「血液型と性格の無関連性」についての心理学的な解説まとめ(前半) -第一種の過誤と第二種の過誤-

みんなにもっと心理学に馴染んでもらえるように,話題になっている「性格と血液型の無関係性」について考えながら,心理学の方法論について連続ツイートしたものをまとめたよ。前半では主に,統計学における第一種の過誤と第二種の過誤について説明したよ。 グレーで書かれている部分 は脱線や補足なので読み飛ばしても大丈夫だよ! 後半:http://togetter.com/li/695536
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きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

さっきの35.3%というp値だけど… 慣例的には,あくまでも慣例的には,これが5%未満であるときに「滅多に起こらないことである」とみなすことになっているよ。あくまでも慣例的には(大事なことなので三回言いました)。

2014-07-19 23:49:07
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

…と,いうことは,35.3%は十分起こり得ること。つまり,「女間で平均身長に差がない」と考えても,おかしくはない,ということ。したがって,「男女間で平均身長に差がない」のである。…この推論は正しいと思う?事実として,男性の平均身長は女性の平均身長よりも高いはず。

2014-07-19 23:50:40
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

ひょっとしたら,男女が二人ずつしかいない,ということが問題だったのかもしれない。そこで,新たに180cm,165cm,177cmの男性と,169cm,153cm,152cmの女性のデータを加えてみよう。平均身長は男性171.6cm,女性159.6cmになった。

2014-07-19 23:56:00
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

結果はt = -2.6174, df = 8, p-value = 0.03078で,p値は約3%。つまり5%未満。よって,帰無仮説は棄却される。プログラムは次のような感じ。 pic.twitter.com/x8dZxSsLei

2014-07-19 23:57:46
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きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

つまり,男女2人ずつのときは「男女間で平均身長に差がない」ことが否定できなかったけど,男女5人ずつに増やしたら,「男女間で平均身長に差がない」ことが否定できて「男女間に身長差が『ある』」という対立仮説を支持することができた。結局,身長差はあるの?ないの?

2014-07-19 23:59:50
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

さっき僕は「身長差がない」という対立仮説のことを「主張したい」仮説だと呼んだ。裏を返せば,「身長差がない」という帰無仮説は,特に主張したいものではない。帰無仮説が棄却されたときには対立仮説(主張したいこと)は支持されるが,帰無仮説が棄却されないときについては,なんともいえない

2014-07-20 00:04:24
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

(訂正)帰無仮説が棄却できなかった (採択された) のにもかかわらず,実際には対立仮説のほうが正しかった,というのが,男女二人ずつのケースだったね。このような誤りを「第二種の過誤 (type II error) というよ。

2014-07-20 00:33:55
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

第二種の過誤に陥る原因のひとつとして,二群の平均身長の間にある意味のある差 (有意差) を検出するための検出力 (power) が不足している,というものが考えられるよ。今回の例からも分かるように,データの数 (=ンプルサイズ) を増やすことで,検出力を上げることができるんだ

2014-07-20 00:11:02
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

すなわち,有意性検定では「有意差がある」ということは積極的に示せても,「有意差がない」ということは強く主張できない。だって,サンプルサイズを増やせば有意になるかもしれないでしょ?これが,血液型と性格が無関係であることをはっきり示すのが「不可能」である訳なんだ。

2014-07-20 00:15:03
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

…一般に,「有意差が無かった」と報告している全ての研究に対して,「サンプルサイズを増やせば有意差が認められるのではないか」と反論することができる。これは結構,大事なことかも。ただし,たとえ有意差があっても,その差がごく僅かだったとしたら,果たして意味があると言って良いのだろうか…

2014-07-20 00:17:17
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

そういうことを議論しようと思うと,今度は効果量 (effect size) という概念が出てくるんだけど,その話は次回に回すとして,最後に第一種の過誤の話をしよう。

2014-07-20 00:17:56
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

男女間で平均身長に差が有意性検定から分かった。めでたしめでたし。…本当にそうかな?帰無仮説を仮定したら,5%未満の確率でしか起こらないことが起きた!こんなことあり得ない!だから帰無仮説は間違ってるんだ!って話だけど,5%て本当に起こりにくいことなのかな?

2014-07-20 00:22:30
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

二群の間で明らかに有意差が出なさそうな変数について何度もt検定をしたら,単純計算では,100回に5回は「有意差」が検出されてしまうことになる。…これを第一種の過誤 (type I error) といって,有意差が検出されたからといって,本当に差があるとも限らないんだ。

2014-07-20 00:27:11
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

(「二群の間で明らかに有意差が出なさそうな変数」の例を考えていたけれど,これがなかなか難しいんだよねえ… 「旅行が好きな人とそうでない人との間では視力に差がある」とか,もしかしたら本当にあるかもしれないし…)

2014-07-20 00:28:32
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

この,第一種の過誤第二種の過誤の問題は,血液型と性格の関連性 (または無関連性) を検討する上で,とても大切な概念になってくる。そういう訳で,今日はここまでにして,明日以降,いよいよ血液型と性格の話に踏み込んでいくつもりだよ。

2014-07-20 00:30:35
ELSI覚え書き @ELSI_bot

@kisopsy_kun 覚えるコツ:α(あわてんぼさん)のエラーとβ(ぼんやりさん)のエラーと覚えれば間違えない。

2014-07-20 00:33:30
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

@ELSI_bot おー!それは面白い覚え方だね♪頭では分かっているつもりでも,書くときに混乱しちゃうことがあるから,あわてずにぼんやり考え直す癖をつけるよ!

2014-07-20 00:35:13
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

とりあえず,今日の話は以上だよ。即興で書いたので,予定していたよりかなり時間がかかってしまった(二時間も!)上に一番の本題に入れなかったし,いくつかミスもしてしまったよ… 今日は血液型と性格について考えるための武器を用意したので,また明日ぐらいに続きを話すよ!

2014-07-20 00:38:14
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

話が難しかったかもしれないけれど,分からないことがあればなんでも気軽に質問してね!今日話したことは,統計学の基本的なテキストにもたぶん書かれているはずだから,興味があったら自分でも勉強してみてね!

2014-07-20 00:39:47
きそしんくん@おかげさまで9年目 @kisopsy_kun

ここまでご清聴,ありがとうございました!初めての連続ツイート(しかも即興)となってしまいましたが,いかがでしたか?話の内容や進め方などに不満・要望・質問などがあればなんでも教えてね♪

2014-07-20 00:43:17

後半に続く→http://togetter.com/li/695536

まとめ 「血液型と性格の無関連性」についての心理学的な解説まとめ(後半) -効果量と妥当性- みんなにもっと心理学に馴染んでもらえるように,話題になっている「性格と血液型の無関係性」について考えながら,心理学の方法論について連続ツイートしたものをまとめたよ。統計学における第一種の過誤と第二種の過誤について解説した前半に引き続き,物議をかもしたFacebook実験を例に上げて効果量について解説したのち,縄田 (2014) の主張とその問題点を指摘したよ。 グレーで書かれている部分は脱線や補足なので読み飛ばしても大丈夫だよ! 前半:http://togetter.com/li/695159 22915 pv 263 4 users 1