「18 バウドリーナとコランドリーナ」。この章、他の章に比べてとても短いんですね。紙面を膨らませるような、空想とか、痛快なホラ話とか、そういうものを根こそぎにする事件、ということなんだと思います。
2010-11-16 21:05:01「19 バウドリーノは自分の町の名前を変える」。311頁16行、「傷(ウルヌス)を癒す」だけど、「amoris vulnus idem sanat, qui facit」(恋の傷を癒すのは、傷をつくった張本人)という格言があるみたい。紛争の原因である皇帝自身が、ということかな。
2010-11-16 21:26:55「20 バウドリーノはゾシモスに再会する」。この本と全く関係ないんやけど、この「水占い」の場面を読んでるとき、真水に念を送ると甘くなる、っていう気功系の新興宗教に勧誘されたことを思い出した。
2010-11-16 21:34:54「8 バウドリーノとビザンツの魅惑」。8頁12-13行、「慣例的に殺人者に与えられてきた保護」なんてあるんだー。ここらへんは史実ぽい。この小説は政治や戦争の場で自分勝手な主張(嘘や言い訳)が「承認される」ところを面白く描いててクールですな。
2010-11-17 21:38:09「21 バウドリーノとビザンツの魅惑」でした。私はエーコの他の小説読んだことないんだけど、『バウドリーノ』は私が抱いていた「エーコの小説」イメージと違ったんですね(肉体的な生々しさをそんなに描かない小説みたいな先入観があった)。この辺、他の小説も読んでる人の感想知りたいです。
2010-11-17 21:54:05「バウドリーノは父親を亡くしてグラダーレを見出す」。後でも出てくる洗礼者ヨハネのnつの首。「頼朝公おん十四歳のみぎりのしゃれこうべ」みたいだな。一つしかないものが生み出す嘘の話。
2010-11-17 22:04:41「25 バウドリーノはフリードリヒが二度死ぬのを見る」。超 展 開。しかし、バウドリーノ自身の旅の動機がよくわからない。他の奴らは「聖杯」という目的があるとしても。司祭ヨハネだって皇帝のためだったんじゃないの?
2010-11-17 22:34:06「26 バウドリーノと賢王たちの旅」。アルドズルニの城あたりから、地理関係がまったくわからなくなっている。まああまり気にしなくてもよいのだろう、全部嘘かもしれないし。
2010-11-18 22:56:49いや、アルドズルニの城はアルメニアなのか。そして「27 バウドリーノはアブハジアの闇に入る」。アブハジアは黒海の北東岸。つまりカスピ海と黒海の間の地域をうろうろしてるんだな。
2010-11-18 23:00:09「28 バウドリーノはサンバティオン川を渡る」。サンバティオン川はユダヤ伝承に登場する川なので、ここらへんはやはり空想上の地理世界。正直このあたり読み進めるのがちょっと辛い。
2010-11-18 23:08:30「30 バウドリーノは助祭ヨハネと面会する」。宦官って不思議な制度だよなあ。日本や中世以降の西欧で普及しなかった理由ってあるのだろうか。そういやモンゴルとか遊牧民族の国家にもなかったのかな。
2010-11-18 23:43:53「30 バウドリーノは司祭ヨハネの王国への出発まで待機する」。この章の後半いいなあ。172頁9行、「ごちそうとブルク」だけど、“ブルク”わからない。前に出てきたかな。あとで「ブルクに浸したパン」も出てくる。お酒…?
2010-11-19 23:43:08「32 バウドリーノは一角獣を連れた貴婦人に会う」。お、話が動き始めた。205頁12行「ウェゲティウスの軍事論もフロンティウスの戦略論も知らない」のは私も同じ。それぞれ4世紀、1世紀のローマ帝国で軍制などを研究した人。『軍事論』は今でも読めて、内容は傭兵批判とからしい。
2010-11-20 00:16:04「33 バウドリーノはヒュパティアに会う」。この章やばいだろ…。5世紀にキリスト教徒によって抹消された古代思想が、どうやって700年間生き延びたのか、という物語がすごい。エーコ冴えまくってる。「哲学史ファンタジー」とでも言うべき新ジャンルじゃないか。
2010-11-20 16:22:29おなじく33章の217頁5行「もしガヴァガイが同じように答えていたとすれば、バウドリーノは平手打ちを見舞っていただろう」わろた。ちゃんと笑えるように訳してくれた翻訳者にありがとうやね。
2010-11-20 16:26:59「34 バウドリーノは真実の愛を発見する」。241頁14行、「あなたを通して、私は神をひとり呼び出せるかもしれない」すげえセリフだ。古代の新プラトン主義風だと"I love you"はこう翻訳できるのかも。
2010-11-20 16:43:17しかしヒュパティアは「知ることの義務を除きすべて忘れて」という風にはとても見えないのだけど、これは哲学史の立場からの批判に対する、エーコの予防線なのかもしれない。
2010-11-20 16:47:06「35 バウドリーノ対白フン族」。ヌビア族の殉教癖に笑った。Circumcelliones、ドナトゥス派といった、殉教礼賛の特徴を持ったキリスト教会派が古代にあったみたい。
2010-11-20 16:59:03「37 バウドリーノはビザンツの宝物を増やす」。助祭ヨハネの聖骸布のエピソードにじーんとした。「性質を変える」とは本当にうまいこと言う。嘘が作る歴史もある、ということだな。
2010-11-23 23:53:52「39 バウドリーノは柱頭行者になる」。"stilita"(柱頭行者・登塔者)は5世紀くらいから東方教会で流行った修道形態らしい。苦行の果てに「柱の上でひらすら祈ったらすごいぞ」というアイディアに達したとか…。この種の聖人伝のサイケデリックさはもっと評価されていい。
2010-11-24 00:10:38