石の眠りは深くして、花落つれども、ただ、しづか、 石の眠りは昏く(くらく)して、雨ぬらせども、ただ沈黙(しじま) 西条八十「石」 #口ずさむ一節
2014-07-15 01:49:26香ひのピアノは、一つ一つキイを叩くごとに、一つ一つ記憶が奏鳴する。 北原白秋「香(にほ)ひの狩猟者 #口ずさむ一節
2014-07-15 01:58:21そんなふうに見ていては、水平線は存在しない。視線が水平線を作るんだ。まばたきするたびに崩れる一本の糸。 サンチェス『空気の名前』斎藤文子=訳 #口ずさむ一節
2014-07-15 22:04:44まずはじめにブルーがいる。次にホワイトがいて、それからブラックがいて、そもそものはじまりの前にはブラウンがいる。ブラウンがブルーに仕事を教え、こつを伝授し、ブラウンが年老いたとき、ブルーがあとを継いだのだ。物語はそのようにして始まる。 オースター『幽霊たち』柴田元幸=訳
2014-07-15 22:21:46もうけつしてさびしくはない なんべんさびしくないと云つたとこで またさびしくなるのはきまつてゐる けれどもここはこれでいいのだ すべてさびしさと悲傷とを焚いて ひとはとうめいな軌道をすすむ #口ずさむ一節 コレも賢治センセイ。(口にする時は、どっちか片方のことが多いような)
2014-07-16 01:13:22生まれつきを変えようたって 神様にだってできゃしない ああ生まれつき 生まれつき 誰が決めたか 生まれつき 田辺聖子さんの『スヌー物語』より #口ずさむ一節
2014-07-16 10:38:34ぼくからこぼれる夜の時間 考えくらべ、測る間もなく この夜はもう終わりに近い 鳥が外で朝を告げる カール・クラウス 高橋悠治=訳 #口ずさむ一節
2014-07-16 21:38:53運命は 屋上から身を投げる少女のように 僕の頭上に 落ちてきたのである もんどりうって 死にもしないで 一体だれが僕を起こしてくれたのか 少女よ そのとき あなたはささやいたのだ 失うものを 私があなたに差し上げると 黒田三郎「もはやそれ以上」#口ずさむ一節
2014-07-16 21:52:01